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転じます。②

「おお、来たか。」おじいちゃんが、複数人のおじさんと話していた。「こちらの方々は魔道研究所の、「お手数おかけします。山下 鏡子と言います。急な事でご迷惑かと思いますが、どうかご助力下さいませ。」深々と頭をさげる。「や、これはこれは。あなたこそ、見ず知らずの土地にいきなり来て、さぞご心労されましたでしょう。」「うら若いお嬢さんなら尚更ですよ。」「不幸中の幸いと言うか、マーリン様がいらっしゃる時でよかった。」「我々も力を惜しまず、助力いたしますので。もう少しの辛抱ですぞ。」なーんて、言っておじさん方ははりきって仕事をしてくれている。「うら若い…?」ぼそりと呟くアルベルトに一睨みくれてやる。それから、昨日、この世界に来た時の状況や時間、天候などを話し、私とアルベルトは「ほれ、これで街でも散策しておいで。」と、おじいちゃんからおこずかいをもらい、その場を後にした。26歳でおこずかい貰うなんて思ってなかったなぁ。「これ、いくらくらいの価値があんの?」おじいちゃんに貰ったうちの銀貨一枚を指でつまみ、アルベルトに見せる。「おい、袋に入れておけ。」あ、それくらいの価値にはなるのか。街のあれやこれやを見てまわり、だいたいのお金の価値が解ってきた。「うーん、だとすると、街の人の1ヶ月の給料って銀貨20枚くらい?」「店を持ってたらそれくらいだな。家族も養える。露店商なら16枚。農家は15~20枚ほどだ。」「さっきの研究所の人は?」「さぁ、想像もつかないが。着ている服をみたら、銀貨60…銀貨ではなく金貨かもな。」「わお。」「…お前が着ていた服もそれくらい高価なのだろう?」「まあね。一生に一度の物だから。特に女親は娘の事には気合いが入るのよ。」明日朝に食べるパンや果物なども買い、帰路についた。「マリナさん、まだいらっしゃるかな。」「さあ、昼の時間はとうに過ぎているから…。」玄関扉を開けて、最初に案内された客間兼ダイニング兼仕事部屋の扉を開けたアルベルトが立ち止まった。「?ちょっと、入ってよ。荷物が置けない…。」アルベルトの体を後ろから押しながら、横から身体をねじこんだ。そして、見た。ダイニングのテーブルの上に、バラバラにされた「私の…振り袖…。」




切られた振り袖をかき集め、自分が寝泊まりしている部屋にかけこんだ。クロークの中には、帯と足袋、伊達締めに腰紐、その他一式がちゃんと入っている。ほっと安心し、それから、涙が溢れた。着物に涙がついたらシミになる。あわてて、着物だったそれを机の上に避難させて、私はベッドに潜って泣いた。泣いて泣いて。三年付き合った彼氏と別れた時以上に泣いた。


「なんと、そんな事が。」先生が帰って来て、俺の顔と母の様子を見て何事かと聞いてくれた。「あたし、あんまりキレイな布だったんで、これで作りゃいいじゃないかと思って…。」「だとしても、勝手に触って切ってしまうなんて…。」我が母ながら、短慮な事をしでかした。彼女の、キョーコの顔が忘れられない。あの、色を失くした表情。「あれは、彼女の故郷での装いで、あのまま身に付けるんだ。」訳の解っていない母に説明する。「彼女の母上が、働いて、金貨一枚と銀貨10枚もする、あの服を、一生の物だと、彼女に買い与えてくれたものだ。」「…!」それを聞いて、母はやっと事の重大さを理解した。「あたし、なんて事を…!」青ざめて震えている。母も娘がいる身。親の気持ちが痛いほど解るんだろう。「うーむ、とりあえず、マリナは落ち着いて。今日は家に帰りなさい。」先生は、落ち込む母を玄関まで送り出してくれた。「先生、なんとかなりますか?」聞いてみたが、「魔法は万能ではない。なんでも魔法で解決しようとするのは愚かし事。しかと、覚えておけ。」いつになく、厳しい口調で先生はご教授下さった。


気づいたら朝になってた。涙で顔はガビガビ、昨日、そのまま寝ちゃったんだ。さすがに風呂に入りたい。のっそりと起き上がり、マリナさんに借りて着たままだった服を脱ぐ。廊下を裸足で歩いて、風呂場に向かう。お腹も空いたし…。ネットもない。やだなぁ…早く帰りたい…。風呂場でお湯を入れようとひねって、気づいた。あれ、これも魔石ってやつ?あー、じゃあ使えないじゃん!!「もうっ!」と、赤い魔石のついた蛇口を叩く。ドバッと水が、いきない出てきた。驚いてのけ反る。みるみる辺りは湯気が立ち込める。「…。お湯だ。」蛇口を閉め、そっと手を入れる。少し熱い。青い魔石のついた蛇口を回す。出ない。イラっとしたら、出た。湯船に程よい加減に湯をはると、かけ湯をして鏡子はゆったり、湯に浸かった。2日ぶりだ。「ぁあ~。生き返る~。」ザブザブと顔を洗って、窓から入るまだ薄暗い日の光が湯気の粒を照らすのを見る。「…え、ここの人っていつもイライラしてんの?」大変じゃ~ん。まぁ日本人も似たようなもんだけどさぁ。湯船から手を伸ばし、置かれた石鹸だろうボトルを見るが、「読めないわ。」シャンプーかリンスか解らん。再度、切実に思う。「早く帰りた~い。」ブクブクと顔半分を沈め、湯の中で言葉にした。

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