秘策
「……頭〈ヘッド〉ちょっかいかけるのは危険だ。まだ奴らがラブリーズを何人要してるか知らないんだぞ。」
「相棒。牽制や牽制。バトルわけやない。うちら〈蛸〉は、変幻自在自由自在なんやで。紅蓮とかかっこよさげなん。腹立つやん。それに、こういう横のつながりのある連中は、地味に厄介や。うちらが八本足の蛸さんゆうても、手が足りへん。」
「……」
「奴らがターゲットの子らのとこにこんようにしたらええだけや。いま、この街中にしかけてきたわ。」
「…また勝手に。」
「んで、その間に相棒が、狙撃ポイントを絞り込んでいてくれるのを織り込んで、明日には襲撃、夕方には、ウチで祝杯や。」
「…ったく。めちゃくちゃ言って。まぁ、できてるがよ。悪いが詰めきれてはねーぞ」
「さっすが、手は頼れる相棒やな!十分十分。おおきに!」
受け取った地図を手に彼女は笑う。
「高台、風の読みやすさ、撃った後の移動のしやすさ。etc。色々考えてそこかなって」
「んで、証を奪って、奴らはリタイア。明日は別行動やな。」
「…しっかりサポートしてやる。負けるなよ」
「まかしとき」
二人は拳をあわせた。
生徒会室では、白崎副会長と大道寺会長が向き合って座っていた。書類仕事に終われているようだった。
「あー!!白崎副会長!!わたしも修行したい!!」
足をバタバタとしながら、桜子は訴える。
「我慢だよ。会長。秋道庶務がいない間の仕事が残ってるからやらないと、って言ったの君だからにゃ」
さくらこは腕をのばしてつっぷせる。
「あいつ、普段どんだけ仕事してんのよ」
「2人がかりで取り組んで終わらないのもすごいにゃ」
正直勉強に関しては私たちの方ができる。でも、事務処理や学校外の雑務はかなり引き受けてくれていたようで、それに加えて、様々な部活や委員会の助っ人として動いていた。
「だっはー、もう無理、休憩、休憩。んで、話してた件、引き受けてくれますか?」
少し考えたのち、伸びをする。白崎副会長は深呼吸したのち話はじめる。
「んーしかたないにゃあ!さくらこちゃんの暗示は、特定のワードが聞こえたら発動するんでしょ。なら、聞かなければいいにゃ」
「というと」
「ゴツイイヘッドホン!!」
ダミ声でどこからとも無く取り出したヘッドホン。桜の模様が入って、差し色にピンクがLEDで入っている。
「これを使ってみるにゃ」
「これは」
「音楽ガンガンにならせとけば、言葉も聞こえないにゃん」
「なるほど!あったまいいー!試してみてもいい?」
「どうぞにゃ」
彼女はヘッドホンを装着する。
「ふふふ、何か聞こえるかな?」
「……?」
「もしもーし?」
「え?なに?」
「ラブリーズ」
「??」
桜子は気をうしなってない。大成功だ。
「うっし」
ジェスチャーでヘッドホンをはずさせる。
「どうだったかにゃ?」
「なんも聞こえない!!」
「これで行動不能は避けれるにゃ」
たぶん秋道くんは、こんな不自由を強いる方法は発想すらしないだろう。戦いの場でこのお嬢様が動き回るのは是としないはすまだ。
「よっしゃ!これで大樹に助けてもらわなくても大丈夫よ!敵をぶっ飛ばしてくるわ!」
「待て待て待て」
飛び出そうとした桜子の首筋をガシッとつかむ。
「?」
「どこに行って、何と戦うのさ」
「あ、そうか。」
「あと、その状態じゃまわりの様子が聞こえなくなるから、気をつけるのにゃ。根本的な問題は秋道くんにまかせるとして。足手纏いにならないための方法であって、戦う方法じゃないにゃ」
「なら、白崎先発戦うすべを」
「教えない!」
彼女には、珍しく毅然とした言い方だった。
「絶対に。危険な目に遭わせるわけにはいかない。」
「…わ、わかったわ。ごめんなさい。」
「わかればいいにゃ。ヘッドホンは貸したげるから、いつも身につけときなさいにゃ。さぁ、仕事にもどるにゃ」
「はい」
ヘッドホンをくびにかける。
「あとは、ハンドサインかにゃ」
「ハンドサイン?」
「周りの音が聞こえないから、意思疎通をしないとね。」
手を振って、指で歩く真似をする。
「あー、なるほど。歩くとか」
「走って逃げて。とか、隠れるとか。時間を表せる数字や場所とかいいかもにゃ」
「なるほど、なるほど」
彼女たちはあれやこれや話しているうちに下校時間になってしまった。
白崎先輩にアパートまで送ってもらってる最中、走ってくる大樹と出会った。
「お嬢様。心配しました。」
「あ、大樹!やっほー」
「やっほーじゃないですよ。電話も繋がらないし」
「あ、そうか。途中、充電切れちゃってたんだった。」
「ちゃんと門限は守ったください!白崎先輩も!」
「あ、ごめんにゃ」
「ちょっと大樹。白崎先輩を責めるのは違うくない?先輩はあなたの仕事もやってくれたし、わたしの相談にも乗ってくれたのよ」
「それはそれ。門限は門限です。いつ狙われるかわからない。ましてや、俺が近くにいないんですよ!」
「…ちょっと大樹。わたしを子供扱いしないでくれる?窮屈で仕方ないわ!!」
「なんだと。俺は心配して」
「わたしはもう、大道寺カンパニーの令嬢じゃないの!!前にも言ったでしょ!」
「だけど、それを知らない連中もいるし、ラブリーズだって。」
「おそら、きれい」
「くそ、肝心な時にはいつもこれだ!!」
「ちょ、ちょ、ふたりとも、落ち着いて」
「…はっ。今日は、わたし、帰らないから!!」
「は?どうするんだよ!」
「白崎先輩の家に泊まる!!!」
「先輩だって迷惑だろうが」
「いや、わたしは、べつに、」
「ほら!!!」
「あー、そうかい!!勝手にしろ!!」
「いくわよ!!白崎先輩!!!」
すたすたと桜子は歩いていく。
「ちょ、待ってよ。んー、、秋道くん。あたま冷えるまで預かっておくから。君もあたま冷やしなよ。」
「…すんません」
「…ああは、言ってるけど、心配してるんだよ」
「どっちが!!」
「また、明日にゃ」
むしゃくしゃしながら、アパートにかえる。家のテーブルには、二人分の食事がすっかり冷えていた。
「くそ!」
むしゃくしゃしたまま、二人分を平らげ、そのままよこになった。




