Act 3. Zero seconds experience 14-2
‐Everyone knows, anyone not knows.‐
Chpt14 新国家の名わ!?
☆Sept2 大国の陰謀
あたしたちは、もどった。ジョリーを旅の状態にもどして、すぐ出発する。
ANKAがとうとつにいう、
「クラウドってのは、どう?
国のなまえよ。だって、こんなに自由で、かたちのない、あるような、ないような、空気のような存在なのよ。
クラウドしかないわ」
異論はなかった。
あたしたちは、ゴルガストへむかう。風が強くなる。
「イースがさっき、わるい予感がするって、いったでしょ?
なんで、やばいの?」
あたしは、デッキに坐って、エリコにきいた。冷たい雨が降りはじめている。あたし、フードを深くかぶった。
「あんた、考えてごらんよ、ハン・グアリスには難民たちがいるのよ」
「知ってるよ」
「ボダシェヴィ大統領は、ヴォル人で、ヴァルゴ教正統派で、難民たちは、邪魔者なのよ」
「?」
ANKAがいった、
「いまは、推測してもしょうがない。いけば、きっとわかる」
峠がちかくなったあたりで、あたしたちは、ジョリーを街道からはずし、山林を走った。
敵の見はりがあるかもしれないからだ。
「ねー、こんなふうに戦争したりしてると、すぐに、ジンに見つかっちゃうね」
あたしがそういうと、イースが、
「避けられない運命だからしかたない」
そういった。
雨がさらにひどくなっていく。
あたしたちは、ジョリーを停め、キャビンに入って、監視用ディスプレイで軍隊の位置を確認した。
軍のようすがくわしくわかったのに、イースは、
「ぼくと迦楼羅でいってこよう。じっさいに見たほうが、いろいろとよくわかるだろう」
といって、出ていこうとした。ANKAが、
「待って。
ユリイカのケータイを持っていって。これならサーバーにアクセスできる。
AR(Augmented Reality拡張現実。現実の情報にさらに情報を付加提示する技術)がつかえるから、カメラをむければ、位置情報や、その周辺の情報や、映ったものの解析結果が付加されて映像に出てくる。
さらに情報が収集できるわ。
収集能力が数倍になる」
「わかった。ありがとう。
じゃ、かりるよ、ユリイカ」
そういって、出ていった。
エリコが電子書籍リーダーを小わきにはさみながら、タブレット型PCで、なにかしらべている。
「見て。
さいきん、このあたりのあっちこっちで難民が襲撃される事件が多発してるわ」
「あっちこっちって?」
「おもにハン・グアリスよ。ほとんどね。
けど、それ以外にも少しあるみたい。ま、ハン・グアリスの周辺だけどね」
「やっぱ、ヴォゼヘルゴの兵隊が襲ってるってことかな?」
「ニュースでは、過激なヴァルゴ教徒の民兵がやってる、って書いてあるけどね」
「民兵?」
「政府の正規の軍隊じゃない、民間人を軍事要員として編成したものを民兵っていうの。
ただし、ふつうは政府が編成したものをいうんだけど、このばあいは、ヴァルゴ教会が編成した軍隊なのよ」
「なんで教会が襲うの?」
「そらー、じぶんたちの宗教がいちばんだと考えるからさ。
じぶんたちの民族が生きのこるためってのも、あるとおもうけど」
ANKAがいう、
「けど、事情はいろいろ複雑だよ。なにごともそうだけど、一概にはいえない。
それに、もしかしたら、民兵じゃないかもしれないわ」
エリコ、うなずく。
イースと迦楼羅が帰って来た。イースがいう、
「4千人くらいだろう。おもったとおりだったよ。
兵は、たしかにハグレーポルガだ。だが、指揮官は、ヴォゼヘルゴの将校で、事実上、ボダシェヴィ大統領の軍隊だ。
それだけじゃない」
エリコがなにかを期待するように、
「なによ、どうしたの? もったいぶらないでよ」
迦楼羅がこたえた、
「荷馬車にたくさんの軍服がつまれていたんだ」
あたし、なんでそれが気にかかったのか、理解できず、
「べつにふつうじゃない?」
イースがあたしのほうをむく、
「正規軍の軍服ならね。しかし、つまれていたのは、ハグレーポルガでも、ヴォゼヘルゴでもない軍服だった」
エリコが声を上げ、
「それって!」
イースもきびしい表情になり、
「そうだ。おそらく民兵といわれている者たちの正体は彼らだ」
ミーシャが泣きそうな顔で、
「ひどい、じゃ、難民を虐殺しているのは」
迦楼羅もうなずく。
「ハグレーポルガ、いや、ボダシェヴィの指示でうごいているヴォゼヘルゴ正規軍だ」
ANKAが憂鬱な表情で、
「これでからくりが見えてきたね」
あたし、きく、
「どうする?」
エリコがさげすむような眼で、
「ねー、たぶん、からくりはそれだけじゃないよ」
「え?」
「ボダシェヴィが、なぜ短期間で強い権力を構築することができたとおもうの?」
「そんなに、はやかったの? ぜんぜん知んないンけど」
って、あたし。
「イ・ェンジェーロ村で、話、いっしょにきいてたじゃん。わすれちゃったのかよ」
「あぅ」
ANKAも顔をさらにくもらせ、
「エリコの指摘はまちがってないね」
エリコ得意げ、
「でしょ?
いろいろネット上の書きこみとか、情報を集めてみると、ボダシェヴィは、帝国とつるんでいるわね」
ぜんぜん、わかんない、あたし、
「帝国って?」
エリコ、イラつきながら、
「北大陸の覇者、軍事宗教国家、超大国、シルヴィエに決まってんじゃん。
ボダシェヴィの政敵をだまらせたり、失墜させたり、暗殺したりしていたのは、シルヴィエの特殊工作員だったらしいのよ」
イースが腕をくみ、
「ふーん、なるほど。
けっきょく、神聖帝国が世界征服をするための戦略の1つなんだ。
ボダシェヴィは、ある意味、利用されているんだな」
あたし、わかんない・・・・・
「難民殺して、シルヴィエになんのトクがあるの?」
イースが考えこみながら、こたえる、
「ボダシェヴィは、帝国の力で政権をとったんだ。帝国にはさからえない。ボダシェヴィが権力を掌握すれば、ヴォゼヘルゴは、シルヴィエの属国状態になる。シルヴィエが難民虐殺に力を貸せば、さらにボダシェヴィは、シルヴィエと離れられなくなる。
それに、ボダシェヴィの政治は、過激すぎてあやうい。難民虐殺がエスカレートすれば、国際的な非難をあびてボダシェヴィ政権は瓦解する。
そのとき、シルヴィエが混乱の調停者として、軍事介入し、事実上、ヴォゼヘルゴを制圧する、ってストーリーかな」
ANKAは、スマート・ブックをひらきながら、
「『kOO』を盗んでいるのも、帝国シルヴィエの可能性が高い。だとすれば、ウイルスも、帝国にいるユーザーがしくんだ可能性がある」
あたし、やっぱわかんない、
「でも、待って、世界のあっちこっちで『kOO』を盗むことができたのは、データをいじったからじゃないの?」
イースがうなずく、
「たしかに、厳重な警戒のなかにある聖典を盗んだのは、データやプログラムをいじることができるユーザーだ。
シルヴィエにそんな者がいるとは考えにくい。というより、プログラムをいじれるユーザーなんてありえるのか」
エリコも考えこみ、
「うーん、そうだよね。それにさ、データいじったとすれば、なんでアカデミアはぶじなの?」
イースが反論、
「いや、文書館や兵舎はぶじじゃなかった」
そうなんだけど・・・・・あたし、
「でも、ウパニシャッド大聖堂は?」
うん、と、イースも同意し、
「そうだった。なぜだろうね。あそこには、さらになにかとくべつなしくみがあるのかもしれない。
なにしろ、心臓部のなかの心臓部だ」
ANKA、スマート・ブックを操作しながらも、あごに手をあてて、眉をしかめ、
「いろいろしらべていておもうんだけど・・・・・
やっぱり、ジンのこともふくめて、すべてがシルヴィエの策略陰謀だとすれば、つじつまがあうよ。
戦国時代みたいな殺伐とした世界が好きなジンをとりこむなんて、帝国ならかんたんでしょう。
たとえば、こういうのは、どう?
まず、ウイルスを蔓延させ、プログラムに侵入し、クドク・システムを狂わせる。
そして、なりふりかまわず軍事力で周囲を制しても、マイナス・ポイントにならないようにIEを変える。帝国を強大にする。
その上で、こんどは金や権力で、クドク・ポイントをふやし、特権をえて、セキュリティに干渉できる地位を手に入れ、プログラムをいじり、聖典『kOO』を盗み、リアル・ウイルスのはたらきをさらに強める。
あとは、ログを確認して、わたしたちの居場所をつねに把握し、バリユースに見はらせる。で、ジンにわたしたちの位置情報を教えて、『kOO』を奪わせる。どうかな?」
あたし、なんかしっくりこない。
「少し話に飛躍がなくない?
だいたい、なんで、あたしたちにからむのか、わかんないよ。
それに、いくら特権ったって、プログラムをいじるなんてことができるものかなあ?」
ANKAがブックをとじ、
「たしかに、プログラムをいじれる、ってのは疑問だね。
わたしの説じゃ、なんで、わたしたちにからむかも説明できていないし」
あたし、
「それにさ、そんなことしちゃったら、IEの意味がまったくないじゃん。
おかしいよ。そうなら、そのユーザーは、ほかのワールドへいけばいいんじゃない? なんで、ここなの?
あるいは、じぶんでワールドをつくっても、いいんじゃないの?
だってさー、リアル・ウイルスをつくれるくらいの技術があるんだもの!」
ANKAも眉根を寄せ、
「謎だね。まあ、人は、いろいろだから、一概におかしいとはいえないかもしれないけどね・・・・
そういえば、今日になって、もう1つ気になることがある。いま、ジンのうごきがログでとらえられなくなっているのよ」
イースがへいぜんという、
「なるほどね。
では、そろそろ、ぼくたちがログを見ていることに相手が気づいている可能性があるってことだね。
ともかくも、問題はウイルスだ。ウイルス・プログラムのある場所をさがすのが、いちばん現実的で、かつ重要だよ。
それだけさ」




