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Act 5.  Last Stand 24-4

  Chpt24  WAR

       ☆Sept4 不撓不屈の正義


 クラウドの義勇の戦士たちが降りて来たレオン・ドラゴの兵と闘う。こっちは数で勝るけど、ジンの鍛えた精鋭部隊をかんたんにたおすことはできなかった。あたし、ムジョーをとなえようとして、こころを集中する・・・・・・


 バリユースがいきなりあたしのまえにあらわれた。黒いコート、黒い革靴、サングラス。場にあわない、いつものかっこうで風に吹かれて立っていた・・・・こいつら、ほんとになんでもありだ。


 リボルバーをあたしにむける。

「ムジョー」

 やっぱり。

 こんどは、ぜんぜんきかない。

 うす笑いを浮かべている。その笑みが消えた。

「ユリイカ! あぶない」

 ユユがバリユースの背なかを斬ったのだ。

「ぅをっ」

 うめきながらも、ひき(がね)をひく。

「ぁひっ!」

 弾があたしのそばをかすめる。ユユがさらにバリユースに斬りかかる。

「ユリイカ、はやく逃げて!」


 あたし、その場を離れた。非錄斗が来てくれる。

「ごめん、きみのそばを離れてしまった」

「いいのよ、イースがあぶなかったんだもん。

 それより見て!

 下のシルヴィエ軍がいつのまにか来ていて、こっちに上がって来るわ」

「ほんとだ! やばいよ。ちくしょう、どうしよー」


 10人の男の戦士をたおしたソンタグ、カノン、バロイがこっちへ来て崖の下をのぞき、いう、

「おお、来たな。

 まるでアリのむれのようだわ!

 かたっぱしから(ほふ)ってやるさ!」


 ミーシャがさけぶ、

「のんきなこといってるばあいじゃないよ、たいへんだよー」

 バロイが革袋の葡萄酒を陶器のジョッキにそそいで、ぐぃっとあおりながら笑う、

「小さなことを気にするな。俺たちにまかせておけい。ゥワハハハハハッ!」

「ちっちゃくナイぉー」


 口には出さないものの、義勇兵たちも、ぜんたい的に動揺している。レオン・ドラゴの兵たちがいきおいづく。「ぅらああああっ、うちたおせーっ」

 少ないはずの彼らが鋼鉄製の怒涛(どとう)に見える。


 あたし、いった、

「おちついて。

 このままじゃ、負ける。あたしにまかせて」

 バリユースには通じなかったけど、ほかのものには通じるはずだ。

「ムジョー・・・」


 神聖帝国の兵士たちがよじ登って来る崖の岩がみるみるうちに風化する。つかめばもろくくずれ、砂に変わる。

「さあ、これで彼らは、登っては来られないわ。

 形勢逆転よ!」

 あれ? チェバロや迦楼羅やソンタグやバロイやカノンも、みんなちかくの岩にしがみついている。

「おいおい、こっちの岩はだいじょうぶなんだろーな?」

「なにいってんのよ、だいじょーぶよー、ばかにしないでくれる?

 それより攻撃よ」


 登って来た数千のシルヴィエ兵士が落下、兵士たちの上につぎつぎとおちて、隘路(あいろ)では大混乱。


 ストランドがイヴィラ・ヴィシャスの首をとった。

「やったぞーっ。これでわれらガリア・コマータの汚名は晴らされた!」

 カノンが大笑する。

「だれもおまえらを責めてなどおらんかった。しかし、気にしていたんだな。みごと清廉(せいれん)武士(もののふ)だ」


 しかし、ボノがエピタフィラの剣に腕を斬られ、たおれる。ユユがたすけに入るが、たちまち脚に刀傷を負う。ガリア・コマータらは、レオン・ドラゴの兵士らをかたっぱしから(ほふ)っていたが、4分の1の兵力なのに、レオン・ドラゴの精鋭部隊は手ごわい。


 ソンタグが三叉戟(さんさげき)をふるい、ボノとユユのたすけに入る。

 チェバロと迦楼羅は、褐色黒髪で剛力のアンジェラに押されていた。


 しかも、イースもまたジンの剛腕から、いくどもふり下ろされる重く巨大な剣を受けるだけで、せいいっぱいだ。

 ああ。

 そのあいだに、登攀(とうはん)をあきらめたシルヴィエ帝国軍があたしたちの下をどんどん通過して平原へむかっていく。

 やばイ。


 作戦はかんぜんに失敗。敵は、このままハン・グアリスになだれこんでしまう。

 平原に出られてしまえば、あたしたちに勝ちめはない。

 やばすぎるよ!


 あ! イースがたおされた。あ、あぶない。カノン、バロイがたすけに入る。ジンに対峙し、彼女の剣を受ける。

「ぅお、すさまじき女子(おなご)だ!」

 バロイがよゆうを見せようとして、じょうだんっぽくそういった。けど、顔はやや青ざめぎみで、カノンも額の汗を髭からしたたりおとし、

「強すぎるわい」

 そううめいた。


 ジンのほうこそよゆうで、微笑すら泛かべている。

「力こそすべて、力なくしてなにができるか。力でなければ、現実をうごかせない。

 現実でなければ、無意味。現実こそが世界のすべてだ」

 すさまじい膂力(りょりょく)で巨体の2人をかるがるうち負かす。バロイもカノンもひざを突く。

 少人数の敵にここまで押されるとは・・・・・

 しかも、あたしらクラウドの戦士1200は、すでにはんぶんくらいになっていた。大敗だ・・・・


「ムジョー!」

 しかし、ジンの剣は・・・、くずれない! こいつもかよ! なんで、無敵のムジョーがきかないの?

 なんで。

 なんでなんだろう。


「ユリイカ、どうしたのっ、ぼうっとして! あぶないよっ!」

 非錄斗の声で意識がもどる。

「もう、こっちに来て」

 あたしは、ムリヤリ麒麟の背の上に投げこまれた。


「ユユ、お願いだ。ミーシャも乗せて、麒麟で空へ」

「でも、非錄斗、ぼくは」

「いいんだ。きみもケガをしてるだろ」

 あたし、さけぶ、

「いやよ、非錄斗、あたしは」

「いくんだ、ユリイカ。きみがいては、僕は、闘えない」

「非錄斗―っ!」

「さあ、ユリイカ、非錄斗の気持ちをわかってあげて!」

 ユユがそういった。


 あたしたちは、宙へ上がる。

 シルヴィエ帝国軍が隘路(あいろ)を駈け足で通過していくのが見えた。

 なん十万という人間がこんな足場のわるいところを、わずかな時間で通過し終えようとしている。

「イース、撤退しよう!」

 あたしは、そうさけんだ。

「もう、7割か、8割くらいが通過し終えちゃってるよーっ」

 そのときだ。


 はばたく巨大なカラスの背に立ったバリユースがあたしたちのまえにあらわれる。

 無表情でリボルバーをあたしにむける。

「ぅわーっ」

 ユユがあわてて麒麟の手綱(たづな)をひっぱり、むきを変える。弾があたしの髪の毛の上をかすめた。「ひゃぁー」


 大急ぎで逃げる。カラスは、麒麟に追いつけない。ハヤブサにするべきだったわね、バリユースさん!

 逃げ去りながら、ユユは、弓でジンの背なかをねらった。

「ふんぐっ」

 眼を怒らせてジンが背の矢をぬくとき、イースは、体勢をととのえた。ジンがむき直るのを待つ。待つなよ(泣)


「ふ。あいかわらず、おろかな律儀(りちぎ)さだな」

「正義でなくては無意味だ。正義こそが真実だ。真実こそが生命のすべてだ。

 生きることは、生きのこることではない。真の生命なくして生きたとはいえない。

 おろかであわれなのは、きさまだ!」


 ジンの剣にふたたび飛ばされ、たおれる。

 けれど、ふたたび立ち上がる。


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