50.威嚇射撃、キター
その納屋の中で二人の男が体を起こしていた。
「おい、起き上がれるか?」
「ああ、何とか。イテテッ」
全身湿布と包帯まみれの二人は周りを見渡した。
「お宝だらけだな。魔物の牙らしいけど、この大きさとこの量は、・・・」
「見た事無いな。一体いくらになるか想像もつかねぇな」
納屋の中には魔物の牙が無造作に積み重なっていて、中には数メートルもある物もあった。
「宝の山発見だな、治療受けてる時見たか?あのガキと女がいたぜ。」
「それだけじゃねぇ。綺麗どころのエルフが大勢いた。全部売っぱらえば・・・。」
「独立して、こんな生活からおさらばできるってもんだな」
「とりあえず、脱出して、仲間を連れて来ようぜ。」
「ああ。籠城の手助けなんかしてる場合じゃない。
ここのお宝総どりと行こうぜ。」
彼らは放り出されていた自分達のブーツの靴底をいじると折り畳みナイフを
取り出した。
「調べ方が甘い、つーに。」
「しかし、他の物、胸甲と兜は物凄い事になってるな。」
「保護具を忘れちゃいけねぇよな。全く助かったぜ。」
回復魔法とエルフ達の薬草が無ければ多分死んでいた彼らは
脱出計画を立て始めた。
納屋の外側にいたエルフ、カッチャは扉を叩く音で目を覚ました。
「何だ?」
「仲間が苦しんでいるんだ。急いで手当をして欲しい。」
「苦しむ、どの位? 今晩寝てる、動ける位治るはず。」
「何言ってるかわかんねぇよ!、お前じゃだめだ。言葉が出来る奴と
手当が出来る奴を連れてこい、仲間が死にそうなんだ。」
「・・・わかった。私たち良いエルフ、助けを呼んで来てやる。」
「・・・という訳でークレーム入れられたの。」
「あの状態から、急に悪くなるなんて」
集会所に来たカッチャにマリアさんが首をかしげる。
「とりあえず見ないと解らないわ。支度するから待って」
「ゲストに頼んでゴメン!皆お酒飲み過ぎよ。」
満腹になった幼児達はその場で寝てしまい、その幼児に毛布を掛けていた
バルツのエリーさんはエルフ達とフロロ酒を飲んで轟沈してしまい。
その後も飲み続けていたエルフ達は互いにつぶし合って轟沈した。
その状況で集会所もとい雑魚寝会場に来られても対応できそうなのはウワバミ、
いやザル、ひょっとすると枠だけのマリアさんしかいない。
見張りの為、飲んで無かったらしいカッチャと、飲んでも平気なマリアさん、
ついでに飲ませてもらえる訳がない俺も納屋まで行くことになった。
納屋までの通路は所々に魔石が光っていて明るい。
納屋の扉の前でマリアさんがカッチャに言った。
「扉開けたら飛び掛かってきたりして。」
「マジウケル。命の恩人に対してそれはナイナイ。」
正確には扉を開けたらではなく、閂を外したらだった。
中から扉付近の音を聞いていたらしい。
いきなり扉が開き不意をつかれたカッチャが鈍器(後で魔物の牙と判明)
で殴られた。
もう一人は目ざとく俺を見つけ、こちらに近づいてきた。
刃物を持っている!
「エア、逃げて!」
マリアさんが俺の前に立ちふさがると、男に向かっていった。
「どけ!ガキは連れて帰るんだ。」
刃物を持った男はマリアさんの首に腕を巻き付けて捕まえた。
もう一人、カッチャを殴り倒した男が俺の方に向かってくる。
俺は焦りながらも ポケットから拳銃を取り出した。
「動かないで、僕は魔法使いだ。動いたら攻撃するよ。」
男の顔に明らかな侮蔑の表情が浮かんだ。
「それが、どうした?俺はお前の勤め先の先輩だ。
世の中の決まり事を教えてやるよ、イロイロとな。」
ヤバイ、どうしよう?それよりマリアさんが心配だ。
この馬鹿ども2人、なんとかしないと。
俺は男の足元目掛け発砲した!
閃光と轟音、男の足元で土煙が上がる。
「バカ野郎!エルフどもが起きるだろうが!」
次の瞬間殴られて一瞬意識が飛んだ。
「そんな中途半端な魔法、怖くねぇぞ、
小っちゃい土煙が上がるだけじゃないか。」
男がもう一発殴ろうとした時、マリアさんが飛びついてきた。
押さえつけていた男の腕から血が出ている。
思いっきり噛みついたらしい。
ゴツン、とマリアさんの体から音がしたが、マリアさんは
俺を抱えて走ろうとしたようだ。
幼児じゃないって。
俺も一緒に走って逃げようとした時、生暖かい液体が体にかかった。
「バカ野郎、商品を刺す奴があるか!ブン殴りゃいいだろ」
「このアマ、俺の腕を喰いやがった。許せねえ。」
びっくりする位の血を流しながらマリアさんが倒れた。
それが物凄くゆっくり見えた。
感情、記憶?色んな物が吹き上がってきた。
エア君の記憶だったかもしれない。
この一年位の俺の記憶かもしれない。
体調を崩す度、寝ずに見守ってくれた姿。
自分は食べずに、俺に食べさせてくれた姿。
自分の服は酷いつぎはぎなのに、俺の服だけ
オシャレに縫ってくれた。
本当に良い人なんだぞ。
ちょっとした甘い物でも本当に喜んで
チョロくてびっくりする人だけど、大好きで、
絶対守ると誓った、好きで、大好きで。。。
俺は男二人に向けて拳銃を乱射していた。
グロックのスライドがフォールドオープンになって
初めてその事に気がついた。
俺の前は血の海だった。
胸に何発も銃弾を受けたらしい男が倒れていて、
もう一人の男が足を引きずり、肩を押さえ悲鳴を上げながら
逃げて行く。
起き出したエルフ達が騒ぎだすのを聞きながら俺は呆然と
立ち尽くしていた。




