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フェンリルは自らの獲物を見つけ品定めをする

 黒銀の毛に大きな爪、獰猛な牙、赤く冷たい目をした巨大なその狼は見上げるほどの大きさ。まるで、伝説上のモンスターだ。

 

「フェンリル……?」


 思わずそんな言葉が漏れ出た。

 

「まさか、こんなのまで飼ってたなんて……!」

「あの手のモンスターって、“秩序”の中には無いんじゃないの?」

「こいつは、ズナーメンから更に東方の『あちら側』のモンスターでね。ちょっとした伝手で亜人種から譲り受けたのだ。軍用に調教してある。知能が高く、戦闘力も申し分ない。一個小隊は壊滅するぞ。感情を持たず、私の命令のみを聞く……まさに理想の従僕だ。これからは亜人種との取引も考えないといかんかもな。私が亜人種を操り、亜人種で国民の“秩序”を守る。理想郷にしてみせよう」

「なにそれ……」


 その瞬間、壁を破ってもう一人の男が現れる。


「……やりすぎだな、ラルヴァンダード」

「アリスタルコ……貴様、何故ここに」

「お前がここで何をしているのかは見届けた。“秩序”の名を語る者が、ここまではやっちゃいかん。お前はもう、ただの悪者だ。カッコわりい。俺は、俺が正しいと思ったことをする」

「アリスタルコ。お前には感謝しているぞ。『使えない人間はもはや信じるべきではない』という確信が得られたからな」

「人のことを洗脳しておいて言う言葉ではないな?」

「記憶を取り戻したのか?」

「ああ。さっき、ちょいと黒焦げになってね。お陰で色々思い出した。ユニ。会ってすぐに思い出せなくて悪かったな。成長したとはいえ、娘の顔をわからないなんてひどい父さんだ」

「な……お父さん……?」


 ユニの瞳が揺れる。


「どういうこと……? あなたが……わたしの……?」

「そんなことは、今はどうでもよい! お前たちは全員ここで死ぬのだ!」

 

 ラルヴァンダードが咆哮し、フェンリルに命じる。


「殺せぇえええええええ!!!」

「来るぞ!!」


 アリスタルコがフェンリルを受け止める。


「俺が盾になる! まずはこいつをなんとするんだ!」

「わかった! 感謝する! モンスターと言っても、動物のはずだ。強い雷の衝撃を与えれば痺れて動けなくなるはず!」

「了解! いっくよー。全力の〈雷鳴轟嵐(ボルテックスサンダー)〉ッ!」


 フェンリルは「ギャン!」とダメージを受けたようだが、さすがはモンスター。一筋縄にはいかない。その獰猛な牙があたしたちに襲いかかる。

 動物なんて相手にしたことないよ……。

 その動きは素早く、あたしたちは上手く捉えられない。


 あたしたちが戸惑っていると――。


「犬にはきちんと躾をしないとな!」

 

 そういってアリスタルコはシラの電撃で怯んだフェンリルの首を押さえつけ、首を絞めている。フェンリルはその爪でアリスタルコを攻撃しようともがくが、関節技で極められていて、抜け出せずにいる。アリスタルコは関節技もできたのか……。


「フェンリルはこのまま落とす! お前たちはラルヴァンダードに集中しろ!」

「おのれ……。アリスタルコ。許さんぞ……」

 

 怒りに満ちたラルヴァンダードは、溜め込んだ魔力でこちらを攻撃してくる。

 しかし、力が大きすぎるのか、まだ扱いに慣れていないのか、狙いはまだ定まらない。

 あたしたちは、あたしの〈氷刃〉、ユニの〈炎衣〉、シラの魔法、マティアの剣戟とラルヴァンダードの隙を見ながら攻撃していく。


「ちょこまかと……」


 癇癪を起こしたラルヴァンダードは突然大量のトゲを発射した。


「〈氷晶結界(クリスタルドーム)〉!」


 間一髪、シラの魔法であたしたちはダメージを受けずに済んだが――。


「やはりお前から潰すか」


 シラの眼の前に現れたラルヴァンダードがシラを殴り飛ばす。まるで文字通り鋼鉄のようになったラルヴァンダードその体から放たれる打撃は凄まじく、シラは吹き飛ばされてしまった。


「うグッ」

「シラ!」

「人体実験の被検体なんかにはもうなりたくないよ……」

 

 シラはそのまま気絶してしまった。


「すまん! 遅くなった! 俺もいかせてもらうぞ! 〈アリスタルコ・ギャラクティカ・マグナム〉!」


 アリスタルコがラルヴァンダードに突進し、白兵戦を挑む。凄まじいラッシュだ。あたしたちはこの間に作戦を立てる。

 

「(ラルヴァンダードの身体は金属みたいだ……。ひょっとしたら……。リナ。ユニ。攻撃は交互にするんだ。そして、リナはできるだけ、奴の身体を冷やすように。ユニは身体を熱するようにするんだ)」

「(それって何の意味があるの?)」

「(ヴァイスブルクの鍛冶屋ペーターじいさんの言うことは信じて損はない)」

「(わかった。ノートに書いてあるんだね)」

「ま、そんなところだ」


 あたしたちは黙って頷いた。

 

「お。作戦が決まったのか? “魔王の娘”ご一行のお手並み拝見だ」

――次回「ep46.リナたちは長い時間の中で諦めずに戦い続ける」

2025年08月22日 21時00分公開→https://ncode.syosetu.com/n8261kh/46


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