水族館デート前夜
強い想い。俺がラブリーズになれるのも、強い想いとやらのおかげなのか?じゃあ俺の想いってなんだ。
「それよりも、とうさん何の用事だったんだろ」
父さんはなぜかスマホを持っていない。いつも、公衆電話から連絡をくれる。
電話ボックスの中、受話器を置いた中年の男の声が漏れる。
「あ」
スーツはくたびれ何故か頬は真っ赤に腫れていた。
「大樹に伝え損ねた。ツイてない」
ポケットを探っても、小銭は無く。うなだれる。
「公衆電話も数が少ないからな。……あいつの近くに桜子お嬢様の記憶を奪った手がかりがあるってのに」
男はつぶやき直ぐに電話ボックスを出る。
彼のいた電話ボックスは直ぐに巨大なハンマーに押しつぶされ、跡形もなく破壊された。スーツを翻し、サングラスをかける。
「ふははは!怪盗紳士サン・グラ・さんに当たるわけなかろう!小娘どもが!」
「ち、ちょこまかと。この変態はー!1発入れてやってから、全然当たらない!!潰す!潰す!!潰してやるー!!!」
「……モグラ叩きみたい。……どこかに連絡してた?」
「早くしないとウチらの命が危ういってのに。こいつ1人だけでも厄介だってのに。増援なんてたまったもんじゃないのに!」
3人の人影が、男を襲う。
「君たち。諦めてくれないか。私はマイスイートハニートーストに会いたいだけなのに。仕方ない。紳技 オータムロード流『お姫様抱っこぁ』!!」
「いやぁああ!!変態に抱きしめられ、うわああああ!!潰してやるぅうえ、え、え、速、ええ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「「リーダー!?!?」」
「ふーはっはっは!プリンセスどこまで行こうかふーはっは!!!」
サチに会えば息子やお嬢様の助けになると思ってこんなとこまで来たが、妨害は激しさを増すばかりだ。
「待ってろ!マイサン!!ふははは」
「え、なになに?!わたし、誘拐されて、恋人にでも、されんの?!いやああああ」
おっさんの高笑いと少女の悲鳴が夜の街に響き渡った。
「ん?悲鳴?」
フードを被った人物が、路地裏で反応する。
「おいおい嬢ちゃん。この状況で、他人の心配か?」
男達に道を塞がれている。
「はぁ。」
タバコに火をつける。黒い丸型のサングラスから、目をのぞかせる。緑色の瞳。
「こっちはイライラしてんの。どいてくれる。」
「へへへ。ガンつけてるつもりか?強気な女が服従するのってたまらないよな」
ナイフをチラつかせる。
「……はぁ」
彼女は袖から、長い棒を取り出す。即座に上に振り上げるとピンク色の花火が上がる。
「ふぇ?」
振り上げた際に、ステッキによって、ナイフを落とされ、拾おうとした男の後頭部に一撃。花火を見あげた男のスネを横なぎに打ち、悶絶したところに振り回し反対側から加速を付けた殴打。振り向きざまに、体を捻り、後ろに立っていた男の横腹に打ち込む。
「や、ろ?!」
棒を掴み引っ張ろうとする男。直ぐに手を離し、相手がよろけたところ、踏み込み、掌底を顎にかます。
空中にあるステッキを蹴り飛ばし、逃げ出した男にぶち当てる。
指先から、光の縄をだし、男たちを拘束した。あっという間の出来事だった。
「さて、」
彼女は、ステッキを拾いあげ、壁に突き刺さして、上へ上へと登っていく。
チリンチリンと音がして
「『紅蓮』だ!何事だ!」
赤い自転車の集団が現れた。彼らに任せとけば大丈夫だろう。警察と連携して対応してくれる。
「川奈にお礼と連絡を送っとかないと」
屋上でスマホを操作する。
「久々に戻ってきたけど、なかなか平和にならんな。この街は、はぁ」
再びタバコに火をつける。
「明日は水族館のセレモニーか。タバコ吸えっかな」
携帯灰皿にタバコをしまい、伸びをする。月夜に輝く髪色は黒とピンクのツートンカラー。物憂げな瞳で街を見下ろす。
「ほんっとつまんねぇ。」




