証(シンボル)
自分の手のひらと、少女が吹っ飛んでしまった先を交互に見つめる。
「マジかよ。予想以上に吹っ飛んじまった、な。死んでないよな」
ラブリーズに変身したことはあったが、ここまで威力が出たことはなかった。ラブリーズには何か力が出るきっかけでもあるのか。
「生きてるよな、ん?」
空中に、キラキラと光るものがあった。
「宝石?」
紅い宝石のようなもの。手を伸ばすと宝石はラブリーズの衣装に吸い込まれていった。
「これって」
「ぽえ?」
相変わらずラブリーズの話題になると、ダメだな。
「迷惑をかけてしまい、すみません!!」
夏海華美が学ラン姿で息を切らして走ってきた。その背中には、気を失いのびてしまっているラブリークリムゾンがいた。彼女の変身は解けていた。若干、大道寺のことを警戒しつつ、近づいてきた。余程トラウマになったのだろう。
彼女たちに敵意がない以上、俺もパンツを脱ぎ、変身を解く。とりあえずは大丈夫だろう。
「ふぇ、え?、ふぇ?!」
後頭部に衝撃が。
「何爽やかな顔で、乙女の前で下着ぬいどるんじゃい」
「いったいわ!しかたねーだろ!そもそもお嬢様を守るためにだな」
「すみません。あたいの姉が暴走を。カシラに言われて、急いで来たのですが。間に合わず。この人は洞爺湖剣です。まさか、男のラブリーズがいるなんて」
チラチラとこちらを恥ずかしそうにみる。
「大丈夫ですよ夏海さん!そんなにチラチラ見なくても、俺は気にしてませんよ。ガッツリ見てください!」
スパーンと頭を叩く音がした。
「ド変態じゃないの!…そういえば…あなたたち苗字が違うわね。」
いや、変な意味はないんだけどな。
お嬢様の指摘はもっともだ。
「あたいらは、義兄弟だから本当の姉妹ではないんだ。でも、絆は本物!」
「ふーん、じゃあなんで、」
「アタシたちは願いを叶えるために」
「オイ。喋りすぎだ華。ってて。」
ラブリークリムゾンこと洞爺湖 剣が目を覚ました。
「とんでもないパワーだな。お前。華。コイツらは敵じゃないのか」
「剣姉ぇ。ごめん。あたいから喧嘩を売っちまったんだ。」
「そうか。わかった。」
少し安堵した表情になり、それから、口元をキュッと結び、こちらを見た。彼女はドカッと、そこに座り、手をついて頭を下げた。
「すまねぇ。あんたら。」
「すんません」
あわてた華火もすぐに後を追って謝った。
「謝るだけ?」
お嬢様は2人を見下ろしていう。
「うちの部下が、誤解で怪我でもしたら、どうするつもりだったの?」
「それは」
「謝るだけなら、口先でどうとでもいえるわ」
「お、おい、大道寺」
らしくない。普段の彼女なら、こんなこと言わない。
「すごく、怖かったんだから、すごく」
彼女の肩が震えていた。たくさんの強面の人に囲まれたんだ。当然。
「私はまた大事な物をうしなうのかって。怖かったんだから」
「え」
その剣幕に顔が青ざめる2人。その時俺はどんな顔をしてたかは分からない。平謝りを続ける彼女たちに恨みはない。ただただ、守るべき対象だった彼女の真剣な言葉に、胸を打たれていた。
「……まったくその通りですね。大道寺桜子。正直驚きました。あなたからそのような言葉が聞けるなんて」
その声の主は車いすに乗って現れた。
「久しぶりですね。大道寺桜子。それと、はじめまして、執事さん。私が炎城川奈。紅蓮のカシラをさせてもらってます。お詫びになるかわかりませんが。お茶でもしませんか」
彼女は柔らかに微笑んだ。
ブックマーク登録ありがとうございます!励みに頑張ります!




