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承けます。①

じつは、見合いに向かうはずだったのよ。私、短大出てから地元帰って、実家から仕事場の毎日でね。これ?マ…母が成人式に買ってくれたの。まぁ、成人式に、友達の結婚式に三回、お見合いに着ていくのは…二回目かな。けっこう、気に入ってるのよね。色がさ、落ち着いた色でしょ?え、そうね、やっぱり赤とか、ピンクは人気よね。けど、私はこの色が良かったの。試着した時に、しっくり来たのよ。レンタル出来るって店の人が言ってくれたのに、母が『必要な時があるから』って。働いてたよ、スーパーのレジ。あー、食品店で購入する品のチェックと、金額を計算する仕事。まぁ、そんな感じ。あ、父も働いてるよ。兄がいて、じいちゃんばあちゃんも一緒に住んでるから結構大所帯。で、今日は、見合いの日で。私んち、裏から回った方が表通りに近いのよ。だから裏から出て表に通じる(ほっそ)い路地を行こうとしたら、足元に“けんけんぱ”が描かれてて。こう、丸とか四角とか並べ立て、「けんけんぱっ」て、片足で跳んだり、足を揃える…そう、それ。こっちにもあるんだ。で、つい、けんけんぱってしたら…。「この街の端に立っとったんじゃな?」こくん、と頷く。「たぶん、その通路が元々こちらの道だったのじゃろう。」「道が?入れ替わってたの?」「おそらくな。それで、たまたまその上を歩いていたお嬢ちゃんがこちらに来てしもうたんじゃな。」そんな事って「よくあるの?」なんか詳しいよね、おじいちゃん。「ふーむ、無くはないの。」そう言って古い革張りの大きな本を持ってきた。「え~…あったあった。“ニホン”からの“渡来人”が確認されたのは、“タイショウ三ネン”じゃな。」ひゃ、百年以上前じゃん。「え、他にもいるの?」「おるぞ。え~…“ふれんち”“かねだ”“めきしこう”…“ゆーないてっっ…あめりか”などじゃな。」言えてないぞ?「ほとんどの者は、間違って入ってきてもすぐに元の道に戻って帰れておる。」「へえ。」しかし、「お嬢ちゃんは“あじあ”っちゅう地域の“ニホン”の住民じゃろ?“あじあ”の渡来人は、住んでる街と違いが大きすぎる為か、パニックになるようじゃ。その間に、ゲートが閉まってしまう。」「ゲート…。」「空間が繋がってしまう捻れじゃな。」よく似た環境だと繋がる時間も長く、違うと短い、という検証結果も出ていると言う。「当時の渡来人が『カミカクシ』と表現しとるの。」「あー…。なるほどねぇ。」紅茶を飲みながら、しばし心を落ち着けて。「で、帰れるの?」「帰れるぞ。」よし!これは、吉報!そうよ、昨今流行ってる異世界トリップのアニメ、皆死んでたり、帰れなかったりしたじゃん?私、そこまで現代日本に失望してないし、死にかけてないって。お見合いだって、まだ、二回目だし。そりゃ、5回6回と増えて二桁いくなら、異世界で旦那探してやろうかってなるかもだけど。なんて、考えてたんだけど。「帰れるが、しばし、時間がかかる。」「どれくらい?」エアコンなら二時間位、車検なら一泊二日。せめて数日でお願い。「まぁ、現場をみて、その時の魔力数値と歪み指数を照らし合わせて…。」「なんのこっちゃか解んないわよ。」「貴様ぁっ!」男が離れた所から威嚇してる。近づくと、また転がされると警戒してんのね。ふんっ!腰抜けがぁ。

「5日は見といてくれるかの。」なかなか、微妙なとこをついてくるわね。「了解。でも、その間って私、どうしたらいいの?保護施設とかあったりする?」「さすがにそれはないが、お嬢ちゃんが嫌じゃなければ、ここに泊まりゃええ。宿泊施設もあるにはあるが、渡来人だと解れば足元をみられるし、珍かな物を狙って盗みがおこるやもしれんの。」うへっ。それは困る。「じゃあ、おじいちゃんの所にお邪魔させて貰うわ。お金もないし。」通貨が違うっぽいから、無一文だよねぇ。「先生っ!本気ですかっ!?ほんとにその女を泊めるのですかっ?!」まったく、この男はいちいちうるさい。「さて、では部屋に案内しようかの。それに、そのままの服ではおれぬだろうしな。」「そうね、なにか貸して貰えたらありがたいわ。」男を無視して、部屋を出るおじいちゃんについていく。「先生っ!聞いてますっ?!先生っ!」  ドアを閉める。

「今すぐ使える部屋は、ここしかないが、構わんかの?」着いたのは、使用人部屋。「少し前までは一人、雇っとったんじゃが。」「今は?」比較的きれいだけど、ベッドと机、椅子、クロークしかない。窓にはレースのカーテンがかかってる。「マリナといって、さっきの男、アルベルトの母が数日おきに、掃除や洗濯をしてくれる。」なんとなく、わかったけどここはあえて「不躾に聞くけど、ご家族は?」クロークの中を開けてみる。使用人の服、濃いグレーの衿付きワンピースと、白いエプロンがある。「ほっほっ。息子家族は都心部におっての。家内は、昨年の始めに逝ってしまった。」あっさりと答えてくれたから「そっか。」と、私もあっさり答える。そして、「おじいちゃん。」「なんじゃね?」「残念だけど、この服、私、入らないわ。」小さすぎよ!

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