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53.のじゃエルフ、キター

「疲れはとれた?傷は痛まない?」

薬箱を持ったエルフを連れてバッチャが入ってきた。

「有難う。俺、倒れちゃったんだね。迷惑かけちゃったみたいで・・・」

「野宿までして歩いて来た後あの騒ぎ、休んでないんだから

気にしないで。」

バッチャは俺の傷を観察した後座りなおした。

「疲れているのにあんな大魔術使わせて申し訳ない。

 カッチャを助けてくれてありがとう。

 私では助けられなかったと思う。」


いや、そもそも俺たちが来なければあいつらも来なかった訳で、

申し訳ないのは俺たちの方だ。


「匿ってもらったせいで大変な事になって、ごめんね。」

「それは気にしなくて良いよ。私たちが決めた事だし。」

「あの後、カッチャはどうなったの?」

「状態は良いけど、まだ意識は戻ってない。」

「診させてもらって良いかな?」

診るのはテンプレだけどね。

「助かる。大魔法使いに診てもらえば安心。」

「えーと、僕大魔法使いじゃないよ。」

「まだ称号をもらってないだけでしょ?

あんな凄い魔法を使えるんだから大魔法使いよ。」

誤解はどっかで解いた方がよさそうだけど、気になるから

先にカッチャの様子を見に行こう。

俺が立ち上がると両脇にいたエルフに腕を掴まれた。

?疑問に思っていると、建物の出口で

「動かないでね。」と言われた。

いや、昨日見ました。この建物は木の上にあって

地上10m位の所に出入口があった。

どうするのかと思っていると、二人のエルフは俺を抱えたまま

木の幹を滑るようにおりていく。

後から扉を出たバッチャに至っては一気に飛び降りて来た。

エルフ身体能力高すぎんか?


「動かすと良くないと思ってカッチャはまだ納屋なの。」

納屋の扉を開けると布団の上のカッチャを心配そうに

見ているネッチャがいた。

「ネッチャ、大丈夫?少し休んだら。」

「心配でムリ~、うわ言で『エッチャ、エッチャ』って

ずっと呼んでるの。」


『テンプレ、エルフ語の翻訳大丈夫か?一部意味わからん』

『翻訳エンジンが随時更新されます。そのうち違和感なくなると

思います。』

ギャル語が少し残るが普通の言葉みたいになってきた。

『それより容態はどうなんだ? 異常はないか?』

『順調です。間もなく意識が回復するでしょう。

しばらく安静にしている事をお勧めします。』

そのままエルフ達に伝えると皆物凄く喜んでいた。


「族長が大魔法使いと話したいと言ってるよ、キテチョ」

翻訳ソフト、言葉混じりすぎだぞ。わかりにくい。

呼びにきたエルフに案内されたのは、

昨日最初に族長が座っていた場所だった。

今日はその向かいに椅子が置いてあり、すわるように言われた。


「良く来てくれた。大魔法使い殿、わしはモイモイの族長

 ノンチャじゃ。」

「えっと、大魔法使いじゃありません。ただのエアヴァルトです。」

「称号の事はどうでも良いか。お主と今後の事を話合わねばならんと思い、

来てもらったのじゃ。」

・・・テンプレと念話する。

『おい、テンプレ、今度はのじゃ言葉に聞こえるぞ。何だこれ』

『相手が格調高い言葉で話しています。』

『格調高い言葉がのじゃ系?分かりにくいなんてもんじゃないぞ。』

『だから私に言われても知りません。ソフト開発者に言って下さい』

『タチの悪いサポートセンターみたいな事言うな!』


テンプレと念話で揉めている間にも族長は話を続けている。

「お主らの事情は知っている。

 ワシら単独であればマンテェスに行けん事はないが、

 盟約があっての、町に入る訳にはいかんのじゃ。」

「盟約?」

「80年前、いくさがあったのは知っておろう?

その時、人間軍の将軍フルオロ・マンチェスと盟約したのじゃ。

人はこの森を侵さぬ、代わりにわしらも外には干渉せん。」

「詳しくは知らないです。いくさがあった位しか。」

「大魔法使いとはいえ、年少じゃものな。

では教るので、心して聞くのじゃ。」


80年前、人とエルフは境界にある森の木を切る、切らないで

争いになった。

当時国、という概念のないエルフの中では

国境の一部族が揉めているという認識だった。

小競り合いを続けているとドワーフ達が味方してやると言ってきた。

揉めていた一族は他の部族に断りもなくドワーフの軍が入って来るのを

認めてしまった。

各地に入って来たドワーフ達は人間の大軍、10万がやって来ると

裏切ってエルフに襲い掛かった。

各地に分散していたエルフは良く戦ったが、要所を固めたドワーフが

交通を遮断、塩や鉄の供給を止めた。

集結できないエルフ達は各個撃破と弓矢の矢じりにも困る鉄不足に

悩まされてはいたが森の中に入れば滅法強く、決して負けなかった。

困ったドワーフと人間の連合軍は木を切り倒し森に火を放った。

エルフ達は苦渋の決断をして降伏していった。


「その時の人間の将軍がフルオロ・マンチェスじゃ」

「その後どうなったの。」

「まだ続くから黙って聞くのじゃ」


エルフは国としてまとまっていた訳ではないので部族ごとに降伏した。

この時、降伏する相手によって対応が全く違った。

酷いと全てを取り上げ捕虜全員を奴隷にする者もいた。

しかし人間軍の将軍フルオロ・マンチェスはこれを禁止し、捕虜を保護した。

これを見て森の奥で戦っていたエルフも抵抗をやめ、全面講和が成立した。


エルフの領域の北半分は人間の物となりシャーフラントと言われるようになり

南半分はドワーフの領域になった。

南のドワーフと違い、人間は盟約を結んだ部分の森には手を出さないので

関係は修復しつつある。


「これが人とエルフのいくさの話?」

「細かい部分が抜けておるがの。一番の問題はさらわれたエルフが

戻ってこん事じゃ。」

「大勢戻って来ないの?」

「その話もしてやるから、大人しく聞くのじゃ。」


降伏後、エルフは所持していた膨大なきんを使って仲間を

取り返そうとした。

人もドワーフも公式には全部返したと言っているが

数十人の行方不明者がいる。


「行方不明者の一人がカッチャの娘のエッチャだ。

まだ赤ん坊だったのに赤い服を着た人間にさらわれたのじゃ。」

「昨日来た奴と同じ服なの?」

「ああ、80年前、奴ら人もエルフも関係なくさらっておった

 フルオロ・マンチェスが罰しようとしたが、人族の王が

そうさせなかった、と聞いておる。」

「あいつら、そんな昔から代々やってたのか。ロクなもんじゃない」


族長は俺の感想を聞いて微笑んだ。


いくさはしたが、お前ら人間個々に恨みはない。

人間の領土になっても80年は平和じゃ。

草原の部分には人が入るようになったが、エルフは元々野は使わん。

やって来た人間は善良な者が多いらしく大きな揉め事もない。

もっとも隠れて買い物に行く位の付き合いしかないがな。」


「隠れて?たまにエルフさんが買いに来てるって皆いってるよ。

 値切らず買ってくれる良いお客さんだって。」

「えっ! バッチャ達は上手く人間に変装したと言っとったぞ!」

「綺麗な服着て、何も言わず指さしてお金おいて行くって聞いた。

 魔石もこっちの言い値で売ってくれるって。」

「バッチャめ、さんざん値切って買ったとか、価格交渉で苦労したとか

 いい加減な報告しよって。」

 

 市場の噂話は義理の姉のレオニーから聞いた。

 魔石を沢山売って欲しいのに、一個買うとサーって

 どっかに行っちゃうんだって。

 あれ、でもきん取られちゃったんだよね。

族長に聞いてみた。


「でも、沢山あったきんを取られちゃったんでしょ?

 お金大丈夫なの?」

「エルフは森の恵みで生きていけるのじゃ。

必要な品物は少しの塩と鉄位の物じゃ。

逆に魔石や魔物の素材とかあるから困ってはおらん。

人間がきんにこだわるのが不思議じゃ。

あんな物、柔らかすぎて飾りか鍋くらいにしかならん。

飾りとしても重くて使いにくい。」

「そんなこと言うけどエルフも沢山持ってたんでしょ。」

「昔は森の前の川でいくらでも取れたのじゃ。

光るのが面白くて集める奴がいて、1000年位の間に

結構溜まっていた。 腐らんし重いからそこらの庭飾りに

放置してたが人間が欲しがるのでくれてやったのじゃ。

運び出すのが大変じゃったぞ。」

「その川って、今でもきんが取れるの?」

「200年位前に取れなくなったな。

 人間に場所を教えたらしばらく探し回ってたが

 無かったみたいじゃ。

 そんな事より、朝食の用意ができたようじゃ。

 お前の仲間も待っておる、続きは後で話してやるから

 先に食べに行くと良い。」

気が付くと俺の後ろにユッチャが立っていた。

「年寄りの話って長くってイヤよね。お腹減ったでしょ。

て、痛ーい。なにすんの。」

その言葉と同時に族長の杖で殴られていたが、ユッチャは

平気なようだった。


権威ある話方をしても、族長の扱いは雑なようだった。

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― 新着の感想 ―
価値観の相違だわー 優しい態度と無造作に金を扱ってるの見たら、こいつらチョロいし金が有り余ってるならボコしていただこうってなるのはヒト種の生態だわ ドワーフは燃料として伐採の自由化、森林域の地下資源の…
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