分岐点 水族館
「さかな!さかな!かに!さかな!」
「うぉぉぉぉ!解説まで飼育員さん直筆で、丁寧にされてる!お嬢様!しっかり読みましょうよ!」
「チンアナゴってこんなに長いのかにゃ!ラーメンみたいにゃ」
各々が水族館を満喫していく。屋外ステージに人が集まっているおかげで、おもったより楽に展示を見ることができた。通常の展示と異なり、
「大樹!この魚はなんて言うの?」
「お嬢様。ちゃんと説明書きを読みましょうよ」
「秋道くん。マグロがいっぱいにゃぁ。土下座して裸踊りしたら1匹くらいもらえないかにゃあ」
「先輩やらないでくださいね?なんで、裾を持ちながらスタッフさんに近づいてるんですか!やらないでくださいね!!」
「うわああ!いるか!いるかだよ!はじめてみた!」
「ジャンプたっけー!!」
「コンビネーションもすごいにゃあ」
「よぉお姉ちゃんたち。楽しそうだね」
イルカショーを見ていたら背後からふいに声をかけられた。サングラスをかけた若い女性。ピンクと黒のめずらしい髪色。
「は、はい。水族館はじめてなもので」
「イルカを見たのもはじめてで」
俺とお嬢様が応じる。話しかけてきたお姉さんは整った顔立ちで、にこやかに話しかける笑みは柔らかかった。
「はじめて。なのか。」
サングラスから瞳を覗かせる。エメラルドグリーンの瞳。外国人かな。
「は、はい」「ん?」
「お姉さんは楽しくないのかにゃ」
白崎先輩も振り向き話に入る。
「いや。楽しかったんだが、妹とはぐれてしまってね。探してるんだけど見つからなくて。イルカショーでも見ているのかなと、この位の子でね」
背丈はお姉さんのお腹くらい。中学生くらいの子かな。
「だったら私たちが一緒に探してあげるわよ」
立ち上がりふんすと腕組みをしてお嬢様が言った。そんな彼女をグイッと引っ張り耳打ちをする。
「お、おい。おじょ、大道寺さん。受付に伝えたらいいだろ?わざわざ厄介ごとに首を突っ込まなくても」
「みんなで探した方が早くみつかるじゃない」
「でもよ」
言い出したら聴かないのはいつものことだが。今は普段の学校とは違う。現在大道寺家から絶縁状態とはいえ大企業のCEOの娘だ。警戒にこしたことはない。優しそうに見えても、何者か分からない。
「困っている人がいて、わたしが手助けできるなら、見て見ぬふりはできないわ。私はわたしの正義を裏切る真似はできないもの!」
「……はぁ。わかったよ。白崎先輩。いいですか」
「もちろんだにゃあ。我ら生徒会は皆のために!だにゃ」
「お姉さん、妹さんの特徴は?」
「……ありがとう。すごく、、助かるよ。」
なんだか、お姉さんの目がやたらとお嬢様をおってる気がしてならない。お嬢様を守らないといけない使命感と良心の呵責のなか、モヤモヤしてると。白崎先輩が提案する。
「同じエリアをみんなで探して、少しずつ移動するにゃ。私たちもこの水族館に来るのはじめてだし」
「あ、ああ!そうだな」
白崎先輩が俺を見てウインクする。俺の心配していたことを察してくれたのか。
「ふーん、、、。いい仲間だな。お前たち。君たちは何かのチームなのかい」
「生徒会をしてます。」
「生徒会?ははは!なるほど!生徒会か。いい仲間だな。アクセルベタ踏みお嬢さんと、ブレーキ役の少年にハンドルを握るお姉さんか。」
「?」
お嬢様は自覚は無いようだが、上手いことをいうもんだ。たしかにそんな感じだ。
「お姉さんはよく見てるにゃあ」
「君たちより歳食ってるし、色んな人を見ていたからな。妹も出会いの中で成長してほしいんだが。なかなかいい出会いに恵まれなくてね。君たちみたいな人と仲良くなって欲しいものさ」
水族館のスタッフエリアの控え室に2人。オープンセレモニーが終わり、一息ついていた。ちいさな会議室を臨時の控え室にしたようだった。
「ピンクさ~ん。お疲れ様でした!」
1人が飲み物を渡す。
「ありがと!ミコさん」
肩にかけて伸ばしている髪。右側に流しているから、ミコさんだろう。
「双子でラブリーズなんてめずらしいですね」
「まぁねー。運がいいのか悪いのか。」
彼女は面白くなさそうに呟いた。
「メコさんは。いまどちらに」
「あ、あいつは、そとで『紅蓮』のおねーさんと話してる。」
たしかに、外で話し声が聞こえる。あの子も恥ずかしがっていたけど、十分かわいい。
「水族館ライブ楽しかったですね」
「そうだね、ラブリーピンク。あんたは楽しかっただろうね」
「え?」
顔面に拳が迫る。のけぞり、しりもちをつく。運良く当たらなかったが、振り抜かれたこぶしに驚きを隠せなかった。彼女の拳にはいつの間にかグローブがつけられていた。
「ラブリーボクシング!君の顔をフルボッコ!!」
「いてて、な、なに?ど、どっきりかな。ミコちゃん」
「は?紅蓮のねーちゃんは間抜けだね。護衛対象から離れるなんて。あんたの持ってる証を寄越しな」
「エ、ンブレム?」
「とぼけないで。あんたが上位ランカーなら、私があんたを倒した時の証の数は結構な数になるんじゃないかな。」
「な、なにを言ってるか分からないよ」
「カマトトブリやがって。ラブリーピンクなんて時代遅れのおばさんよ!いまからは、私たちラブリーツインズの時代よ!」
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