最高の彼女を作りたい
俺、彼作大翔は今日から高校生活を開始する。
(俺には高校生活をするうえで、成し遂げたい目標がある。それはまず彼女を作ること。これは遊びの彼女なんかじゃない。人生を共に最後まで生きられるような、そんな最高の彼女を作る。それが俺の中で最も重要な目標だ。別に深い理由があってその目標を掲げたわけじゃない。俺はただ、高校で勝ち組になりたいだけなんだ!)
俺はそんな目標を達成できるよう、神に祈って校門をくぐるのだった。
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入学式を終え、俺たちは自分のクラスに誘導される。
(1年6組、それが俺のクラスか。この後は自己紹介、そのあとは一度解散で自由時間か。この二つの時間を活かしてまずは友達を作りたいな。いい友達を作るのは、いい彼女を作るのにつながってくる(自論)。自己紹介でも、その後の時間でも親しみやすく行こう。あとは自分から積極的にを意識して、だ)
俺はその後の時間をどのように活用するかの考えをまとめ、いざ自己紹介へ臨む。
「安藤かいとです。趣味は筋トレをすること。わりとムキムキだけど、怖がらないで仲良くしてください」
「四村こうきです。趣味は溶解液をアリの巣に流し込むことです。高校で友達100人つくるってことなんでみんなよろしくお願いしまーす」
「愛村サナカです! 趣味は友達と遊ぶことで〜、めっちゃ高校で青春したいのでみんなよろしくお願いします!」
そんなふうにクラスメイトによる自己紹介がドンドン進んでいく。順番はルーレットによるランダムなようで、いつ自分の番が来るかがわからないようになっている。
(自己紹介の内容は名前→趣味→一言 って感じか。考えるべきは趣味と一言だな。両方とも親しみやすい感じにしたいが、趣味はなるべくホントのことを言いたい。なぜなら俺が作りたい彼女は、最後まで共に人生を過ごせるような彼女だ。そのためには近い趣味を持ってたり、趣味を理解してくれる彼女である必要がある。逆に一言は多少嘘をついてもいいだろう。こいつは親しみやすく行こう)
自己紹介に関して考えをまとめた俺は自分の番を今かいまかと待っていた。
そしてついにその時はやってきた。33人、クラスメイトがいる中俺は24番目。やや後ろの方だ。
そうして俺は立ち上がり、自己紹介を開始する。
「彼作大翔です! 趣味は運動することと、ゲームとか、あと友達遊ぶことです! とにかく遊ぶのは好きなんで、みんな友達になってください!」
俺がそんなふうに自己紹介をすると、円になっているクラスメイトから拍手が起こる。これがどういう感情を込めて行われたものかは俺にはわからないが、ひとまず失敗ではないように見えるので俺はほっと安心する。
その後はトントンと自己紹介が進んでいき、やがてその時間は終わりを迎えた。
そして今からは自由時間。集団で動く時間は終わりを迎えたのだ。
(初日で一番大事なのはこの時間だろう。しっかりばっちり気の合う友達をここで作るぞ)
そう考えて俺はクラスメイト全員が自由に歩き始めたその空間で立ち上がり、俺も歩き始める。
(いろんな人がいるけど……まず声をかけるのは彼だ!)
そうして俺は一人の人物に話しかける。
「初めまして! 良面琉揮くん。早速だけどLINE交換しやん? 俺この高校、中学から遠めだから知り合いが全然いないからさ。よければ友達になってくれん?」
(良面琉揮。彼は自己紹介の頃から思っていたがなかなかにイケメン。それにゲームをやってるらしいし趣味が合うかもしれない)
俺はそんな考えの元、その彼に友人になってくれと持ちかける。そんな俺の誘いは簡単に承諾された。
「大翔だっけ? 全然いいよ。確かゲームやってるって言ってたよな。今度一緒にやろうぜ。俺はわりと色々ゲームやってるし、多分大翔がやってるゲームもやっとんで」
彼は笑いながらスマホを差し出し、俺とLINEを交換してくれる。
「ありがとう! それじゃ俺他にも誰かと喋りにいくから、また後でなんか連絡するわ!」
「おーけー! またな!」
俺は琉揮に手を振ってその場を去る。そして次に声をかけるのは……女子である。
(俺が見てた感じ、このクラスには可愛い女子が数人いる。その中で俺が特に可愛いと思った子は……加藤あみかちゃんである)
黒髪ロングで顔も体型も可愛いその彼女の方向へ俺は足を進める。近づくにつれ、俺の心臓の鼓動が早くなる。まるで恋をしているようなスピードでドクンドクンと心臓が動く。
そして俺は彼女のところに来た時、声をかける。
「初めまして。あみかちゃんだったよね? 急で悪いんだけどさ、LINE交換しない? 俺、クラスの子となるべくたくさん友達になりたくてさ」
俺は彼女になるべく気さくに話しかける。彼女はそんな俺に笑顔を向けて答える。
「ぜんぜんいいよー。わたしもみんなと仲良くしたいと思ってたし。大翔くん、自己紹介で遊ぶの好きって言ってたし今後たまに遊ぼう?」
彼女は優しい声音でそう答えて俺にスマホを差し出してくれる。
(よっしゃ! あみかちゃんの連絡先ゲットだ!)
「俺もめっちゃ遊びたい! ありがとう!」
「それじゃそのうち近場に遊びに行こう」
「もちろん! 俺もいい感じの店見つけとくわ!」
俺と彼女はそんなふうに会話を交わし、そして皆が帰宅を始めた頃に俺たちも別れる。そして俺は、いい感じの友達を作り、可愛い女子とも仲良くなることに成功したことに満足して帰宅するのだった。