7.児童労働キター(ユ〇セフ仕事しろ)
藁布団と毛布のベットに戻る、ヤル気、出るわけない。
戻してくれ!令和日本に。
俺はこの地方都市を出てアーバンライフをするはずだ。
国立大学が一つだけあるような町じゃできなかった
ナイトライフというやつをするんだよ。
『何ですか。就職面接で
”御社の先進技術と真摯な経営姿勢に惹かれました。”とか言ってたクセに。
仕事の事よりナイトライフが先ですか。』
「うるさい、日本人には本音と建て前って物があるんだよ。
お前こそ昨日亜空間で何も教えてくれなかっただろ。
サボってんじゃねぇ。」
『いきなりフリ〇ンで倉庫の中歩き回られたら
唖然として声もでなくなりますよ。』
「仕方ないだろう。令和日本で南京虫のついた服なんか見た事ないわ。
殺虫剤ぶちまけたけどこの服着るの本当に嫌なんだからな。」
『体をくれたエア君が泣きますよ。”僕じゃママを守れない、
大人の人が変わってママを守ってくれるならこの体を使って!
って泣いてたんですよ。』
「俺はその話に加わってない!
それに中身は22歳だが体は8歳、
これじゃ何もできないと思うんだが。」
『お仕事を始めてもらいます。』
「ちょっと何言ってるのか分からない。8歳の子供に仕事させるのか?」
『来月9歳ですけどね。水汲み、汚物回収、お掃除、それが終わったら
森に薪ひろい、魚釣りに行きます。魚釣りは娯楽ではありません。
大事な食料です。』
「なんか沢山の仕事が聞こえたんだけど、
年中休みなくそんな事してるのか?」
『まさか。森で採取するものは季節によってキノコ、ベリー、
魚の種類も変わりますよ。
日本人のクセに季節感もないんですか。』
「そういう意味で聞いてない。それで休みとかは?」
『水は毎日使うんだから当然毎日です。』
ブラック企業真っ青じゃん。退職代行サービスはないのか。
「この世界皆そんな生活してるのか?」
『皆ではないですね。言っときますが平民の子供はもっとキツイですよ。
この家では第一夫人の家族は今伝えた労働はありません。
皆の監督とか刺繍とか編み物が仕事です。』
「エミュール兄さんも編み物してるの?」
『貴族の男の子ですからそんな仕事はしません。
勉強と魔術、剣術の訓練をしています。』
「俺も貴族の男の子じゃないのか?」
『第三夫人の子供で女の子の恰好してるでしょ?
そういう風に扱われます。』
女性の権利団体の人たち、子供の人権を守る人たち。
何卒この世界に転生してきて下さいお願いします。
扉の隙間から竈の火の気配がする。
ママが起き出して断じて食堂ではない台所で火をたいたようだ。
エア君の記憶によると出て行かないと美人のママが困る。
俺は美人に弱いんだ。
『全方位に弱いじゃないですか。』
こいつのいう事はとりあえず無視だ。
扉をあけるとママにホッとしたような、複雑な顔をされた。
生死の境を彷徨ってすぐに働かないといけないわが子を見るのは
辛いのだろう。
それからは目の回る忙しさだった。
洗面、あっ歯ブラシはあるのね。タオルないのねゴワゴワの布。
その後水汲み?朝飯前に?井戸へ行け?はい行きますよ。
桶持って本館の横にある井戸に。
この型式の井戸って博物館系以外で初めて見たかもしれない。
木の桶とロープが滑車に取り付けられている。
まだ日は昇っていないが空は明るくて水面が見える。
水面まで結構ある、こりゃ落ちたら死ぬな。
子供にこの水汲ませるのか。無茶な世界だ。
魔法があるなら魔法で水出せよ。融通利かねぇな。
それでやり始めたんだが令和日本人よよく聞け、半端ない労働だよこれ。
エア君の記憶を元に井戸の滑車についた20リットル位入りそうな木の桶を
井戸の中に入れるのだが、マンガのように投げ落とすのではなく、
そっとやらないと桶が壊れるようだ。
これが重い。桶だけにOKにならない、カラオケのクセに重い。
そして水面から上げようとした。
「あ、上がらない!」今の体の体重はどの位なんだろう?
全体重でやっと持ち上げ、全力で腰に巻き付けたロープを引っ張る。
エア君の記憶がなければこの動作は決してできなかったどろう。
さあ労働の成果を・・・。
「水、半分しか入ってなくて草!」
ロープの引き方が悪く時間がかかる事、そもそも体重が足らない。
桶は揺れて水をこぼしながら上がってきたらしい。
そもそもエア君、満杯だと引き上げられない。
「マジか。これ毎日やるのか。」
可愛らしい手に妙なタコがあるのはこのせいか。
じっと手を見る。
しかし、工学部の俺が改善案を出してやる。
よくある異世界転生ガチャポンプとかじゃないぞ。
桶の反対側にカウンターウエィトつけるだけで改善されるじゃんこれ。
石とか縛り付けるだけで良いんだからさ。すぐできるでしょ。
誰かに言ったら”凄い天才””フム才能のある子だ特別に”とか
異世界テンプレ展開にならないかな?
というかなってくれよ。たった1回で限界だよ。
今汲んだ水、持ってきた桶の半分にしかならないよ。これ何回やるの?
本館、別館、トイレとかにある水がめ全部満杯になるまで?
はい、死んだ、俺絶対に死んだ。
これまで”水道ないと不便だな”と思いながら水がめの水使ってたけど、
あの水エア君が入れてたんだ。
もったいない、ジャブジャブ使ってたよ。
あの分も今日汲むことになるわけだ。
溜息をついていると後ろから声をかけられた。
第二夫人の娘のリナとレオニーに声をかけられた。
気まずそうに『味方になってあげられずごめんなさい。』と言われた。
そんな風に謝られたら何も言えないよ。
逆の立場でも何もできないんだろうから。
彼女たちも水汲みにきたようだ。
良かった一人の仕事でなく何人かで分担するんだ。
その後少女二人と井戸端で盛り上がり王道のハーレム展開へ。行くはずもなく
8歳の男の子と12歳14歳の少女だ。お互い異性と見ないのは当然か。
黙々と水汲み。本館2階へ水を運ぶのは彼女たちの仕事らしい。
階段を水桶持って何往復もするのか。雨の日の部活だな。
その間この桶に水を入れてろ?オーケーとしか言えないんのが辛い。
すっかり日が昇った頃水汲みが終わった。1時間以上はやっていた。
まだまだ水汲みは必要らしいが、
本館以外は通いの使用人が水汲みするようだ。
それで、ここからが凄いよ。お食事中の人注意だよ。
汚物集めだよオマルだよ。
トイレないんだよ。2階にお住いの方々、オマルをお使いになるのよ。
オマルの中身を近世まで窓から捨ててた国もあるそうだけど、
ここはそうじゃない。
オマルの中身を壺に集めて回るのよ。
リナとレオニー、俺三人の共同作業だよ、
色気なんて吹っ飛ぶよ。中身をトイレ穴に放り込んだよ。
疲れた・・・。まだ掃除がある?8歳の子供に鬼ですか?そうですか。
基本貴族はこういう労働をするのは恥ずかしいとされているらしい。
でも下級士族の女の子は躾としてこういう事をさせられる。
ある程度の年齢になったら上級貴族の所にメイドとして勤めるためだ。
メイドさんって貴族のプライベートにかかわるから
誰でも良いという訳ではなく、信用ある貴族の子供が
求められるらしい。
エロい目的ではないのだよ。
現に第二夫人の長女リーナさんは
春からどっかの屋敷に勤めるため王都に行く。
水汲みや汚物系に出て来ないのは、第一夫人の部屋に付いて衣装の着付け、
雑用をしているせいらしい。
24時間部屋付き、それはそれで大変だそうだ。
屋敷周辺の掃き掃除を続け体に着いた臭気が取れ始めた時、
お腹の鳴る音がした。
俺ではない。
見るとリナが少し赤くなって掃き掃除をしている。
「パンを焼く匂いがするね。」
そう声をかけるとリナは更に赤くなりそっぽを向いた。
レオニーが「エアったら犬みたいね。食いしん坊で。」
罪を俺にかぶせようとするんじゃない。
まあエミュール兄に比べればこれ位可愛いもんか。
俺の朝飯前の労働は終わった・・・。
朝飯前にやる仕事量じゃないよ(泣。