人質
翌日の朝。最近の日課になりつつあるランニングがてらに行くとなりの町への修行。正直昨日のことがあってから、気が進まない部分があった。自分だけ準備した朝食に後味のわるさを感じつつ。頭を切り替えようとする。剣さんの剣術は次第に自分のものではないが、ラブリーズバトルロワイヤルの最後の優勝者のスキルがどのようなものになるのか。証を持てば持つほど強くなるなら、自分がやっていることは、はたして意味があるのか。いや、それよりも、ラブリークールとしての大道寺桜子の証は果たして誰が持っているのだろうか。あの生意気な幼馴染が、冷静沈着で計算高いなんて、評判を得てるのが、不思議でならない。靴を履き、玄関を出て、目の前に少年がいた。馬鹿でかいリュックを背負っている。
「?どちら様で?」
「…いつもおんなじ時間通りにランニングに出かける。ルーティーンってやつか。おかげで行動の予測がしやすくて助かるよ。秋道大樹」
帽子を深く被ってるせいか。表情は見えない。観察する間もなく、激しい痛みが全身を走る。
「…!!!!」
彼が手にしていたのは、スタンガン。
「…く、、、そ、、、」
体が倒れるのを感じ意識をうしなった。
「あっけないなー。こいつが護衛なん?弱すぎやな」
廊下を歩いてきた頭は、緊張感なく欠伸した。
「朝早すぎ、五時やで。あたしの秘策を使うまでも無かったか?」
「…いや。完全に不意うちだし。俺の予想だと、確実に手間取る予定だったよ。気を抜くタイプじゃないと思ったんだけど、それにターゲットの気配がない。おかしいな。一緒にくらしてたはずなんだが。こいつの行動通りなら、紅蓮が動き出すまでそう時間はない。」
「さきに対策されてもうたん?」
「…ちがう、だろうな。この時間にするのを決めたのは昨日だし。偶然か?」
「まぁ、ええわ。あの子を探さなな。おびき寄せよか。ラブエナジーを家の近くで感じたら、来るやろ、変身」
「ちょ、ま、」
彼女は、腕を振るう。
「どついて、しばいて、いてこます〜ラブリーオクトパス見参や」
海をモチーフにした、青い衣装。スカートが波のようにうごいている。上半身は紫色をベースにしているが、後ろの景色に合わせて、色が変わっていく。
「フィールド張るんわ、どれほどや」
「せっかくの奇襲だったのに、…めぼしいのは、a.g.m三カ所」
「はいよ」
手を地面につき、エナジーをながす。これで仕掛けがうごいて、数秒ラブエナジーを撒き散らす。これで、逃げるか誘き寄せられるか。いずれにしても、アクションを起こすはず。
「そして、《ヘッド》の仕掛けを」
「よっしゃ、まかせとき。ワンコールで発火装置が発動する。それも、ぜーんぶ違う方法で、同時に燃えるようにな。紅蓮のやつらは消火に調査に手一杯になるはずや。朝っぱらのボヤ騒ぎ。消防もうごくやろが。気づくんは、紅蓮たちがはやいやろな。それに三カ所のフィールド展開。他にも気づいたラブリーズいても、もぬけのから。」
「…これで時間が稼げる。プランCだな」
「ターゲットの嬢ちゃんが隠れてしまった場合やな。プランAの人質くんはどうする?護衛を捕まえて、人質にしてしまう一石二鳥作戦は」
「…継続。ラブリーズになるやつは正義感が強い。町の異変に気付けば出てくる。こいつを見捨てるような奴はラブリーズではないさ」
「いいわよ!そんな奴!煮るなり焼くなり好きにしなさいよ!!!」
鼻息荒く、腕組みをしているターゲット。空いた口が塞がらない。なんっていった。耳打ちしてくる頭。
「なー、相棒。あれは強がりか?」
「…本気、と思う」
「だよな」
たしかに、ターゲットを見つけるのは早かった。作戦通りだった。だが、人質を突き出した途端、露骨に嫌な顔になった。人質側もそうだ。顔をあわせた途端に、不機嫌そうに顔をそむける。
「その、なんや、なかようしいや」
「「うるさい」」
「ひ!」
なんで人質とってる側が気圧されるんだよ。




