Act 3. Zero seconds experience 14-1
‐Everyone knows, anyone not knows.‐
Chpt14 新国家の名わ!?
☆Sept1 虐殺の予兆
「むろん、考えていなかったわけじゃないわ」
ANKAが不満げにいった。そうだとおもっていたあたしは、
「やっぱ、そうなんだー。知りたーい。たとえば、どんな、なまえ?」
「・・・・・いろいろ考えたわ。最終的には」
「なんにしたのー?」
そういって、ミーシャも会話に加わる。
「まだ決めてないよ」
「どんなの考えたの?」
「いいたくないよ。いいのがおもい泛かばないのよ」
3人、考えこむ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エリコが着替えて出て来た。
「あんたたちヒマね。わたしは、賠償金の請求にいってくるわ」
そういって、エリコは、エチカと迦楼羅とジャジュと非錄斗をつれて出ていった。
しばらくして、ケータイが鳴った。
「ユリイカ? わたし、エリコよ」
「どーした?」
「男爵の館へいこうとしてたのよ」
「知ってるよ」
「そしたら、なんと、ハグレーポルガの正規軍がいるじゃないの」
「ハグレーポルガ?」
「そうだよ、あの男爵の領地は、ハグレーポルガの国の一部なのよ、知んなかったの?
んで、もって、ハグレーポルガは小さな国だから、ヴォゼヘルゴの属国なのよ」
「ゾッコク?」
「ほかの国に支配されちゃって、まあ、ご主人さまと召使、みたいな関係になっている国のことよ」
「へー」
「まじ、信じらんない、大嘘つきなんだよー。
賠償金がおしくなったんだわ。どケチよね。
つーか、ま、いま、そーゆー感じなの。館にむかおうとしたら」
「そーかー。館にいくとちゅうで、こっちにむかって来るハグレーポルガ軍に出会っちゃったってわけね。
それにしてもはやいわね。まるで、さいしょから軍が待機していたみたいな感じで・・・・
エリコ、いま、どのへんなの?」
「川をわたって、森に入って、一つめの丘に立ったら、見えたのよ。たぶん、3キロメートルくらい離れてるわね。見た感じは、歩兵200、騎兵30くらいね。
わたしたちは、急いで退却するわ」
「帰って来るとき、男の子たちに、橋をこわすようにいって」
「いわれなくても、わかってるよ」
電話をきると、ANKAが、
「さあ、準備しようか」
「どうするの?」
イースが物見台から降りて来た。
「ぼくが應龍に乗っていく。麒麟をつれていこう。そうすれば、みんな乗れる」
ANKAが、
「川のむこうに、2つの丘にはさまれたせまい道があったね。おびき寄せて、殲滅作戦で料理しよう」
「わかった」
あたしには、なんのことかわからなかった。ANKAは、ただ、
「兵学講座卒業だからね」
4頭の海馬に四方をまもらせ、ミーシャだけをおいて、あたしたちは、出発した。
應龍にイースとユユが乗り、1頭の麒麟にANKAとあたしが乗る。
川のこちらがわで、エリコたちを見つけた。だれも乗っていない麒麟にエチカ・迦楼羅・非錄斗を乗せ、ジャジュを應龍に乗せた。
ジャジュとユユがイースを、さいしょの丘を越えた場所で降ろし、そのあと、エリコを應龍に乗せて、ミーシャの待つ国に送る。
留守番役だ。
ちょうど、そのころ、イースが敵軍の正面に独りで立つ。
「ひきょう者。
わずかな人数のぼくたちに対するのに、宣戦布告すらせず、こんな大軍をよこすのか!」
男爵配下の騎士がイースを指さし、
「あいつだ、油断するな。いっせいに攻撃しよう」
「問答無用で突撃か! さあ、来るがいい。よこしまな者どもよ」
すると、たてがみのついた鉄兜の戦士がサーベルを手にし、声を上げる、
「なにをいうか。
われこそは、ハグレーポルガ軍に名をかがやかせるストイーク少尉である。
きさまらのような、『kOO』を盗んだ賊に、ひきょう者よばわりされるいわれはないわ!
ニュースにも顔が出ておるぞ!
よって、正義の名のもとに、きさまらを成敗する。天誅を受けよ!」
「逆だ。
ぼくらは悪の手から、聖なる書物をまもっているのだ。おまえたちは、なにも知らない。
どうやら、なにをいっても、ムダなようだな。いいさ、さあ、来い!」
そういいながらも、イースは、逃げるように、敵に背をむけて走りだした。
「おおっ、さすがに大軍に怖れをなして逃げるぞ!
それ、追えっ!」
そのあいだに、エチカ・迦楼羅・非錄斗を乗せた麒麟が敵軍の背後にある小さな森に着陸する。
イースは、2つの丘にはさまれた道に入った。
せまくて、人が2人ならぶのがやっと、馬なら1頭がやっととおれる道だ。
敵の全軍がイースを追って、そこに入る。
そのとたん、敵の背後にかくれていたエチカ・迦楼羅・非錄斗が出て来て、道の入り口をふさぐ。
イースもせまい道の出口で身をひるがえし、出口をふさぐように仁王立ちする。
どんな大軍でも、歩兵2人か、騎兵1騎ずつしか対面できない。数の意味がなくなった。これがANKAの作戦だ。
ハグレーポルガ軍は、イースにつぎつぎ斬られる。まったくまえにすすめない。しかし、うしろにも逃げられない。せまい場所でパニックが起こる。
そんな状況のさなか、追いうちをかけるように、ジャジュのあやつる應龍に乗ったユユが空から火矢をはなつ。パニックはさらにはげしくなる。
「撤退だー。ここから出るんだー」
けど、出口もふさがれているのだ。エチカや迦楼羅や非錄斗につぎつぎとたおされる。
イースは、斬って斬って斬りまくり、敵をじわじわ追いこむ。とうとう入り口のところまで到達してしまった。
立っている敵は、もう1人もいない。
ANKAは、たおれている兵士のなかから、マックンロー・ドルトン男爵とストイーク少尉を見つけると、問いただす。
「ハグレーポルガ軍の本隊はどこ?
どこかに本隊がいるのよね?
まさかわたしたちをやっつけるためだけにハグレーポルガが軍をこんなにはやくよこすわけがないわよね?
もともと、べつの目的があって、ハグレーポルガ軍が進軍していたんだとしかおもえないわ!」
そっか。たしかにそうだよ。ANKAなんて、あたまいいの!
さすがに少尉の口はかたかったが、男爵は、もう半泣きで、
「知りません、けれど、ゴルガスト峠のふもとに数千のハグレーポルガ軍がいます。
そのなかには、ヴォル人がまざっていて、ヴォゼヘルゴの将校がいます」
どういうこと? でも、わかっていないのは、あたしだけみたいだった。
ANKAがいう、
「いこう」
だが、エチカが、
「いや、いったん、国へ帰ろう。エリコやミーシャをのこして長い時間、国をあけるのは、あまりに不用心だ」
イースも同意し、
「エチカの心配はもっともだ。国に帰ろう。
しかし、ふたたび行動するなら、はやいほうがいいかもしれない。
ゴルガストは、ヴォゼヘルゴの国境にある峠で、そのさきはハン・グアリス平原だ。
わるい予感がするよ・・・・」