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4異世界でデートしてたら、死にそうになりました前編

甘野芣婭(17歳)


目の前にいる葉巻を咥えたウサ耳を生やした変態おじさん達に、芣婭の事を舐め回すような視線を送っている。


物騒この上ない武器を芣婭の目の前で振り回され、さっきから当たりそうで怖いんだが。


え、何これ、変態サーカス祭り?  


「グハハハハ!!!この女は、かなりの女玉だ!!売り飛ばすのではなく、俺の女にするのはどうだろうか」


何故、芣婭は変態ウサ耳おじさん拉致られたんだ?


ちょっと待って、芣婭はギルベルト君とデートをしていた筈じゃ!?


バンッ!!!


勢いよく開かれた扉の先にいたのは、毬栗(いがぐり)頭で前歯が2本出ている茶髪の小柄な男。


この男もまた、髪色と同じ色のウサ耳が生えてい

る。 


「ボス、大変でやんす!!!」


「やんす!?アンタは栗○か!!?(サッカーアニメキャラ)」


あ、やばい。


見た目も栗○過ぎて、もはや栗○にしか見えなくなってきた。


もう、君は栗○だよ、うん。


久しぶりに、アニメ見たくなってきたな。 


「どうしたんだ!!!」


ドゴォォォーン!!!


ボスと呼ばれた男が呟いた瞬間、馬鹿でかい爆発音と衝撃波が部屋全体を揺らす。


「ギルベルト・カーディアックと黒騎士団達が乗り込んできたでやんす!!!」  

  

「な、なんだとー!?」


「それから、変な2人組が変な事して来てるでやんす!!お構いなしに、魔法を撃って来るでやんす!!!」


ドゴォォォーン!!!


ドサッ!!!


再び、この建物全体が大きく揺れ、芣婭は思いっきり床に倒れ込んだ。


「マジで、何故こうなった?」


では、誘拐される2日前まで時を戻そう。


***


2日前のローベルグ家では、ベロちゃんの上半身を見

たシーちゃんの大きな声が、屋敷全体に響き渡る。


「うるせーな!!!鼓膜が破れたら、どうすんだ女!!!」


「芣婭様になんてものを見せるんですか!!この変態!!!」


「変態だと!?俺のどこが変態なんだよ女!!!」


「芣婭様、ご無事ですか!?変な事されていませんか??」


言い合いを終わらせたシーちゃんが芣婭に駆け寄り、ベロちゃんを睨み付けた。


「んだと、このクソ女!!!」


「コラ!!!ベロちゃん!!!そこに正座しなさい!!!」


「え?お、俺?」  


ベロちゃんの言葉を聞いた芣婭は、ベロちゃんの前に立って正座させる。   


「どうしたんだ!!?」


「何かあったの…って」 


「「へ??」」


部屋に入って来たシュベルトお兄さんとマダムは、ベロちゃんが正座をしている姿を見て驚いていた。


ケロちゃんを抱っこしたまま、芣婭はベロちゃんを見下ろす。


「良いですか、ベロちゃん。芣婭は今、とても怒っています。何でか分かりますか?」


「お、おい、芣婭…。俺、芣婭の事を怒らせるような事したか…?」


「シーちゃんの事をクソ女と言ったからです」


「へ?そ、それだけか?」


芣婭の言葉を聞いたベロちゃんは、目をぱちくりさせている。


「シーちゃんに優しくしないとダメでしょ!!お母さんは、ベロちゃんをそんな子に育てた覚えはありませんよ!!」


「す、すんません」


「あ、あのケルベロスが謝った!?」


ベロちゃんが素直に謝っている所を見たシュベルトお兄さんは、思わず腰を抜かしてしまい、床に座り込む。


「良いですか、ベロちゃん。次、シーちゃんに酷い事言ったら…、絶交だからね」


「ぜ、絶交って何だ?」


「もう、ベロちゃんとは話さないし、仲良くしない事です」


「は!? そんなの嫌だし!!!分かった、もうクソなんて言わねーから!!!許してくれよ芣婭」


そう言って、ベロちゃんが芣婭の手を握っては、子犬のよな顔をしてきた。   


こう言う顔をするかね、君は…。


「そう言う顔されると、芣婭が悪い事してるみたいじゃん。仕方ないなぁ、許します」


「本当か!?芣婭!!!分かった!!!悪かったな!!!」


「え、あ、はい」


ベロちゃんが謝ると思っていなかったのか、シーちゃんは呆気に取られていた。


「ほらほら、貴方達。もう朝食の時間よ?シエサ、芣婭さんの身支度の用意をなさいな。貴方も、いつまでも腰を抜かしてないで行くわよ?」


「あ、あぁ、そうだな」


「ケロちゃんもベロちゃんにも服を用意したのよ?いつまでも、上半身裸のままじゃ困るもの。ケロちゃーん、起きなさーい」


マダムが眠っているケロちゃんに呼び掛けると、ケロちゃんが怪訝な表情を見せながら起きる。


「芣婭、ソイツの事貸せ。着替えたりするのに邪魔だろ」


「着替えは見られたくないな…。じゃあ、お願いしようかな」


ベロちゃんがケロちゃんの首根っこを持って、マダム達と一緒に部屋を出て行く。


「芣婭様はとても、お優しい方なのですね。使用人である私の為に怒って下さるなんて…」


「使用人って、なあに?」


「そうですね…、簡単に言いますと家事全般を売る人と申しますか…。私は身分が低い家の出なので、何を言われても文句を言えない立場なのです」


シーちゃんが酷い事言われたら、芣婭は怒るよ。だって、シーちゃんは芣婭の友達なんだからね!!!」


はー芣婭の言葉を聞いたシーちゃんは、瞳を潤ませながら口を開く。


「初めて言われました…っ、私なんかが芣婭様の友達になれるのですか…?」


「友達になるのに資格なんていらないし!!これからも仲良くしよーね、シーちゃん」


「はいっ、芣婭様っ。一生、芣婭様について行きますっ…!!!遅くなりましたが…。身支度のお手伝いをさせて頂きますね」


「ちょっと待ってね」


そう言って、ベット横に置かれたスクバを手に取り、メイクポーチを取り出す。


この世界に来た時、スクバも一緒に持って来れていた。 

 

そう言えば…、スマホって使えるのかな。


スマホを手に取ると、ブラシを持ったシーちゃんが興味深そうに、スマホを見つめている事に気が付いた。


「芣婭様、それは何ですか?」


「あ、これ?スマホだよ」


「ス、マホ?」


「これで、メールとか電話とか写真撮ったりする事が出来る機会だよ」


ま、使えないだろうけど確かめてみようかな。


そう思いながらスマホの電源を入れてみると。電源が入りメッセージが大量に届いたのだ。


ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ!!!


「わわ!?で、電源が入った!?嘘!?マジか!!!」


「芣婭様!?その機械から音が鳴っています!!!泣くんですかあ?この機械!!」


「通知が来たら泣くよ(笑)あ、お兄ちゃんと菜穂から、めっちゃメッセ来てた。ちょっと、返信出来るか試してみて良い?」


「分かりました、私は髪をブラッシングさせて頂きますね」


シーちゃんはそう言って、背後から優しくブラシで髪を整えてくれる。


しかし電源が入ったものの、返信出来るのか?  

       

Wi-Fiは…、流石に飛んではないか。


届いたメッセージを開くと、2人からの芣婭の身を案じている言葉ばかりだった。


メッセージアプリを開き、返信しようとしたがエラーが出てしまい返信は出来なかった。


「やっぱり、返信は出来ないか…。既読はつけれるけど、仕方ないな」


他の機能が使えるかどうか試してみたが、使える機能はカメラとインターネットのみ。


「芣婭様、私にヘアセットをさせて頂いても宜しいですか?」


「え、良いの?」


「はい、芣婭様が宜しければ…」


シーちゃんは申し訳なさそうに、少し照れたような表情をしていた。


「じゃあ、お願いしようかな!!シーちゃんのセンスに任せた!!」


「はい!!!」


芣婭の言葉を聞いたシーちゃんは、凄く嬉しそうに返事をしてくれて、コテらしき機械を手に取る。


とりあえずスマホ置いて、ギルベルト君からの手紙を読みたい!!!


さっきから、めっちゃ気になってたもん!!!


ドキドキしながら届いた手紙を開け、書かれた内容を読んで行く。


《明後日の正午に迎えに行く。芣婭に会える日を楽しみにしている》


「シーちゃん!!!デートに誘われちゃった!!!」

  

「え!?ギルベルト公爵様からですか!?凄いですね、芣婭様。これまで、ギルベルト公爵様は女性をデートに誘ったなどの噂は聞いた聞いた事がありませんよ」


「ねぇ、シーちゃん。ギルベルト君って、カッコイイじゃん?モテてたよね、やっぱり」


「確かに女性から人気はありますけど…。ギルベルト公爵様が近寄って来る女性を相手にしていませんでした。ましてや、女性の事をエスコートしたり、楽しそうに会話をなさる事も…」


シーちゃんはそう言いながら、芣婭の顔を覗き込む。


「ですが、昨日のギルベルト公爵様はとても楽しそうに見えました。芣婭様と話している時も、共に紅茶を飲んでいる時も、ギルベルト公爵様は穏やかな顔をされていました」


「え、本当?えー、ヤバイ!!!返事したいなぁ…、あ、手紙を書けば良いのか!!!シーちゃん、手伝ってくれる?」


「私で良ければ是非、お手伝いさせて下さい」


芣婭としーちゃんが楽しく話している間、ケロちゃん

とベロちゃんとシュベルトお兄さん達が、穏やかではない話し合いをしていた。


***       


食堂では、着替えを終えたケルベロスはシュベルトに昨晩の出来事を話していた。


「まさか、今の時代に聖魔法を使える人物がいるとは…」


「この時代?どう言う意味です?」


ケロちゃんは気怠そうに肘をつきながら、シュベルトに尋ねる。

 

「聖魔法は光の巫女…、光の姫だけが使える最上級の光魔法の事でね。光の姫が最後に現れたのは、数100年も前の話なんだ。2人の話が事実なら、光の姫が現れた事になる」


「おい、俺等が嘘付いてるって言いたいのかよ、オッサン」


そう言って、ベロちゃんはシュベルトの事を睨み付けた。 


「いやいや、そうじゃないよ。光の姫が芣婭さんの事を狙う理由が分からないんだ。まだ、芣婭さんの存在が(おおやけ)になっていないだろう?オルベルト公爵と我々しか知らない。現皇帝には、芣婭さんの存在を知られたくないな」


「現皇帝??芣婭と何も関係ないだろ」


「卑劣なやり方をする奴等が、今の皇族達なんだ。異世界人の芣婭さんを自分達の物しようと、ありとあらゆる手段を使って来るだろう。僕は芣婭さんに、傷付いてほしくない」


ベロちゃんの問いに答えたシュベルトは、用意された紅茶を啜った。


「んな事言ったら、昨日の男は信用出来んのかよ。芣婭に見合いを申し込んできたのもおかしいだろ?会って、いきなり申し申し込むか?普通」 


「そう言えば、貴方言ってましたよね?あの男の命に関わる事だからと。そんな事言われたら、芣婭は会うに決まってます。芣婭の優しさに漬け込んだようにしか思えないよな」


ベロちゃんに続いてケロちゃんも口を開くが、敬語だった口調じゃなくなる。


2人の怪訝な視線に気が付いたシュベルトは、困ったように笑うしか出来なかった。


不穏な空気が流れる中、食堂に甘野芣婭とシエサの2人が中に入って来た。


「旦那様、芣婭様をお連れしました」 


「おっはよー」


シュバルトを睨み付けていた2人だったが、甘野芣婭の顔を見た瞬間、穏やかな表情へと早変わりする。


「おはよう芣婭、今日も可愛いな」


「芣婭は寝ていても、起きていても可愛いですから」


ベロちゃんとケロちゃんの褒め言葉を聞いた甘野芣婭は、隣に立っているシエサの顔を見つめながら口を開く。


「シーちゃんが可愛いくしてくれたんだ。ありがとう、シーちゃん⭐︎」


「そ、そんな!!!勿体無い、お言葉です…っ」


「シエサの照れた顔を初めて見たよ」

 

甘野芣婭とシエサの会話を聞いていたシュバルトが会話に入る。


「ふふ、シエサを芣婭さんの側に置いて正解だったでしょ?旦那様?」


食堂に入って来たロザリアは、シュバルトに抱き付きながら問い掛けた。


「君の見立て通りの結果になったようだ。手に持っているのは、デザイン案かい?」


シュバルトは、ロザリアが持っていたスケッチブックにい視線を移す。


「ええ、芣婭さんに着せたい服が沢山あるのよ!!それに、ギルベルト公爵から、デートに誘われたんですって!!!」 


「「はぁ!!?反対だ、反対!!!」」


ロザリアの発言を聞いたケロちゃんとベロちゃんの大きな声が重なった。  


「えぇ!?な、なんで?」


「あんな怪しい男とのデートなんて、行かせる訳ないだろ?」


「ギルベルト君は怪しくないよ!!優しいよ?」


「ゔっ、俺が芣婭の困り顔に弱いの知ってるだろ…」


甘野芣婭の下がった眉毛を見たベロちゃんは、テーブ

ルに突っ伏しながら項垂れる。


「芣婭が見合いをさせられた理由は、大まかギルベルトって男の呪いを解く為だと思いますよ。具体的な方法は分かりませんが、そこの男も理由を言いたがりませんし」


ケロちゃんの言葉を聞いたシュベルトは、罰の悪そうな表情を浮かべた。


「んー、だったらさ?ギルベルト君本人に聞いたら良いんじゃない?」


「「「へ?」」」


甘野芣婭の予想外の言葉を聞いたケルベロスの2人とシュベルトの言葉が重なった。


***  

甘野芣婭(17歳)  

        

ギルベルト君とのデートの翌朝を迎えたのだが…、ケロちゃんとベロちゃんは納得してない感じだ。


2人が納得しないのも無理はない。


何回目かの話合いで、ケロちゃんとベロちゃんは芣婭達の事を遠くから監視すると言う事で、話し合いは一旦まとまった。


マダムが用意してくれたベージュベースのふんわりシルエットのロングワンピースを着て、全体的にパールが散りばめられている。

         

後ろでは、シーちゃんにヘアアレンジをして貰っていた。


シュベルトお兄さんにも、大人の事情があるみたいだし…。

 

2人の心配そうな眼差しが痛い…、だけど絶対に本人に聞いた方が間違いないっしょ!!!


芣婭、もう1回だけギルベルト君に会いたい…んだよね、困った事に。 


ギルベルト君って、芣婭の夢に出て来た男の子にめちゃ似てるんだよなぁ。


だからなのかなぁ、会いたいって思うのは…。


そう思いながらグロスを塗っていると。後ろから2人の大きな溜息混じりの言葉が聞こえてきた。


「「はぁ…、可愛いな芣婭」」   


「え!?ぷっ、あははは!!!真剣な顔してるから、

怒ってるかと思ったのに言う事がそれなんだ!!」


まさか可愛いと言うとは思っていなく、お腹が痛くなるまで笑ってしまった。


「怒ってませんよ、俺達は。ただ、俺達と約束してほしい」


「約束?なぁに?」


「ギルベルトが芣婭に妙な事をしたら、強制的に帰らせますし、二度と会わせませんから」


「うん、分かった!!!約束する」


ケロちゃんがこれだけ心配してくれてるんだから、約束しないとね。


「芣婭様、鏡を見て後ろの出来上がりを確認してただけますか?」


「うわぁ!!!シーちゃんマジやばいね!!!」


美容師が持つような3面鏡で出来上がりを確認すると、後ろで髪の毛で作った大きな薔薇の花が咲き誇っていた。


小さなパールも散りばめられていて、ワンピースにとても合っている。


「めちゃ上手じゃん!!!めっかわ!!!」


⭐︎めっかわとは、めちゃくちゃ可愛いの事⭐︎


「あ、ありがとうございます芣婭様」


コンコンッ。


「芣婭さん、少し良いかな?」 


扉が軽くノックされ、声を掛けて来たのは、シュベルトお兄さんだった。   


「どうぞー、入って大丈夫だよー」


芣婭の呼び掛けを聞いたシュベルトお兄さんは、部屋の中に入って来た。


ガチャッ。  


「失礼するね、おっと今日もとても愛らしいね。その服はロザリアのブランドの新作だね、よく似合っているね」


「マダムのブランドって、マジか」


「話が脱線してしまったね、これを渡しに来たんだ」」


そう言って、シュバルトお兄さんは、芣婭に可愛らしい包みの渡す。


包みを受け取ると、ズシッと手のひらに重みを感じた。


「何が入ってるの?かなり重いような…」


「あぁ、中身はね?この国のお金だよ。お小遣いと言

う所だよ」


「お小遣い!?良いの!!?あざまる水産!!!芣婭、お小遣い貰ったの産まれて初めて!!!」


世の中の子供達は、こんな嬉しい気持ちを感じていたのかー。


ふふ、みんなに、お土産買ってこようっと。


「芣婭さん、お迎えが来たよ。そろそろ出れそうかい?」


「え!?ギルベルト君、来た!?行ける行ける!!!大丈夫!!!」


「良かった、それじゃあ行こうか。ケルベロスの2人も同行してくれるかい?」


ケロちゃんとベロちゃんは、シュベルトお兄さんに返事をせずに立ち上がる。


2人は芣婭の手を取り、そそくさに部屋を後にしてしまう。


あちゃー、この場合はどしたら良いの?


シュベルトお兄さんとシーちゃんは、慌てて芣婭達の後を早歩きで追い掛けてきていた。


逸物の不安を抱えたまま屋敷の外に出ると、黒馬の黒

塗りの馬車が2台停まっており、ギルベルト君とコン

ラット達が立っている。


センター分けのギルベルト君…。         


「芣婭」


「っ!!!」


芣婭の姿を見つけたギルベルト君は、優しい眼差しを向けたまま、芣婭の前まで歩いて来た。


え、なになになにー!!!??


すっごい甘いオーラを、放ってらっしゃるんですけど!!!?


「体調は平気か」


「あ、うん、大丈夫…だよ?」


「そうか、今日の服もよく似合っている」


「え!?あ、ありがとうっ。ギルベルト君も、めちゃカッコイイ!!!」


そう言うと、ギルベルト君は軽く笑いながら、芣婭の前に手を差し出す。


ケロちゃんとベロちゃんがゆっくりと、芣婭の手を離し自由にさせる。


「ケルベロスの2人も付いて来るだろ?後ろの馬車に、コンラットとヒュージの2人が乗っている。そっちに乗ってくれ」


「あ?じゃあ、芣婭と2人っきりじゃねーかよ」


「安心しろ、ここから中部外はかなり近い。それに今日は、芣婭に街を案内する事が目的だからな」 

       


「チッ、仕方ねえな…。大人しく乗ってやるよ」


ギルベルト君の言葉を聞いたベロちゃんは、芣婭の顔を見ながら答えた。


「後ろからでも殺せますし、俺は別に良いですけど」


ベロちゃんとは対照的に、ケロちゃんは全く問題なさそうな反応を見せる。


「おいおい、サラッと恐ろしい事言ってんぞ…。芣婭ちゃんにも言ってんじゃねーだろうな」


「はぁ?何言ってるんです?貴方。芣婭以外の人間には言いますよ、当たり前でしょ」


「ひゃー!!!この人、怖すぎ!!!」


ケロちゃんの言葉を聞いたヒューズは、わざと体を震わせて怖がってるフリをした。


「ふざけてないで、さっさと馬車に乗り込め。いつまで経っても出発出来ないだろ」


「あ、そうっすね。2人共、不服化もしんないけど乗ってくだせー」


コンラットの指示通りに、ヒューズは2人を馬車に乗せる。


チラッと、芣婭の方に視線を向けたコンラットは優し

く微笑み、すぐに馬車に乗り込んだ。


「俺達も行こう、芣婭」


芣婭を先に馬車に乗せ、後からギルベルト君が馬車に乗り込むと、ゆっくりと馬が走り出す。


ギルベルト君は芣婭と対面するように座ったので、ドキドキしながら本題を切り出してみた。


「あの、ギルベルト君。聞きたい事があるんだけど…、聞いちゃって良い?」


「何だ?」


「シュベルトお兄さんから、お見合いする前に聞いた事なんだけど…。ギルベルト君が、その…、ヤバめの呪いに掛かってるって…、ガチ?」


「あぁ、その事か」


そう言って、ギルベルト君は襟を肌けさせ、鎖骨と胸付近の肌を見せてきた。


白い肌に痛々しい黒色の棘がタトゥーみたいに、肌の

上に描かれていて右腕の手首まで広がっている。


「俺に掛けられた呪いは特殊なもので、神経を喰われている。それと、棘が広がったら死ぬらしい」


「し、死ぬって…、解けないの??」


「今の所は解けない、色々と調べているがな。お前が心配するような事じゃないさ」


「心配するよ…、だって、死んでほしくないもん」


芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、困ったように小さく笑う。


「芣婭、そんな顔をするな。実を言うと、今日のデートが楽しみだったんだ」


「え…?」


「呪いの事は忘れて、今日1日は俺と過ごしてほしい」


「芣婭も楽しみだったの、ギルベルト君に会いたかったんだ」


ギルベルト君が死んじゃうのは嫌…、どうしたら良いのかな…。


あ、そう言えば…、ケロちゃんとベロちゃんは芣婭の

血を飲んだら、元の姿に戻った。


「あのね、ギルベルト君」


「どうした?」


「芣婭のさ、血を使ったら解けないかなぁ」


「…、は?」


芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、目を見開いて固まってしまった。       

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