デート
ベッド横の時計に目をやると深夜4時半を示していた。悪夢を見たようで目を覚ましてしまった。
雪猫を起こさないようにリビングへ向かう。まだ空は暗く星がまばらに光っていた。
「今から寝直したら微妙だな」
そう思いコーヒーを淹れて星を見ながら脳へカフェインを流し込む。
「ふう」
今日は交際記念日でデートをする。少々早いが今日着る服を再確認しておこう。俺達は寝る部屋は一緒でもそれと別に個々の部屋がある。俺の部屋には雪猫からも貰った物で溢れている。
「やっぱり俺ってイケメンだよなあ」「そもそも大好きな人に大好きって言われてる俺ってすごくないか?」「いやてかゆきちゃん可愛すぎなんだよな。今日どんな服着るんだろ〜」
なんて妄想を繰り広げていると時計は5時を示していた。特にやることもないので残っている仕事を済ませたり掃除をして周ったりして時間を潰した。
「そろそろかなあ〜」
時計は7時を示し外はすっかり明るくなっていた。雪猫はいつも8時台に起きるのでそれまでに朝食を作る。起きるのは毎回俺が先なので朝食係は俺だ。
ピピピッ
遠くからタイマーの音が聞こえてくる。
雪猫を軽く声をかけ揺すったらシャワーを暖かくしておく。そのまま朝食を作って机へ並べる。
「ふっ、手慣れたもんだぜ。やっぱりかっこいいな」
自画自賛していると最強に可愛い雪猫が風呂から戻ってきた。二人で手を合わせ幸せをゆっくり咀嚼する。
出かける時間が近づいてきたら服を着替え暖かい日差しの下へ足を出す。
ガチャ
「う〜ん!最高」
「きも」
「ええ〜?なんか二人で家出て鍵閉めるってなんか良くない?」
「ちょ、わかんないっすね」
「ええ〜」
玄関のドアを締め幸せを閉じ込める。
「あんまジロジロ見ないでくれますかね」
「ええ〜、ゆきちゃんが可愛すぎて」
「よ〜し、110番かなあ」
「ちょっとまってくださいよー」
今日はゲーセン巡り。ゲームをしたりふんぱつしてクレーンゲームでフィギアを取ったりする。俺達はオタクである。
「ゆきちゃんのフィギアでもないかなー」
「ないですよ。それに実物で十分でしょ。」
「はい!十分です!!」
「え!れんくん見て!あれかわいい!!」
「うんうん」
「やば!可愛すぎなんですけど」
「うんうん」
「ええ〜かわいいー」
「うんうん。ゆきちゃんが一番かわいいね。全部買おうねえ〜」
「いらないってえっ!」
いつもと違う雪猫の顔が見れて幸せだなあ。
約3時間ゲーセンへ入り浸りゲームをして取れたフィギアは2個のみ…。これでも凄いほうだ。長年生きて培った俺のクレーンゲーム力をなめるなよ!!
「ありがと!」
「ぐふっ、まったく、かわいいな君は」
「きも」
この一瞬の為に俺は1万溶かしたんだ…。
「かわいいかわいいな」
「うるさいですよ〜」
それからはご飯を食べたり歩きまわったりして家へ帰った。
「「ただいまー」」「「おかえりー」」
疲れたのか俺達はソファーに体を預け雪猫はすぐにウトウトしだした。「かわいいな」という思いを常に心に住まわせ次第に自分もウトウトしてきた。
よる、ごはん…かわいいなあ、ゆきちゃん。
「あ、おきた」
「あ、あれれ…ゆきちゃん、すごーく可愛い子が眼の前にいるぞ〜」
「馬鹿なこと言ってないで、お顔洗っておいで」
軽くデコピンをされる。窓の方へ目をやると日が昇り始めていた。
そうか、あのまま寝ちゃってたんだな。
「ふふ、かわいいね。優しいねゆきちゃんねえ〜」
「うっさい…ばか」
今日は滅多にないゆきちゃんが俺を起こしてくれた日。これは記念日だな。
「ふふ、かわいい」
「も、もうなに」
抱きしめる。精一杯抱きしめる。離さぬように、忘れぬように抱きしめる。
「もう、」
雪猫がキスをしてくれる。
「うれし」
「ばーーーか」
「幸せだよ」
「ん、私も」
「あいしてるよ」
「あ、あいし、てる」
少し照れくさそうに雪猫が「愛している」と返してくれる。
幸せなんだな。君がいるだけで幸せなんだな。
「ばか」