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承けます。②

「ごめんね、奥さんとの思い出だろうに。」おじいちゃんから数着、奥さんの服を受けとりながら伝える。「なあに、置いといても仕方がないからの。しかし、若い時分の服でなくていいのかね?これなんぞ、下の息子を妊娠した時に作った服じゃよ?」…別に妊娠はしてないけどさ。「私、コルセットしてないからさ。」そう言って一旦、借りた部屋で着替える事に。床に付かないように帯を解き、伊達締め、腰紐と、解いてゆく。振り袖も、脱ぎながら縫い目を確認する。つい、あの男を投げてしまった。着物に傷がないのを確認して、軽く畳んでハンガーにかける。襦袢は、簡易襦袢だから、すぐに脱げる、。補正下着も外し、パンツとブラになる。足元は、おじいちゃんが木靴を貸してくれたが、慣れないので裸足に草履。さて、と。


「先生、奥様の服まで貸して。あの娘にそこまでする必要ありますか?」アルベルトと呼ばれる男は、先ほどの部屋で積み重なった書物を棚に片付けながら、不満をあらわにする。「いくら渡来人とは言え」「まぁそう言うでない。数日の事じゃ。」おじいちゃん、先生と呼ばれる老人は、“ルマール・フォン・モーリア”、マーリンの愛称で5年前まで国の最高峰である「魔道士研究機関」の総轄をしていた人物である。今は別の者が就き、息子はそこの重役に就いている。引退して、夫婦でこの街外れの家に移りすんだ。街の人は喜び、何やかやと世話を焼く。アルベルトの母もそうで、そのうちアルベルト自身も“先生”として、慕うようになった。「お主もまだ若いんじゃから、じじいの相手をしとらんと休みの日くらい、彼女と出かけてこんか?」「…。いませんよ。」アルベルトは棚の上に()()()をかける。180センチはある背丈は、こんな事ぐらいにしか役に立たない。父母共に背が高い方だったが、兄妹の中でも群を抜いて高くなってしまい、街のどこにいても目立ってしまう。周りの女性は小柄で小さく、子供を見ているようで相手に出来ない。相手の女性達も巨木のような男を見上げながら会話するのはごめん被るといった次第。そんな具合で、いまだ独身の彼は街の見回りを生業とし、困り事を請け負う“お巡りさん”と“便利やさん”を掛け持ちしている状態だ。だから、「へんな服装の女がうろうろしている。」と言う街の人の通報がアルベルトに入り、すぐさま駆けつけ保護にいたった。「全く、先生は…。」ブチブチ文句をこぼしていた所に、「おじいちゃーん、この服、着方これであってるー?」ノックもなく入ってきた渡来人。「おまっお前、恥はないのか?!」「はぁ?何言ってんの、こいつ。」「やはり、丈が短いか…。」上は入ったのだが、下のスカートが短い。本来は足首まであるのだろうが、彼女が着ると膝下丈になり、ふくらはぎが丸見えだ。「嫁入り前の女が、はしたないっ!」真っ赤になって怒るアルベルトを余所に、「下になんか履いたらいいのかな?」「ふーむ、靴下か?あったかのう?」なんて二人で話している。「改めて、私、山下 鏡子。しばらくやっかいになります。」彼女は、魔道士マーリンに手を差し出した。「わしは…マーリンじゃ。」その手を握る最高魔道士。「多分、おじいちゃんって呼んじゃうけどいい?」ハッハッハと腹の底から笑う魔道士をアルベルトは初めてみた。ご子息家族が訪ねて来た時でも、このような事はなかった。


さすがに今日は遅く、調べるのは明日となった。「じゃあ、夕飯作るかぁ。けど、この時代ってどうやって作ってんの?カマド?」さすがに使った事ないしなぁ。「…とりあえず、キッチンはこっちだ。」アルベルトは鏡子をキッチンに案内する。途中、洗面、風呂、トイレと教え「ここは、奥様の部屋だから入るなよ。」と、釘を刺す。「はいはい。」解ってんのかこいつ。と、ムカムカしながらキッチンに入る。「魔石で動くコンロに、冷蔵庫、流しはポンプで井戸から水を引いてる。」「なんだ、結構、近代化してるじゃん。」何が近代化なのか判らぬまま「食器はここ、鍋や道具はここだ。」と、一通り教える。「明かりは、ここだ。」壁についたランプの魔石に光を灯す。「あれっ?」鏡子が戸惑いの声をあげる。「今、どうやってつけた?」「どうやってって…。こう、力を流して…。」「あ、ムリムリ。あちゃー、こりゃ大変だ。」鏡子は頭を悩ませている。「何がだ?」「私、“(ちから)”なんてないもん。」「…。は?」何言ってんだこいつ。「私の世界には“魔法”的なチカラってもんがないの。」な、な、なんだって?!「で、ではどうやって生活しているんだ?!」「えー、電気とか?化石燃料とか?」鏡子は、とりあえず鍋をコンロに置き、冷蔵庫の中を見て勝手に肉や野菜を取り出す。「調味料は…と。チーズがある!あ、なぁんだ、胡椒や塩、砂糖はあるんだぁ。」棚をあさり、作業台に並べていく。「主食って、パン?ご飯…米?それとも麺とか?」何を作る気なのか。「…パンはパン屋で買う。“めん”というのは知らない。“こめ”もだ。たまに…。」アルベルトは、棚から瓶を下ろす。「これも食べる。」「ショートパスタだね。りょーかい。」鏡子は、長さが足らず七分袖になった袖を肘上までまくり、「やりましょか。」と、号令をかけた。

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