54.既視感、キター
族長の前から集会所の方へ向きを変えると
納屋の横でエルフ達が昨日の現場で
飛び散った血や肉を洗い流し掃除しているのが見えた。
『テンプレ、俺、大丈夫かな。
人殺し、しただろ?
大変な事してしまってどうしたら良いかわからない。
でも割と平気な部分もあるんだ。
俺、異常者なんだろうか。』
『昨日から色んな事がありましたからね。
エルフ達が意図的に別の事を考えさせようとしている事もあって
感情の整理が間に合っていないだけだと思います。』
そうなのかな?自分のやった事は、どういう事か
見ておいた方が良いと思う。
「昨日の二人はどうなったの?食事の前に会いたいんだけど。」
横にいたユッチャに言ったつもりだったのに、真後ろから声がした。
「食事の後にしたらどう。気分が良くなるとも思えないよ。」
バッチャが気配もなく後ろにいた。
「それでも、見ておいた方が良いような気がするんだ。」
「・・・そう。止めはしないけど、心を強く持ってね。」
二人のエルフは泉の下の家畜小屋に案内してくれた。
「怪我人を置いておくところじゃないけど、
暴れられると困るから。」
小さい檻の中に男が寝ている。
呼吸が浅く、早い。
『テンプレ、診断頼む』
『意識混濁、呼吸不全、血圧低下、血中酸素濃度低下、化膿細菌増殖中
左上腕部及び右腰部に弾創あり。腎臓損傷。腸管損傷。肋骨骨折。
裂傷、打撲処置済。』
『俺に解るように言ってくれ。』
『腰に当たった弾丸によって腸がちぎれています。
内臓が壊死し始めていて手が付けられません。』
『助ける方法はないのか?』
『既に脳もダメージを受けているので、全部交換になります。
治療の意味がありません。』
『AIぽい回答だな。』
『一つだけ、撃つ前の段階で既に腎臓に重大な損傷がありました
アナタが撃たなくても生命の危機に陥ったと考えます。』
慰めか、自己弁護に使えという事だな。
俺は首を振った。
「大魔法使いでもダメか。オークに殴られて傷だらけだったので
痛み止めを飲ませたのが悪かったみたいだね。
ケガは治ってない、動くなって伝えられなかった私のせい。」
バッチャがおれの肩に手を置きながら言った。
「自分を責めちゃダメよ。大事な事を守っただけ。
面白半分に殺したわけじゃない。アンタは良い人間。」
「ありがとう。簡単に割り切れそうにないけど先の事考えるよ。」
エルフ達の優しさが無かったら、俺、変になっていたかもしれない。
「もう一人は、私が見た時既に死んでいた。どうしても見る?」
なんだろう、見た方がいい気がする。
遺体は家畜小屋の先、俺たちが持って来た布を地面に敷いた上に
安置されていた。
何発当たったんだろう、胴体や頭に原型がない。
「ここでは、エルフの流儀、森に還して葬らせてもらう。」
「森に埋めるの?」
「人間は土に埋めるんだったな。我々は森の奥に安置する。
魔物や野獣が食べ、最後には森に還っていく。
我々もそうして葬られる。生きるものすべてはそうしている。」
「良くわからないけど、間違ってない事だけは解る。」
この二人に家族はいるのかな?こんな稼業をしていても大事に
してる人はいるだろうな。
でも伝えようがない。切なくなるな。
手を合わせているとバッチャがまた肩に手をおいた。
「一緒に来た人間たちが心配しているから早く行った方が良いよ。」
そうだった、幼児達を放置しっぱなしだった。
昨日の酒盛り現場、集会所にエリーさんと幼児達はいた。
俺を見るなり、エリーさんが飛んできた。
「エアっ、何があったの?エルフ達大騒ぎしてるし
マリアとアンタはいないし、言葉はわからないし。」
「説明するから落ち着いて、皆どうしてたの?」
「酔いつぶれて寝ている時、大きな音がしたような気がして
起きたら入口の所のエルフが”出るな、危ない”ばっかり言って
出してくれなかったの、トイレも行かしてくれないから
小さい子はおもらししちゃったわ。」
まあ、これだけいればオネショする子は出るわな。
何人か着替えている。
拳銃で人を撃った事も、亜空間倉庫の事もバレてないようだ。
悪いけど情報を隠蔽させてもらおう。
エルフに口止めしとけばバレないだろう。
人間の世界で暮らす上では知られていない方が良い気がする。
俺は不審者が侵入した事と、マリアさんが治療で遠くに行ったと伝えた。
エリーさん、マリアさんの事を心配していっぱいお祈りしてくれ、俺に
気をしっかり、と言ってくれた。
幼児達も心配してくれているらしく、俺の周りから離れない。
あれ?俺の事指さしてるぞ?
「エア、おねしょした。」
「エア、はいてない、汚したんだ」
「おねしょ、おねっしょ!」
しまった、エルフに服脱がされてたんだ、下着まで。
今幼稚園のスモック風の上っ張りしか着てなかった。
背の高いエリーさんと違い幼児達にはモロ見えてるらしい。
内股になり「パンツ返してー。」と叫びながら。
モイモイに来てからの既視感の正体に気が付いた。
産まれて初めてみたエルフ、服や髪型が違うけど
ネッチャにそっくりだった。




