第十三話. 時界突
訓練場の空気が重く沈む。セレスの魔封領域。
アルヴェインの剣。そして悠真の異能。三つの力がぶつかり合う。セレスが言う。
「あなたの魔力は封じています」
悠真は軽く笑う。
「だから言っただろ」
「これは魔力じゃない」
アルヴェインが踏み込む。
ドン!!
剣が振り下ろされる。同時にセレスが横から斬り込む。
完全な挟撃。普通なら逃げ場はない。だが悠真は静かに呟いた。
「異能詠唱」
空気が止まる。
騎士たちがざわめく。
「詠唱……?」
悠真はゼノグレイスを構えた。槍の周囲で時間が歪み始める。そして詠唱する。
「流れる刻を越え」
「止まる世界を貫き」
「瞬きの刹那を我が槍に宿せ」
空間が歪む。訓練場の音が消える。風すら止まる。
王が目を見開く。
「……時間か」
悠真は槍を前に突き出す。
そして最後の言葉を告げた。
「異能解放」
「時界突―クロノスピア」
次の瞬間。世界が一瞬止まった。悠真だけが動く。一歩。
また一歩。ゆっくりと歩き、二人の間へ入る。そして槍を振る。
ドン!!
時間が動き出す。
アルヴェインの剣が弾かれる。セレスの剣も弾き飛ばされる。衝撃波が訓練場を揺らした。騎士たちが叫ぶ。
「なっ!?」
「何が起きた!?」
アルヴェインが地面に膝をつく。
「……見えなかった」
セレスも剣を構え直しながら呟く。
「時間……を……」
観覧席で王が大笑いした。
「ははははは!!」
「最高だ人間!!」
王の目が戦士の目になる。
「これはもう我慢できん」
王は剣を抜いた。巨大な大剣。訓練場に降りてくる。
ドン!!
地面が揺れる。王は悠真を見て笑った。
「次は私だ」
悠真は槍を回す。ゼノグレイスが低く唸る。
「……いいぜ」
「望むところだ」
エルフ王。エルフ最強剣士。騎士団長。そして神槍の使い手。
エルフ王国最強の戦いが今、本当に始まる。




