Act1. As Of Now † Reality is only interpretation † 4-1
Chpt4 エリコとミーシャ!! & イース ☆彡
☆Sect1 エリコ登場!
いきなし、猛スピードで藁に突っこんで、大きな音を立てた、あたしたちを、しんぱいそーに見てるおじいさんに、「ごめんなさい」とだけ、いいのこし、走る、走る。
気がつけば、風はすでに弱くなって、雪が降りしきってるだけだった。
茅ぶきの屋根と石づみの壁の村は小さくて、うす闇のなかでも、すぐに駅舎が見つけられた。
午前3時36分。楽勝だ!
駅は古くて田舎の無人駅みたいだったけど、キップ売り場も改札もあって、駅員さんもいた。
そのまえで、必死になって、荷物をひっくりかえし、なにかをさがしまくってる女の子がいた。
「どーしたの?」
あたし、おもわず、きいちゃった。
その子は、キッと、にらむように、あたしを見上げた。
「ないのよ!」
「なにが?」
「お金に決まってんでしょ!」
「決まっては、いないとおもうけど」
「どーでも、いいわよ。あんた、ちょっと、ウザくない?」
そこにANKAが来た。
「ユリイカ、なにしてんの。キップ買わなきゃ、乗れないでしょ。
いいから、財布よこしなさい。
買ってきてあげるわ」
その子の眼がかがやいた。
「ねえ、エリコのも、買ってきて!」
ANKAが怪訝な顔でにらむ。
「いいけど。でも、お金くれる?」
エリコがこまった顔をつくる。
「ねー、少し貸してくんない?」
「少しって、いくら?」
「キップ代全額」
ANKAがおもしろがってるような表情で、いった。
「もちろん、貸しても、いいわ。
返したくないなら、返さなくてもね。
あんたも、ここのルールは、とーぜん、知ってるわよね?」
エリコがふくれっツラする。
「ばかにしないで。知ってるわよ。
クドクが減るわ。でもさ、しかたないじゃん。またとり返せばいいのよ」
「OK!
じゃあ、いっしょにいこうか。
ユリイカ、あんたの財布からも、この子のぶん、出しとくからね」
「ええ! なんでー、ANKA」
「ばか、あんたも、わかってないの?
クドクよ、クドクのほうがお金より価値があるの。
わかった?」
あたしとANKAは、防寒具やらをぬぎ、折りたたんであったバッグをひろげて、それらをしまい、エリコといっしょに、その荷物をひきずりながら、キップ売り場の窓口へいく。
デニムを着た、太ったおじさんが背をむけて、だるまストーブにあたっていた。
「キップください」
大きな声でよびかけるエリコ。あんた、じぶんの金じゃないでしょー。
「シーレオーノ行、3枚ね。
特等にしてよ、空いてるわよね?」
ふりむいたおじさんは、赤鼻に小さなメガネをのせている。顔をしかめて、小さな紙きれをにらむ。白い鬚をなでる。
「空いてるよーじゃな。アカデミアにいくのかい、お嬢さんがた」
「とーぜんよ」
「そうかい、がんばってな。ほら、3枚」
エリコが得意げに、キップをあたしたちにくばった。
そして、あたしとANKAは、顔を見あわせる。プっ。ふき出して笑う。
「なによ」
エリコが不満げ。あたしも、いってやったよ、
「なんでもないわ、あきれただけよ、あんた、ある意味すごい」
AnkaQDQ:6 EurekaQDQ:6 EricoQDQ:3
そんなあたしたちのやりとりなんか無視して、ANKAがホームのようすを改札口からうかがう。閑散、風ふくだけで、さびしげだ。いう、
「さ、いくよ。ここじゃ、寒すぎるわ。ホームにいっても、しょーがないしね。
バルで、コーヒーでも、飲みましょう。ひらいてれば、だけど」
「バル?」
あたし、きいちゃった。
エリコがエラそーに、うんちく、
「あー、そんなことも、知らないの? 勉強不足ね。
バル、っていうのはね、どこの村や町にも、かならず1軒はある立ち飲み食いの、安い店で、都会なら、街区ごとにあるわ。
国や地方によっては、バールっていったり、パブっていったりするのよ」
「へー。
エリコ、バカそうに見えるけど、勉強したんだ」
「ユリイカ、っていったっけ? あんたに、いわれたくないわ」
ANKAが口をはさみ、
「あそこに、あるわ、やってるみたい。こんなに、はやい時間から、ありがたいわ」
あたしたちは、雪降りしきるなか、震えながら、店に飛びこんだ。いかにも田舎っぽい、つーか、農家の納屋に、カウンターがあるみたいな。
朝、仕事のまえに1(いっ)杯やってる農夫のおじさんたちがなん人かいる。
あたし、入ってびっくり。だって、床はまるめたナプキンやタバコの吸い殻だらけ。サイアクじゃーん。
「あーら、ぃいお店ね」
エリコが得意げにいう。
「どーゆーことよ」
あたし、ついムッとなる。
ANKAがため息しながら、説明、
「あんたら、猿と犬みたいね。レベル同じで、ちょうどいいってことかしら?
ねえ、ユリイカ、バルでは、ゴミは床に捨てていいことになってるのよ。
繁盛してる店ほど、ゴミだらけなわけ」
「へー」
うす暗くて、黒っぽい、丸太小屋みたいな店内で、あたしら女の子3人は、奇異の眼で見られた。とくに、雪まみれのあたしとANKAとは、けげんな面持ちで、じっと見られた。
カウンターのむこうに、背が高くて、やせた、気の弱そうな男と、小柄で小太り、頬がつやつやして血色がいい男とがいて、上機嫌にお客としゃべってる。
「いらっしゃい、お嬢さんがた。なんにしましょうか」
やせた人がやさしげに注文をきいた。つやつやした頬の人は、ニコニコしていう、
「うちのチーズは最高だよ。ワインは、ちょっとムリかな、お嬢ちゃんがた。
おれたち、いつも週末は、あっちこっちの農家をまわって、それこそ、山も越えてね、秘蔵のワインや、チーズを見つけ出して買いつける、それがしゅみなのさ」
しあわせそうに笑った。少し離れた席の農夫がぷいっと、よこをむく。小声で、ぶつぶつつぶやくのが、あたしの耳にもきこえた。
「けっ、このご時勢に、のんきな暮らしぶりじゃねぇーか。さぞかし儲けてんだろぉーなぁ、へっ」
ANKAが顔を声のほうへむけ、
「変ね」
ポツリといってから、顔をもどし、注文をはじめた。ホット・ミルクをたのんだ。あたしも、同じにする。エリコが気どった口調で、ブラックを注文した。
「あんたら、ガキねえ」
なまいきなこといったエリコに、ANKAが忠告していう、
「からだをあっためるものを飲んだほうがいいわよ。そんなんじゃ、おなかも、すくよ」
「ふーん」
「ねえ、あんたさー、なんで、そーゆー態度なわけ?」
あたし、いわずにいられない。
「そーゆー態度って、どーゆー態度よ」
「てゆーか、お金なくて、こまってたくせに、えらソーってことよ」
「あーら、あんたたちに、クドクをつませてあげたんじゃない。じぶんのポイントを犠牲にしてさ」
ANKAがからかうように、
「まあ、そうとも、いえるわね。ところで、あんた、1人で、ここまで来たの? たいしたもんね、女の子、独りで」
エリコが鼻の穴をふくらませる。
「まあね、あたしって、けっこう、かしこいから、しょーがないじゃん。
あんたらも、ケータイあるでしょう? 雪上タクシーよべばよかったのよ。
運転手は、雪豹くん。攻略本にも、書いてあったわ」
あたし、すなおに感心したけど、ANKAは、けらけら笑って、
「それじゃあ、お金もないわね。しかも、マイナス・ポイントよ。あんたの攻略本、よっぽど、安かったみたいね」
「知らないわ。彼氏が見せてくれたんだもん」
こいつ、彼氏いるんだー。あたし、まぢムッとした。少し哀しかった。ANKAが素知らぬ顔していう、
「そんな男とは、わかれるべきね。バカとつきあっても、いいことないわ」
意外にも、エリコが真顔でうなずき、
「そうね、ほんとだわ。もう、アイツとは、終わりね。ふん。
もっと、いい男にするわ。かしこいやつにね」
あたし、よけいムカつくんだケド。そんなに、えらべるワケ?
「あ、そー、そー、じつは、わたし、独りじゃないんだよ、厳密にいえばねー」
まぢで、いちいちムカつくンだケド? だから、いってやったよ、
「なに、そのゲンミツにいうと、って。
1人なの、そうじゃないの、どっちよ」
さげすむような眼で、エリコがあたしを見た。
「ニュアンスってもンを理解できないのね? まあ、事実上、わたし1人みたいなもんだった、ってことよ。
ぜんぜん、たよりない子でさー、ロリ系の夏服で来ちゃったのよね。っていうか、装備に金かけなさすぎ、ってやつよ。
タクシー代、わり勘にしたんだけどさ、彼女、わたしとちがって、装備品買ってないぶん、列車代があってさ。
ミーシャだけ列車に乗せて、わたしは、奇跡を信じ、お金をさがしてたってわけよ」
「あんた、それで、タクシーに・・・・・・」