55.新しい服、キター
亜空間倉庫で拳銃の手入れをしながら、マリアさんの方を見る。
全く動かない。俺が干渉すると時間が動き状態が悪くなるらしいので
汚れた顔や服をどうにもしてあげられない。
辛くなってきたので、手入れに集中する事にする。
使った道具は必ず手入れする、野球部で叩きこまれて性分になってるんだろうな。
マニュアル通りやらないと気持ちが悪い。
溶剤臭かったり、手が真っ黒になったり、グラブの手入れを思い出す。
『感傷に浸っている所申し訳ありませんが、
私も磨いてもらって良いですか?汚れが付着して気持ち悪いんです。』
『そんな感覚あるのかよ。後でやるから待ってろ。』
朝晩の洗面の時ついでにテンプレも洗ってたのだが昨日の騒ぎで忘れてた。
洗浄剤出してるから一度これで拭いてみよう。
『あれ、どうして戻らないんですか?』
溶剤で拭いた後、ワックスで磨いてやったテンプレは上機嫌だ。
「皆に見られたんだぞ、顔見るの嫌だよ。
お前も何故履いてないって指摘してくれなかったんだよ。」
『服が変わってる時点で気が付いてたでしょ?
そのまま行動してるから別に良いのかと。』
「いいわけないだろ!」
精神が動揺する事ばかり続いたから忘れてた。
スースーしていたような気はする。
エルフ達は『子供の見たって別に、ねー。』
『久しぶりだったからじっくり見ちゃったけど、気にしないでね、♡』
とか言ってたけど、どこ見たんだよ。気にするに決まってるだろ。
幼児達は
「エア、おもらししたー。」「おっきい子なのに恥ずーい」「キャー、丸出し」と
大騒ぎだったが、俺はおもらししてない!
丸出しはお前らが下から見るからいけないだけで、
ひざ丈まで隠れてるだろ。
・・・村に戻るまでに忘れてくれるとよいな。
エリーさんにまでジト目で見られた。
『溜息ついてても仕方ありません。戻るしかないです』
『分ってるよ、心の準備が有るんだよ。デリカシーないな。』
立ち上がって机の横の姿見を見る。
自分の荷物から引っ張り出した着替えの上にエルフから貰った
緑色の服、幼稚園のスモックそっくりなのを羽織っている。
森にいる魔物、ヒートモスの繭の糸は寒くなると自ら発熱するらしい。
それを聞いた時はユニク〇か?ヒート〇ックかとツッコミそうになったが、
密に織ってフロロの木の樹脂を塗ってあるので風も水も通さず通気は良い
軽いし、肌触りも良いでしょ?と説明が続いて、
あまりの有能素材に言葉を失ってしまった。
「これ、貰っちゃってよかったんだろうか。」
そんな貴重な物、貰えないと断ったんだけど、
昔の子供服が余ってただけだからと押し切られた。
『折角の好意なんですから、受け取って良いんじゃないですか。』
「そうだよな。断るのも失礼だよな。でもお返し、これで良いのかな」
『良いんじゃないですか?重量はこっちの方が重いですし。』
重さや体積で価値を決めるんじゃない。
もらった服、滅茶苦茶軽くてかさ張らないけど価値あるだろ。
仕方ない、気が重いがやろう。
「”萌え萌え、キュン”」
あっという間に、亜空間倉庫からエルフの集落に戻された。
戻った瞬間誰かとぶつかるのは嫌なので、エルフ達にあまり人の
来ない場所を指定してもらったら、汚水池の後ろになった。
たまに掃除したり、詰まった時に来るけど普段は誰も来ないらしい。
「それにしても上手くできてるな。」
『何がですか。』
「ここの水だよ、水汲みで苦労させられたから羨ましくて」
綺麗な水の湧く泉(エルフの水汲み場)から二つに分かれて
水浴び場と洗濯場を通った水はトイレの下を流れて汚水池に
もう一つは家畜小屋に流れた後汚水池に流れ込む。
その後は下の川に流れ込むようだけど、途中はフロロの森だ
しっかり肥料になっているに違いない。
「泉、いいよな。汲み上げなくっていいんだもんな。」
壺に水を汲み、頭に乗せて運んでいくエルフを見ながら思う。
必要な場所に水道を引いてくれたら更に良いんだけど。
そんな事を考えながら俺はチョコバーの箱を抱え上げた。




