Act1. As Of Now † Reality is only interpretation † 3-5
Chpt3 理想の世界かょ?
☆Sect5 蒼白L1焱
歩いた。
お家に帰りたいょ。でも、歩いた。
なんとでも、さけべ、ユリイカ。ともかく、歩け。それしかない。歩く。もう、へとへと。歩く。もー、だめ。ムリっ! 歩く。さぶい、死んぢゃう。歩く。足がうごかない、疲れた。歩く。もう、いいよ、たおれよう。歩く。なにをほざいてもいいから、歩け。歩く。選択肢はない。歩く。たとえ、理不尽であっても、ほかに道はない。歩く。歩くしかない。
あれ?
「望み抱くがゆえ、人は、絶望に堕ちる。
真に生を諦めた者は、あえて死を望まない」
フードつきのマントをはおった人がこの猛吹雪のなかにいた。
あたまにも、肩にも、雪をつもらせて、なかば埋もれ、しずかに歌っている。
廃墟になった古い教会できく、亡霊の讃美歌のような、幽かな玄いしらべだった。
あたしたち、立ち止まった。
ANKAが説明していう、
「この人は、自由意志設定のキャラね。環境的人物よ」
「あ、あのー、日本語で、プリーズ」
「つまりね、彼は、アバターじゃないわ。
だれかが操作しているキャラじゃなくて、川や、海の波や、風と同じ。
ほら、この吹雪と同じで、IEのなかを自動的にうごいているのよ。
プログラムで、うごくキャラだけど、まるで、じぶんの意志があるみたいに見えるでしょ?
だから、アバターとの区別はつきにくいわ」
・・・・んー。わかったことにしておこう。
「で、これ、なにしてるの?」
あたし、ANKAにきいた。
「ふんいきづくり・・・かな?」
「・・・・・・・・・・ じ、じゃ、いこうか?」
でも、状況は容赦なく、さらに、悪化していった。
あたしたちが登りはじめた斜面は、もう、斜面なんかじゃない。アルプス山脈の絶壁を登るみたいだった。
風があたしたちをもぎとって、下へ突きおとそうとする。まぢ怖い。
あたしたち、なんども、休んだ。3分くらい登って、10分くらい休んだ。
登れば登るほど、雪がすごくなっていて、なんにも見えない。息もできない。
酷すぎるよ。殺す気かっつーの?
ぶちギレそーになる。
これで、まぢ、ほんとに、帰れンのかよ?
でも、ANKAは、ふしぎと元気が復活してて、気力に満ちている。あ、あんた、超人だ。あたし、もう、ダメっぽい・・・・・・。
手がこごえる。
ぶあつい手袋をしていても、凍えて、かじかんでる。
力が入らない。
疲労困憊、って、やつだった。
「ANKA―、もぉー、だめー、死んじゃうよ。
おっこっちゃうよーっ!」
「がんばれっ、集中してっ、あんたの命を燃やすのよ」
なに、それ? どーゆーこと? マンガじゃないのよ。
でも、ぜんぶ、これ、バーチャルなのよね。現実じゃない。
理不尽で、弱い者いじめする、糞ったれの現実じゃねーのよね。よぉーし。
えいち、あたしに教えて、どーしたら、命は燃えるの? エイチ、あたしをおもいどおり、生きさせて! ここは、正義でしょ? あたし、なんにも、わるいことしてないわ! どうか、友だちを、たすけて! 彼女の装備、あたしのより、うすいのよっ! このお願いが正しくないってんなら、てめえら、ぜんぶ、おかしい。死んじまえぇぇぇー !
こころで、そうさけびながら、あたしは、固く眼をつぶった。
まっ暗だった。
その闇の底に、とおいところに、かすかに光る星のような、小さな粒を感じた。
小さいけれど、はげしさのある、強い光だった。
だんだん、ちかづいて、大きくなるように見えた。
臍下丹田。
おへその下の、おなかのところのこと。
そこに、青白い炎を感じた。
奥深く、純白にかがやく、まばゆい金剛のよう。
じぶんのからだがなくなったように感じた。えんりょしなくていい。
ANKAの手をひっぱって、がむしゃらに登るじぶんを、あたしは、映画でも観るように、じぶんのなかから、見ていた。
皮膚を突き破り、筋肉をひき裂き、骨を砕きそうなぐらい、ふんばって、登る。
じぶんを超えて、じぶんのあたまのてっぺんから、じぶんじしんが飛び出そうなぐらい。歯をくいしばる。じぶんのあたまを、ふんづけて、上へ登ろうとするかのように。
気がついたら、あたしたち、山頂にいた。
Anka QDQ:5 Eureka QDQ:5
クドクが上がっていた。少し、うれしーけど、どーでもいい。もー、疲れまくり。ぜんぜん、力入らないし、いくら息しても、苦しい。