Act1. As Of Now † Reality is only interpretation † 4-9
Chpt4 エリコとミーシャ!! & イース ☆彡
☆Sect9 オーク!
やっと、馬車が来て、ジンたちが乗りこむと、あたし、すぐ、ANKAにきく、
「ねえ、知りあい、もしかして」
ANKAが眼でジンの乗った馬車を追いながら、
「ジン・メタルハート。MUDの世界じゃあ、けっこう、有名なやつ。
あとの4人は四天王、ってとこね。
なんどか、よそのゲームですれちがったわ。それだけよ」
ミーシャがたまらずいう、
「ねえ、馬車、来ちゃってるけどぉー」
エリコが声を上げ、
「えー、あいつが、そーなの?
なによー、たいしたことないじゃん!」
おめーもな。
でも、ジンのこと、知ってたんだぁ。あたしだけかよ? ぜんぜん、知んナイ。
「ミーシャ、知ってた?」
「ん うーん」
首をよこにふる。あー、よかった。これで、よし。
あたしたち、協力しあって、荷物を後部の台にのせた。んしょ、んしょ。ランプがゆれる。
獣脂を燃やす吊るしランプ。独特のにおい。
かぼそいステップを上がり、豪華な飾りつきの扉から入ると、ギャザーの入った革張りのシート。ふれてみた。きめこまかくて、しなやか。
じょ、上質だー。
すげー、いーじゃん。
馭者が鞭をふると、4頭の馬が蹄を鳴らして、ゆっくりと、すすみはじめた。
ほかの列からも、馬車がつぎつぎ出発しているので、ジンたちの乗った馬車は、すでに、見えなくなっていた。
あたしたちがいくのは、古い街の、さびしげな石畳のメイン・ストリート。
過去の栄光をしのばせる石造りの建物は、たくさんの彫刻で飾られ、円柱にささえられたアーチ形のステンドグラスの窓を、いくつも身にまとい、破風に浮彫り(レリーフ)や、モザイクを奢っている。
ひろい歩道には、街灯がならび、歩く人たちは、優雅なコートをはおっていた。
けど、あたしには、ほそい路地にいる物乞いの人たちや、酒を呑んで酔っぱらい、道ばたで眠ってる人たちのほうが眼についた。
ANKAも、つぶやく。
「おかしいね。IEには、物乞いなんかいないはずよ。
コスプレかしら。慈善や奉仕は、なによりも、クドク・アップに、ひつようだから、いるはずがないわ。それに」
「なに?」
「見て、あれ。証券会社よ。人が集まって、さかんにしゃべっているでしょ。
あの銀行も見て。為替レートが表示されてるわ。
公会堂の看板には、競売の予定日が掲出されてる。
金銭や財産への執着はマイナス・ポイントなのに、こんなはずがない。
なにか、おかしいよ」
「でも、あたしらの現実世界では、たぶん、ふつうだよね?」
「現実の世界は、くさってるからね。
力の争いだけがあって、なんの倫理もない世界。
モラルになんの関係もなく、ただ、ただ、原因が結果を生むだけ。
なんの規制もなくて、金銭とか、即物的な原理がはばきかせていて、強い者が勝ち、したたかな人たちがトクをする、ただ、それだけのくだらない世界。
それなのに、わたしたちに、いい子になれよ、とかいうんだから、大人って、みんな、あたまおかしいでしょ。イミわかんないよね(笑)。
いい子になってほしきゃ、金権政治家や指定暴力団や天下り役人を全員処分して、オレオレ詐欺とか、みんな死刑にしなきゃ、ナットクできないでしょ。
大人が拝金主義者だから、こどもが「年寄りから、ハンドバッグひったくったって、いいじゃん。金儲かるんだからさー」的な感覚になっちゃうんだわ。
わたしたち、大人と、いっしょに、やってたんじゃ、正しくも、しあわせにも、ぜったい、なれないのよ」
「けど、どーしたんだろ。作者の気が変わった、ってこと?」
「そんなの信じらんない」
「でも」
エリコがわって入ってくる。
「あーら、知んなかったの? ここじゃ、これがさいきんのモードらしいわよ。どっかのスレッドにも、あったわ」
ミーシャが変な顔をする。
「えー、それじゃあ、こまるぅー。わたしでも、たのしく生きていけるとこだと、おもってたのにぃー」
ANKAが手をふった。
「いいわ、ともかく、ようすを見ましょう。
でも、ほんとに、変わったんだとすれば、モードなんてレベルの問題じゃないわ。
ミーシャのいうとおりよね。来た意味がなくなる。根本的な問題だわ」
メイン・ストリートをぬけて、街はずれに来ると、城壁と、門が見えはじめる。燦然たる紋章が城塞都市の門の、アーチの頂点に、はめこまれていた。
蛇体の龍を2匹巻きつかせた鷲がシーレオーノの街を象徴する紋らしい。見上げれば、舞いおちる雪が幻想的なきぶんにさせる。
無口になった。
ANKAも、なにか考えこんでいるけど、なに考えてるかは、わからない。いわないし。
「やっぱさあ、なんか、旅愁感じるよねー」
エリコが気どって、そういった。
「ロマンチックみたい」
ミーシャは、うっとりしてる。
門衛の兵の立つ、門を出た。
石畳の街道になっている。
さびしい風景だった。ただ、灰いろの空と、降る雪。
白い丘陵地帯へつづく、古い石の道。とおくに見えていた山々(やまやま)が少しずつだけど、ちかづく。
しばらく、ゆられてすすむと、あたし、眠くなってきた。ウトウトしてると、だんだん、樫や杉、ブナや楠がふえ、大木がたくさんそびえて、陰をなす森に入る。
木の幹の苔が老人の鬚のようだった。
積雪の気候なのに、深い苔があるなんて、ぜんぜん、あってない。ふしぎな森だ・・・
とうとつに、数十メートルあとから、悲鳴や、怒号がきこえた。
馬車を牽く馬の、おびえた鳴き声がする。護衛のアカデミア騎士が剣をふるう音。
なに者かが馬車の列を襲ってる?
あたし、あらわれたやつらのすがたを見て、鳥肌が立った。
裸にちかいからだで、体毛の長い、ゴリラみたいな怪物の集団がコン棒や、斧や、大剣を持って、あばれている。
寒くないのか?って、ンなこと、ゆーてるばやいじゃない!
エリコがさけぶ、
「オークだわ!」
「おーく?」
あたし、きいちゃった。ミーシャも、
「えー、えー、こわいよぉー。
で、オークって、なに?」
ANKAがこたえる、
「怪物よ、鬼みたいなものね」
そうなんだ、あ、あー、あ~っ、来るよ。
「あ、来る、ありえねー」
エリコがふたたびさけぶ。
あたしたちのちかくでも、護衛の騎士が剣をぬき、騎馬のたてがみをなびかせ、いななかせる。
すると、両わきからも、とつじょ、わいたようにオークの一団があらわれた。不意を突かれた騎士たち、つぎつぎと馬から、ひきずりおろされる。
「どーしよー、まぢやばいー」
あたしも、あせってさけぶ。