第九話.誰もクリアが出来ない特訓。
エルフ王国騎士団の訓練場。朝から騎士たちが整列していた。人数は約五十人。その前に立つのは神代悠真。
「今日一日だけ、お前らを鍛える」
騎士たちがざわつく。
「本当に教えてくれるのか……」
「昨日の速さの秘密を……」
騎士団団長アルヴェインも腕を組んで立っている。
悠真は木の棒を持ち、地面に線を引いた。
「まず最初の特訓」
騎士たちを見る。
「この線から俺に攻撃してみろ」
騎士の一人が手を挙げる。
「一人ずつですか?」
悠真は首を振った。
「全員同時」
騎士たちが固まる。
「……え?」
団長も眉をひそめる。
「それはさすがに――」
悠真は続ける。
「俺に一発でも当てたらクリア」
騎士たちがざわつく。
「簡単じゃないか?」
「人数はこっちが多いぞ」
悠真は肩をすくめた。
「やってみろ」
騎士たちは剣を構える。団長が叫ぶ。
「全員、突撃!!」
ドドドドド!!
五十人の騎士が一斉に走る。剣が振り下ろされる。
だが
「遅い」
悠真の姿が消えた。
次の瞬間。
ドン!
ドン!
ドン!
騎士たちが次々と転ばされる。
「なっ!?」
「見えない!」
悠真はただ避けているだけだった。攻撃は一切していない。それでも誰も触れることすら出来ない。数分後。
騎士たちは全員地面に倒れていた。
「はぁ……はぁ……」
悠真は欠伸をする。
「終わり?」
騎士たちは呆然としていた。団長が前に出る。
「私も参加する」
悠真は頷いた。
「いいぞ」
団長が剣を構える。空気が変わる。
「行くぞ!」
ドン!!
団長が超高速で踏み込む。騎士たちより遥かに速い。
だが悠真は一歩横に動いただけ。剣は空を切る。
団長が連撃する。
ザン!
ザン!
ザン!
しかし全部当たらない。
数十秒後。
団長が膝をついた。
「……当たらない」
騎士たちがざわめく。
「団長でも!?」
「嘘だろ……」
悠真は少し笑った。
「これが一つ目の特訓」
騎士たちを見る。
「当たらない相手にどう当てるか考えろ」
団長が息を整えながら聞く。
「……あなたは出来るのか」
悠真は軽く答えた。
「出来る」
騎士たちが注目する。悠真は槍を構えた。そして言う。
「俺の特訓は」
「まず俺を倒すこと」
騎士たちが凍りつく。
「無理だろ!!」
「化け物だ!!」
悠真は少し笑った。
「安心しろ」
槍を肩に担ぐ。
「まだウォーミングアップだ」
騎士団の地獄の特訓はまだ始まったばかりだった。




