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結します。①

借りている下着に着替え、今まで着ていたパンツとブラを、風呂の湯を使いながら手洗いする。「固形石鹸でも日本の製品の優秀さが解るもんだわ。」洗面器に新しく湯を入れ、濯いで軽く絞り、勝手に借りたタオルに挟んで「流石に部屋で干すか。」湯を抜いて、これも勝手に借りたタオルを頭に巻き、下着を挟んだタオルを持って風呂場から出る。「?あれ、早いじゃん。」廊下にアルベルトがいた。ボーゼンと立っている。「ちょっと…どいてくんない?」「あ、ああ。」なんだ、こいつ。スタスタと部屋に戻った。


あれから、先生とキョーコが作った料理を食べ、帰る為のゲートの特定を手伝った。キョーコは一向に部屋から出てこない。このまま帰るのも気が引けて、先生にお願いして夕べはソファで寝かせて貰った。朝方、水を使う音に目が覚めて、あいつか?でも、魔石使えないよな。先生かな。と、しばし寝ぼけた頭で考えていたが、ややあって身体を起こし見に行く事にした。先生の家に泥棒が入る訳がないしと廊下を数歩、歩いただけでそれ以上進めなかった。「…どいてくんない?」言われて我にかえった。「あ、ああ。」キョーコはスタスタと廊下を歩いて部屋に入っていった。朝日が彼女が歩いた後を照らし出す。「…ミューズだ…。」


「あれ?あいつどこいった?」身支度をすませ、キッチンで朝ご飯の支度をしダイニングに運びこむと、紙や本、巻物が広がり、積まれている。テーブルの上もその惨状なのでソファの前に置かれたローテーブルにとりあえずお盆を置く。「おじいちゃーん、朝ごはーん。」実家でも、同じ調子で祖父を呼ぶ為、遠慮がない。「ほいほい。おぉ、キョーコちゃん。体調はどうじゃ?」ひげ(鼻毛?)に寝癖をつけて元最高魔道士、マーリンが部屋に入ってきた。「泣いて寝たら、スッキリよ。勝手にお風呂入っちゃった。」「構わんよ。“(ちから)”が使えたのかね?」ソファに腰掛けながらマーリンが聞く。「ムカッて腹立つと使えたわ。」カップにコーヒーを注ぎ、バターを塗って焼いたパンに目玉焼きにベーコン、カットしたトマト、ヨーグルトにフルーツを添えて。「豪勢じゃ。」「そう?私のおじいちゃんもこれくらい食べるわよ?」食べながら、二人は色々話した。時に笑い声をあげながら。


日はあっという間に過ぎ、「キョーコちゃん、明日には帰れるぞ。」3日目の夜、研究所の方々を引き連れマーリンが吉報をもたらした。「本当っ!?」ダイニングテーブルを片付け、料理を並べていた鏡子は危うく皿を落としかけた。「帰れるって…本当っ!?」「ああ、明日の夕暮れ時、6の鐘が鳴る間だけあの道がキョーコちゃんの世界とつながり、入れ替わるのが解った。」「どうやら、一定周期で入れ替わっているようです。」「良かったですね、キョーコさん。」研究所の方々が一緒に喜んでくれるのがありがたい。「…だから、今日は多めに作ってって言ったんだね。」涙ぐみながら、マーリンを見る。「みな、頑張ってくれたからの。」「我々も妹や娘がおりますから。」「心配するご家族の心情を思えば易いものです。」なんっていい人達!「私の手料理なんて拙いもんだけど。」「なかなか旨いもんじゃったよ?ワシ、この3日で太っちゃった。」おじいちゃんは、太らないと痩せ過ぎだよ。笑って皆で食卓を囲んで…。

皆が帰った後、皿を洗いながら気分は最高潮だ。明日は、部屋を掃除し、作り置きも沢山作っておこう。一宿一飯の恩義、立つ鳥跡を濁さず。ふと、「…あれからアイツ、来てないな?」風呂に入った日、廊下で突っ立ってた姿を見た後、それから見てない。まぁ、自分の母親がやらかしちゃったら、来るに来れんわ。すぐに、頭を切り替え仕事に集中した。


「おじいちゃん、ちゃんと食べなよ。寝るのも机じゃなくて、ベッドに寝なきゃだめだよ。」「ほっほっ。キョーコちゃんは心配さんじゃなぁ。」街の一角、路地の前で、白ひげメガネの小さな老人と、背の高い、ここらでは見かけない容貌の女が今生の別れを惜しむという、奇怪な一幕が繰り広げられた。周りを研究所の方々が囲んでいる。この街の人が、逆に向こうに行かないよう私が帰った後、捻れを直しゲートを閉じるのだと言う。「じゃあ、私行くね。この服、本当に貰っていいの?」私の振り袖は、糸をほどかれて、パズル状態だった為着て帰えれず、新しい服をおじいちゃんが用意してくれたのだ。ちなみに、パズルの振り袖と帯、襦袢など一式は大きな布を風呂敷にして、包んで持ち帰る。「あと、これ。」巾着から取り出したのは、紙で折った花。「ほほう?こりゃ初めて見るのう。」「可愛らしいですね。」「おじいちゃんに貰ったお金で買ったから、自分からって言えないけど、感謝の気持ち。」買い物をしていて、プレゼント用に包装する専門店を見つけた。そこでキレイな紙を購入し、自分で切って折った。折り紙の概念がない世界では珍しかろうと夕べ、作ったのだ。「それじゃあね。」袋小路になっている道に荷物を持って入る。鐘が鳴り出した。「じゃあの。」「お元気で。」周りの風景が大雨の日の窓みたいに歪んでみえる。「ありがとう。おじいちゃん、本当にありがとうっ!」言い終わらないうちに、周りの風景が見慣れた裏路地に変わっていた。

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