プロローグ.神の寵愛を断る男
眩しい光が、視界を埋め尽くした。
「……は?」
ついさっきまで、俺――神代悠真は自分の部屋でゲームをしていたはずだった。それなのに、今いるのは白い空間。
床も天井も境界が分からない、不思議な場所だ。
「ようこそ、異世界へ」
突然、声が響いた。振り向くと、そこには白いローブを纏った人物が立っていた。まるで神話に出てくる神様みたいな姿だ。
「私はこの世界の管理者。お前をこの世界へ転移させた」
「……はぁ?」
あまりに突拍子もない話に、俺は思わず間抜けな声を出した。
「安心するがいい。転移者には特別な力――神の寵愛を授ける」
神は手をかざす。その瞬間、空間にいくつもの文字が浮かび上がった。超回復。無限魔力。全属性魔法適性。
どれもゲームで言えばチート能力だ。普通なら喜ぶところだろう。だが――
「いらない」
俺は即答した。神の動きが止まる。
「……なに?」
「そういうの、いらない」
俺は軽く肩をすくめた。
「どうせなら、自分のやり方でやりたい」
そして俺は、右手を前に出した。
「代わりに、一つだけ」
空間が震える。光が集まり、形を作る。長い柄。
黒と銀の装飾。穂先はまるで星のように輝いている。
それは、俺がゲームで何千時間も使ってきた武器。
神槍ゼノグレイス。
「これがあればいい」
神はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……面白い人間だ」
次の瞬間。
世界が、ひっくり返った。風が吹く。森の匂い。
遠くで鳴くモンスターの声。
悠真は槍を肩に担ぎ、空を見上げた。
「さて」
異世界生活の始まりだ。
「まずはレベル上げからだな」




