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8.タンパク質は自分で、キター、魔法は教えてもらえなかった。

朝食はバラバラにとるようだ。

汚れ作業したから本館のダイニングは入れない?

わかりましたそうします。誰が行くかあんな所。

納屋じゃなかった別館に行くとママが食事の用意をしてくれていた。

部屋に白い粉が散らばっていたと質問されても

知らぬ存ぜぬで通しきった。

結果「どこで付けてきたのやら。」で済んでしまった。

この人、雑というかチョロいかもしれない。


朝食はエンドウ豆と人参のシンプルなスープ、

シンプル過ぎて昨日の塩味効きすぎが欲しくなる、

それと昨日の残りのカチカチパンをいただきました。

食レポ終了。


この世界でグルメレポーターは成立しないだろう。

朝食を食べ終えた後エア君の記憶によると

薪拾いと釣りの為森へ行くらしい。

魚を渡したときのママの喜んだ顔がエア君の記憶として残っている。

朝あった異母姉妹は別行動、彼女たちは本館で何やら作業するらしい。

ズタ袋と釣りの道具一式を持ちママに送られ家を出て歩き出す。

あの姉妹優しかったよな、エア君の記憶も好意的だし。


でも小動物に対する話しかけ方されているような気がするが。

『正解です。』突然頭の中に話しかけられて

「えっ」と叫んでしまった。

『声を出してはいけません。他人から不審がられます。』

”お前が急に話しかけてくるのが悪い、大体なにが正解なんだ?”

『小動物を飼う感覚で可愛いと思われているのが正解です。

 モテてる訳じゃないのよ、勘違いしないでよ。』

”最後の言葉使い変だろ?解ってるよ、

歳の離れた弟は可愛いおもちゃなんだろ。”

『そんなアンタに良いお知らせ。

 これから村の子供たちと会いますが何人かは

 エア君に好意を持っています。』

”え、凄いとうとう俺にもモテ期到来か”

『アンタに、じゃなくてエア君にです。

本性を出して幻滅されないようにして下さい。』

”なんで本性出すと幻滅されるんだよ”

男爵邸、塀はない、割と雑な柵に囲まれた牧場みたいな家だ。

その前にあるのがバルツ村だ。

30軒位で218人が住んでいるとエア君の記憶が知らせてくれる。

その門の前に子供がいっぱい!36人、俺入れて37人か集まった。

男の子は3人しかいないように見える、

5歳6歳にしか見えない子も10歳超えてそうな子もいる。

でもどの子も薄汚れてる感じだ。

どの子がエア君に好意を持っているんだろう?

まあこのうち何人かは男の娘なんだろうけど。

「じゃあ行こうか。」セバスが立ち上がる。

 気が付いていたけどなんでセバスがいるんだろう。

「師匠、今日は私と話してね。」

「師匠、傭兵時代の話してくれるって言ったじゃん。」

「師匠~」

あれまセバスさんモテモテじゃん。

エア君も師匠って呼んでたもんな。

村の周りの少し高めの木の柵を超えると羊の居る牧草地、

その向こうが目指す森らしい。

「小さい子は危ないから兄弟がしっかり見ているように。」

セバスが声をかける。

森を通り抜けながら皆で枯れ枝を探し、自分のズタ袋に詰めていく。

見つけやすい所に枯れ枝なんてない。

枯れてない枝を無理やり折る子やら、

奥の方に行こうとする子やらいる。

「森の奥は危ないぞ、戻ってきなさい」よく目が届く物だ。

そうこうしている間に「師匠、あったよ」「師匠、ここも」

子供たちが足を止めて何やら集めている。

俺も集めたよ、

陽が当たる暖かそうな所の木の葉や木の皮をどかすと虫がいる。

それを釣り餌として各々持ってきた容器に詰めているんだ。

令和日本でも釣りをやった事があるから見ながら真似できたが、

ダメな人はだめだろうなこれ。

ズタ袋に薪を詰め込んでいると、森から出るように声がかかった。

そばに治水も何もされていない小川が流れている。

促されて皆手を洗い出した。

5,6歳の小さい子はあまり薪が集まらなかったようだが

年かさの子がいくらか分けてやっている。

俺も周りにいた小さい子に少しだが薪を分けてやった。

あれ、好意を持ってる子がいるってこの子達か?騙された。


一休みしたら釣りグループと帰宅グループに分かれた。

小さい子は年かさの子が先導して早く帰すらしい。

そこで気が付いたけど昼食べないのね、この世界。

持参したフロロの実を食べてる子はいるけど。

あの毒々しい青い実の皮ごと噛り付いている、まあ慣れの問題なんだろう。

とりあえず、釣りをする。竿でなく木の枝だ。糸は極太、針は超絶雑。

これでも釣れるらしいのが信じられない。

あっちこっちで「師匠!」と声が聞こえる、

場所や仕掛けの事を質問しているらしい。

年かさの子は自己判断で場所を選び、糸を垂らし始めた。

俺は水深があって淀んでそうな所を探し良さそうな所を見つけた。

他の子から少し離れているのも好都合だ。

エア君の記憶の魚に合いそうな仕掛けを持って来たんだ!

竿とタモも欲しいが贅沢は言うまい。

細く透明な糸、繊細な針、虫はこの世界のだけど特に変わりはない。

あっと言う間に釣れた、その後も釣れた。ここは釣り堀か?

と言うくらい釣れた。

「寒バヤに似ている魚だな。

しかし俺釣り名人になったのかな。

 こんなに釣れるなら大きな桶を持ってくるんだった。」

『魚がすれてないんでしょうね。

 普段そんなに釣れないみたいですよ。』

小さな桶はあっという間に満杯になった。

これ以上釣っても持って帰れない、どうしようと思っていると。

師匠と何人かの子がやって来た。

先ほどから連続して釣りあげるのを見ていたらしい。

「桶いっぱい釣れたので休んでいても良いですか?」

「こんな事もあるもんだな。何か工夫でもしたのか?」

「特には。場所が良かったんじゃないですか。」

 とぼけておくのが正解だろう。

「釣りに関してはエアに師匠と呼んでもらえなくなったな。

 ワシでもこんなに釣った事はない。」

セバスさんも関心しきりだ。

休んでいると年かさの子が何人か俺の釣ってた場所にやって来て

釣り糸を垂らし始めた。

”あの糸で同じように釣れるかな。”少しだけ心が痛む。

『どうでしょうか、でも道具の差って大きいんですね。』

”腕の差もある、俺の中身は22歳、釣り上級・・・経験者だぞ”

『自分の実力を理解してるのがアンタのエライ所ですね。』

”うるせえ。小物で悪かったな。”

確かに、こんな会話声に出してしたら頭が変だと思われる。


帰り際には小さい子の桶に何匹か入れてあげた。

ルンルン気分、死語だな、で帰宅したら

村や屋敷の中ではエア君より少し年上、中学生位に

見える子供たちが大人に混じって働いていた。

村の家の外に共同トイレらしき物があるのだが、

回収しているのはそんな子供達だった。

天秤棒ではなく荷車にそれ用の桶を載せて

ギーギーと音をさせて引っ張っている。

男爵館前でそんな荷車の二人にお辞儀されて、困った。


「穴の上に板を2枚渡してあるだけじゃないか、

 こんな所でできるか!落ちたらどうする!」

昨日初トイレでわめきちらし、

その後干し草で事後の処理をすると気が付いて、

絶望と呪詛の言葉をありったけぶちまけたのは俺です。

この季節でこの臭い、夏なら猛烈な臭気だろう。

会釈を返してすれ違ったけど彼ら大変だな。


『反省できてエライ。褒めてあげましょう。』

”お前、AIのクセに偉そうに。

いつか落としてやる。ワザとのふりしてあの中へ”

『私がいないと言葉がわからないのですよ?

泣きながら拾い上げて身に着ける羽目になりますよ。』

くそ、ダメか。ク〇だめだけに、最低のギャグしか思いつかん。

あの二人からしたら明るいうちから遊んでる

貴族のボンボンに見えるかもしれない。


とりあえず、別館へ荷物を置きに行くとママが何やら縫っていた。

魚の入った桶を見せると大喜びしてくれた。

その後本館の方へ半分くらい持っていって

エア君の自慢してきたみたい。


ところでママの魚の料理方法は?

頭とお腹部分を大胆に切り落とし鍋の中に入れ、

同じ鍋に刻んだ人参と蕪、ニンニク他香草少々を適量入れる。

後は水を加えて煮る。塩を加えて味を調整する。

ハイ終了、食レポ?する気にならない。


煮崩れるまで煮こむから新鮮な魚の味はない。

そのスープと朝焼いたらしいパンが夕食だよ。

タンパク質は自分でとったけど他は昨日と大差ない。

こんな食事でこの世界の人は大丈夫なんだろうか?

夜にセバスが魚の頭と内臓貰いに来たよ。

煮込んで犬にやるんだってさ。

この世界、本当に食料不足のようだ。

そして出てきたフロロの実。

どの位食べたら影響がでるんだろうか?

今、エア君の見た目で体に悪いと言っても誰も信じないよな。

信じたとしてもビタミンとか栄養を他でとれるのだろうか?

絶対無理だ。時期を待とう。少し残したら心配された。

いやフロロはちょっと、今日はスープの実が多かったし。


夕食後、ママが書き取りと計算を教えてくれた。

母親から習う物なのか、この世界。

紙はあるみたいだが、お高いらしい。

そういや別館に本はあまり無かった。

石板とロウ石はあるみたいだ、

男爵館の屋根はスレート葺だもん当然か。

村の家は大半がワラ葺だが、ワラ。

スレートにロウ石で物の名前を書いたり、短文を書いたり。

うん表音文字だな。

『文字が読めて便利でしょ?やっと私の有難みが理解できましたか。

 計算も教えてあげましょうか?』

”一応理系の大学生なんで最低限の数学はできる。

この世界が10進法なんでそのまま使える。

それより問題が簡単過ぎて困る。

ここはお約束のお勉強できる俺スゲエをやった方が良いのだろうか”

『そうですね。それ位なら良いかもしれません。

 でも微積分とか概念レベルで通じないんじゃないですか?』

”そうか、誰もその問題解けなかったら何言ってるのか分からない。

 正解不正解も判らない意味不明の事言う奴になる”

『それにこの世界の建築とか見ると幾何学はちゃんとあると思います。

 単純な計算能力ならアンタより上の人は多いと思いますよ。』

”自分が鈍才なのは理解してるよ。いちいち現実を思い知らせるな”

「何を考えてるの?問題難しすぎた?」

念話しているとママに不審がられた。

アブねえ、今の口に出してたら頭が変になったと思われて

回復魔法をかけられたかもしれない。

「難しくないよ、答えは70個」

問題はフロロが12個入った籠が6つあります。

お腹が減ったので2個食べてしまいました。

残りは何個でしょう?というもの。


エア君8歳だよな?算数は日本とレベル変わらない位か?

でも中身俺22歳だしな。

「正解、エアは本当に頭が良いね。」

よしよしされたのは役得という事にしておこう。

1時間もせずに勉強は終わった。

ここだけ見れば日本の小学生羨ましがるんじゃないかな?

算数と国語だけ、他の科目なし。

国語の書き取りで常識や物の名前を教えるという事か。

とりあえずエア君の受けてる教育はこれだけのようだ。


ママがロウソクの火を消そうとしたので、

昨日から思ってた事を言ってみた。

「ねえ、魔法を教えて。」

ママは微笑みながら返事してくれた。

「前にも言ったでしょ?魔法は10歳にならないと教えられないの。

 あんまり小さいうちに使おうとすると

 体に悪いからそう決められているのよ。」

ええ!そうなんだ。

折角異世界に来たから楽しみにしてたのにお預けか!





























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