Act 4. Under the flag of “ Cloud ” 20-1
†Physical phenomenon is zero, because it is physical phenomenon.†
Chpt20 エリコ電話出ろッ!?
☆Sept 1 エリコの検問⁈
その晩は泊って、翌朝、出発した。
崖からおちる深い影、朝日に湖面がきらめき、岩の島は黄金に染まり、湖上城もかがやき燃えている。飛び立つと、やっと解放されたきぶんになっていた。
帰り道、あたし、返信待つのがめんどくさくなって、エリコに電話した。5回めくらいで、やっと出やがった。
「なんなの、ユリイカ。わたし、ちょー忙しいんだけど?」
「そう。順調なの? あんたの仕事って、むずかしいし、たいへんそーだから気になってんだよ。それぐらい、わかんねーの?」
「わかるよ。たいへんだよ」
「そういえば、あんた、通行税とってるんだって?」
「わるい?
お金がなくっちゃ、なにもできないわ。正当な料金なのよ。なにもわるくないわ。わたしが商学講座卒業ってわすれたの? まちがってなんかいないわ」
「そうかもしんないけど」
「そうかもじゃなくって、そうなの。
あんた、ねー、これでも苦労してんのよ。たいへんなんだから。平原ひろいんだから、駈けずりまわってさー。ミーシャにも今日はまったく会ってないわ。
おかげでさー、ハン・グアリスのあっちこっちで難民見ることになっちゃったよ」
「そうなんだ。でも、なんか、いいきぶんじゃないなー」
「あのね、かわいそうな人たちがそれで救われてるのよ。
気持ちだけあったって、なんにもならないでしょ?
あんたは、現実見てないから、そんな理想論がいえるのよ。
こっち来なよ、かわいそうな人たちで、いっぱいだよ。
食べもんなくって、母乳の出なくなっちゃったおかーさんいてさぁ、赤ちゃんがやせちゃってさー・・・・でも、その若いおかーさんも、瀕死なんだ、泣き震えながら、うったえるんだよ、『死ねないっ、この子を残して死ねない』って。まじ泣いたよ、わたしも。
すぐ食べものとミルク持っていったけどさー。そんな人たちばっかしで、ぜんぜん追いつかないよ。
ほんと、焼け石に水ってゆーの? そーゆー感じだよ。すげぇー病むわ。てか、絶望的になる」
「わかった。あたしもすぐ手つだいにいくよ」
「まあ、帰ったら少し休んで、それから来なよ。
けっこー、たいへんだったんだろ、ラグナレク。すんごいやつだしね。こんど、きかせてよ」
「うん。じゃーね。気をつけてね」
「心配ご無用だっつーの。
セキュリティには、ちょー気ぃつかってるから。
じゃあさー、いそがしいから。またねー」
「バーイ」
あたしたちは、いったん、クラウドにもどった。ノーロイとミハイルアンジェロがまだいた。
イースは、到着していないらしい。たぶん、がんじょうな戦車を牽く龍馬は應龍や麒麟のような、飛ぶような走りかたができないせいだろう。
「そろそろ、日も暮れる。少し休んで、明日、エリコたちと合流しよう。そのころには、イースたちも帰って来るかもしれないし」
ANKAがそういった。そう、休みたいよ。
ラグナレクにやられたよ。
活動する気力なし。ダルい。なんか、学校にかよっていたときみたいだ。じぶんの部屋でベッドにたおれこむ。
メールきた。非錄斗だった。
『だいじょうぶか。すごく疲れただろ。今日は、まだムリしないほうがいい』
やさしいよな。癒されるよ。それなのに、いまだにコウキくんのメール来んじゃないかみたいに待ってるじぶん。あー、めんどくせーやつ、ユリイカって。
またメールだ。こんどは、ミーシャだ。
『スッゴぃ、忙し―∋ぉ。
でもネ、ナンカ、ヤバィのー。チッチゃな難民キャンプがぃくツか襲わレチャッテ。ほωとに殺されて。わた∪(涙)・・・・・。ヒドぃのょ、虐殺だぉ』
難民キャンプが襲われた? だれによ! もー、ミーシャのメール、まどろっこしぃ。あたし、つづきは読まなかった。エリコに電話した。
「どういうことよ」
エリコのまわりはガサガサしてる。静寂なこっちとは、ぜんぜん、ちがう。
「怒鳴んないでってばっ!
このだだっぴろい平原をスタッフ数十人でまわって、警護したり、水や食べるものや着るものをわたしたり、ケガや病気の治療をしたり、防寒具や毛布をくばったり、いっしょになって風や雨をしのぐ場所をつくったりしているのよ。
なん万人もの人間が集まっていたかとおもえば、少人数で灌木のかげや、藪にかくれたりしている難民もいて、見つけるだけだって、たいへんなんだから。こっちだってさー、やりきれないよ」
「わかったわ。ともかく、あたしたちもいくから」
疲れなんてふっ飛んじゃった。
ベッドから起き上がって部屋を出る。ANKAに話した。
「わかった。ともかく、現場にいこう。
街道を、いったん、規制したほうがいいわね」
「あー、そうだ、そうだよ、ANKA!」
さっそく、あたし、エリコに電話する。よび出し音が鳴る。ANKAは、
「じゃ、わたしは、ほかのみんなにメール送っとくわ。
ともかく、さきに出るよ」
といって、部屋を出ていく。
あたしが街道の規制のことをいうと、エリコがむきになって反論した、
「規制? バカなこといわないで。
検問所はかんぺきよ。
通行税がとれなくなっちゃうじゃん。だいじょうぶ、検問とか、セキュリティはー、つねにカンゼンだから」
「あんた、さいきん、ちょっとズレてきてない?」
「なにが?
難民を救済するのには、お金がひつようなのよ?
お金がなくっちゃ現実的なことは、なにもできないわ。そうでしょ?
べつにもうけようとしてんじゃない、ほかに選択肢ないし、手段よ、ひつようがあってやってんのよ」
「そりゃ、そーなんだケド・・・・・・」
「でしょう?
それよりかさー、巡回をふやすべきなのよ。敵はさー、まっとうな道なんか走ってないわ。平原のなかよ。だから、巡回をふやすべきなのよ。
いいえ、理想をいえば、平原すべてに、びっちりと人を配備して、ぜんぶの難民集団に警護をつけることができれば、いちばんいいのよねー」
「できるわけないじゃん」
「わかってるよ。
犯人は、だいたい、決まってんだから、そいつらを重点的に監視するのがいちばんいい方法だわ。そいつらをさがすのよ。それがベストだよ。
検問所封鎖なんて、NGよ。犯人決まってんだからさー。
どーせ、ヴォゼヘルゴとか、レオン・ドラゴとか、・・・・・・・あるいは、シルヴィエが裏でうごいてるって、わかってるんだからさー」
「ともかく、いまは、最大限の措置をとるべきじゃないの?」
「だから、だいじょうぶだよ。
じゃ、もぉー切るよ。いそがしいんだよ。じゃねー、また。
あー、なにしてんのよ、あんたたちってばっ」
「どーしたの?」
「なんでもない、外国のキャラバン隊の商人がとおろうとしてるのを、検問のボランティアたちが止めようとしてるから。
商人の雇った傭兵たちが武器持ってるからってさぁ。
いちばん大きな税収の源なのにねー」
「ちょっ、待って、それって、ヤバくない?」
「なにいってんのよー、いまやIEも、ぶっそうだからね。
お金持ちの商人が傭兵を雇って武装してても、ありふれじゃーん。
だいたいねー、いまさら、ンなコトいったって、今日だけでも、もー、いくつもいくつも傭兵つきの大キャラバンをとおしているよ。
ねー、ちょーいそがしいんだけど? 切ってもいい?」
「ウソーっ! 検問、意味ナイじゃん。
ぜったい、やばいってばっ! いいよ、あたしが確認するから、あんた、いま、どこ?
あ、場所、教えてってば、どこの検問よ」
って、もう切りやがった。
エリコのバカー、こういうときは人命優先よ、たとえムダでも、規制しなくっちゃダメ。もしものことがあったらどうするのよ。
あたし、外に飛び出していた。非錄斗いる? いたわ。
「麒麟は、どこっ?」