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58.空を自由に、キター

「足の裏から魔力を抜く感じで、ほら、手足はちゃんと木に付けて、

違う、木の方へ魔力を傾ける感じ、ああ、もう何やってる。」

集落の真ん中にある大木を何回昇降したか、もう数えられない。

全然休ませてくれない、昔聞いた千本ノックの話より酷い。

人間の集中力には限界があって、一定時間以上の練習は効果が激減するんだぞ。

エルフに言っても効果ないか。

そんな事を思いだした頃ようやく木登りをやめて良いと言われた。


「半日で登れるようになるなんて。アンタ、絶対大魔法使いになると思う。」

ネッチャが俺の所に水を持って来てくれた。

「手と足がもうパンパンだよ、疲れた。」

俺が不平を言うと同じように水を飲んでいたバッチャに怒られた。

「これ位で疲れててどうする。明日は木から木への飛び移り方、

剣の使い方を教える。」

「剣?木から木へ飛び移るのはわかるけど、何故剣の使い方がいるの?」

「邪魔な枝や魔物は切り払いながら行かねばならない。

先頭を行く者程の技量は必要ないが、最低限は必要だ。」

ちょっと待て、樹上の道って、無茶苦茶危険って事じゃん。

不安そうな顔の俺にネッチャが優しく言ってくれた。

「バッチャは他族にまで知られた戦士なの。教えてもらえてラッキーよ」

不安解消、全然しない。口調が優しくてもダメだから。


汗まみれで、肩で息をしていると、水浴場に行くように言われた。

エルフ達は産まれたままの姿で平然と水浴したり、洗濯してたけど、

この季節に人間の俺たちが真似したら風邪をひいてしまう。

気が付いたエルフが火を焚き大鍋一杯お湯を沸かしてくれていた。

別の桶の中で泉の水と温度調整して体を拭くだけになるけど有難い。


尚、エルフの水浴びシーンはR15の都合上凝視していない。

断じてしてない。見たいけど見てない。見てないってば!


昨日知らないうちに脱がされた服が洗濯して

岩陰に置いてあったので着替えた。

この世界に来て、他人に洗濯してもらったの初めてかもしれない。


服の確認している間に幼児達がやってきた。

エリーさんと数人のエルフに体を拭いてもらって喜んでいる。

口々に「エア、木登り凄い」「エア、やり方教えて」と言ってくる。

よしよし、記憶はそっちで上書きするように。丸出しとかは忘れなさい。

あのやり方の木登りは魔力持ち限定になるので、

この子達は多分無理なんだけど「今度ね。」と言って逃げた。


というか、疲れて、相手するのが辛い。

今日も肉中心、ボリュームたっぷりの食事を出してもらったのに

食べてる最中に寝落ちしそうになる位眠い。

この体、9歳だもんな。酷使し過ぎだと思う。


翌朝、暗いのに起こされた。

何時どうして寝たか覚えてないけど、集会所の中で寝ていた。


エリーさんや幼児達も同じような寝床で寝ている。

同じ人間族でもそちらは起こさないようだ。


で、洗面が終わったらいきなり、訓練が始まった。

朝飯前ですよ、起きてから体が本当に動くまで時間かかるんですよ

知りませんか?そうですか。


「その服をなるべく膨らませるかんじで、そう風を捉えて。」

「枝を強く蹴って飛び出して、足の裏から魔力を出して。」

「遠くへ飛ぶときは高い所から低い所へ、服を広げるの」

バッチャとネッチャが横を同じように飛びながら声をかけてくるけど

ムササビかなんかの親戚ですか、これ滑空してるじゃないですか。

木登りなんてもんじゃないぞ。

落ちそうになる度補助され、しっかり掴めと枝を指示される。

サーカスの空中ブランコ以上だ。


数時間後、空腹で目が回り出した俺はようやく解放された。

調理係りのユッチャに肉を挟んだ木の実のパンを貰う。

サンドイッチもこの世界に来てからエルフ集落でしか見ない。

『テンプレ、スパルタ教育すぎないか?ぶっ倒れそうだ。』

『才能があるので、詰め込もうという方針のようです。

それより物凄い事を発見してしまいました。』

『なんだよ、大げさな。どうせたいした事じゃないんだろ?』

『アンタ、空を飛べます!』

え?どういう理屈だよ。翼なんて授けられてないぞ。

『最も大きな力を出せる魔力持ちは自分の体重位の石を飛ばせる、

という話をしたでしょ?エア君の体優秀で

自分の体重以上の重さを魔力で飛ばせるんです。』

『石ではなく、自分の体を飛ばすって事か』

『そうです。しかも魔術書によれば人間がその力を出せるのは一瞬と

書いてあるんですけど、アンタは続けて出せてます。』

『本当か?何度か落ちそうになったぞ。』

『魔力の方向をコントロール出来てません。風や空気の抵抗の兼ね合いもあって

バランスを崩してるんですよ。』

『それが出来たら飛べるって事か?』

『そうです、スッ〇マンみたいに飛べます。』

相変わらず比喩が古いがそういう事らしい。


人間のパンより美味しいパンを食べきり、疲れが取れるというお茶を飲んでいると

バッチャが剣を二振り持ってきて、俺の前に差し出しながら言った。

「出来るはずがないと思ってたけど、出来たから最後の項目へ進む。」

「何をするの?」

「一本を取れ、これから私が蔓や枝で通れない所を切り開きながら進む見本を

見せるから着いてこい。帰り道は私が指示した場所を切り開きながら進め。」

え、いきなり?難易度高すぎん?

バッチャの予備の剣を握ると、バッチャが走り出し、あっという間に樹上に上がる。

「グズグズするな、早く登れ!」頭の上から怒声が降ってくる。

「進む力を上手く利用して切り払うんだ。こんな風に。」

あっという間に集落の外に出ると、

蔦や枝の多い所をワザと選んで進んで行く。

「剣は大きく振らず、小さく、速く、確実に。」

バッチャの進む速度半端ない。必死について行く。

30分位続いたころ、バッチャが止まった。

「ここから返る。私が指示した所を切り払いながら進んでみろ。」

ムチャぶりとしか思えないんだけど、従わないと怒鳴られそうなので

一応やってみる事にする。

「ダメだ、剣の振り方がなってない。違う、こうだ。」

「自分が切れる太さを覚えなきゃ、ダメそっちじゃない!アンタバカ?」

何度も落ちそうになり、その度バッチャに支えられて立て直す。

30分も続いただろうか?ちっとも進まない。

「さすがにこれは無理だったか、とりあえず集落に帰る。着いてきて」

再びバッチャが前を行く。今度は障害の無い所を行き出したので早い

20分位で集落についた。


下に降りるとネッチャが話かけてきた。

「どうだった?」

「大魔法使いは訳が分からん事がわかった。飛ぶ事はエルフ並みなのに

剣は全く使えない。」

いや、俺今日初めて剣を握ったんですけど、出来る訳ないでしょ。

「じゃあ樹上の道は?」

「私たちが助ければ、かろうじてついて来れるだろう。」

「二人で行くより時間かかりそうだけど、族長のいう事は聞かないとだめか。」


どうやら俺を置いて二人で行く計画をたてていたらしい。

いや、普通の人間じゃ行けないってのは本当か。


その時、口笛語が聞こえてきた。


”人間、羊、沢山、森の前、止まった。”


何だろう?エルフ達がぞろぞろと集まって来た。

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