結します。②
「全く、あんたって子はっ!」母親がブチブチ言いながら、バラバラになった振り袖を畳の上に広げている。「まぁまあ。これなら、あたしが直してあげられるよ。」おばあちゃんが状態を確認しながらとりなしてくれる。私が居なくなったのは、此方では1日にも満たない間だったらしい。けれど、見合い会場に来ない。連絡もつかない。友達、親戚、あらゆるところに連絡しても一向に行方が解らない。一晩様子を見て、このまま帰って来なければ、警察に届けを出すしか…。と、家族全員が青ざめていた時に、「…がとうー?」裏から聞き慣れた声。家族皆、裏の勝手口に集まってその姿をみた時、どれほど安堵したものか。「あんたっ!あんたって子は!」母は怒りながら泣いて、父はメガネを外して咽び泣いた。ばあちゃんとじいちゃんは、数珠を片手に「良かった、良かった。」と、撫で回してくれた。兄貴は、「親不孝の不良娘だな。」と、ニヤリと笑っただけだったけど。
「あんた、26にもなって、なにやってんのさ。」帰って次の日には仕事だった為、詳しく弁明するために週末、友人達とカフェに来ていた。「説明がつかないんだよねー。」向こうでは夕方だったが此方では朝の5時。クラシカルなワンピースを着て、バラバラになった振り袖を持ち帰った理由を誰ができるだろう。とりあえず無事見つかったと連絡を回し、見合い相手にも頭を下げに菓子折りを持っていった。相手からは、「ご縁がなかったと言う事で。」玄関先でみた見合い予定だった男は、なんからっきょうみたいだった。「まぁ、今時26歳なんて、まだ若いしね。」「慌てて結婚して、すぐに離婚しちゃったらどうしようもないわよ。」「あんた達…自分達が結婚してるからって余裕じゃない。」目の前の友人三人をじとり、と睨む。「あんたねぇ、結婚がゴールじゃないわよ?」「そうそ、今まで見えなかった事が見えてくるのよ。」「お互い様だけどねー。」なによ、テンプレみたいな事言っちゃって。「大事なのは、どんなあんたでも愛してくれる人が一番って事なのよ。」「蛙にならないでいてくれるか、いてられるか。」三人に色々と言われて店を出た。今は仕事をしっかりこなして、自分を磨く時期なのかもな。休んでた合気道も、また始めようか。あの、おじいちゃん達が住んでいた街も面白かったし、海外旅行に行くのも見聞を広げていいかも。帰り道、ドーナツを買って帰った。うちのじいちゃんとばあちゃんは、“POMで”が大好物だ。あの、白ひげ(鼻毛?)のおじいちゃんは、“POMで”食べるかなぁ。なんて思いながら、家路についた。
夏、じわじわと蒸し暑い昼下がり。「休みの日に、あんたって子は。なんて格好してんのっ!」母のお叱りを受けつつも、「流石に、この暑さは死ぬって。」裏路地に面した我が家の庭先。日陰になった縁側で座っていた。キャミソールにショート丈のジーンズ。アイスキャンディーを咥えて、扇風機の前に陣取る。ばあちゃんは隣の奥さんとデイサービス。じいちゃんは、クーラーのついたダイニングで甲子園を観ている。父と兄は、親子でツーリングに行った。二県隣までラーメン食べに行くんだとよ。「あたしも出かけるからね。留守番、ちゃんとしててよ。」母が玄関から叫ぶ。「ほぉーい。」て事は車がないなぁ。出ていくの、だりぃし。ふと、鴨居に引っかけられた衣紋掛けにかかった振り袖に目がいった。あれから、3ヶ月以上たった。数日だけの、不思議な体験だったなあ。スマホを開くと、写真は残っている。パッと見、外国人と写る日本人ってだけの写真は、誰に見せても“異世界”には見えず信じてもらえない。着てきたワンピースも、100%木綿生地だから洗った後のアイロン掛けが地獄だった。下着なんかは気にならなかったけど、さすがにたっぷりとしたスカートや襟元のフリルにシワがよるのはちょっと…。あー、そういや、ブラとパンツ、帰る前日に洗っちゃって干したまま帰ってきちゃったんだよな。けっこう気に入ってたんだよなー。アイスキャンディーの棒をしがみながらぼんやりしていると、裏路地に人影が。まばたきすると、まるでカゲロウのように揺らいで直ぐにハッキリと人の姿になった。「んっ?」思わず、声が上がる。その人物が垣根越しにこちらを見た。「キョーコっ!!」そこにいたのは、「あ、あんた、アルベルトっ?!」こちらの言葉が言い終わらない内に、垣根を飛び越え(!)ガバッっと私を捕まえた。う、腕が抜けないっ!「ああ、会いたかったっ!俺の女神っ!もう、二度と側を離れないからなっ!」「?!!なっ!あ、あんた何言っちゃってんのっ?」腕を押さえながら、身体を離したアルベルトは私を確認するように上から下まで見て「やはり、俺の女神っ!」「あんた、頭、大丈夫?」アルベルトは慌てて手を離すと、自分の荷物をガサガサしながら「先生に頼んで一時的にゲートを開いて貰ったんだ。」ジャラリっと重い音がする革袋を取り出し渡してきた。「これ、服の代金だ。」中には、銀貨と銅貨がざらざら入っている。金貨もちらほら。「…。あんた。」「母のしでかした事、けっして許されるものでないが、せめてもの誠意だ。」いや、これ日本で換金したら多分振り袖、もう一着買える。「それと…。」と、取り出したのは「…!?」「忘れ物だ。」私のパンツとブラ…!しかもキレイな箱にリボンかけて入れてある!「ちょーっ…!ま、待って。何で箱に入れたっ?!」「何でって…。女神が身につけていた物だ。大切に扱って当然だろ?」いっ…いっ…。「俺、キョーコの側にいたい!キョーコ、俺を夫に迎えてくれ!」「異世界帰れー!!」 私の叫びが静かな住宅街に響き、甲子園では球児がホームランを打った。
もうちょっと短くなるかなっと思ってたら長くなっちゃって、①②となりました。あと、内容はテンプレですが、自分なりに仕上げましたので面白いと思って貰えたら幸いです。




