4.ご都合(チート)キター!
うん?何だここ?周囲に所狭しと物が置いてある。
どこを見ても真っ白。床は白なんだろう多分、継ぎ目がなく
素材もわからないが。
天井は・・・。あるのか?どこまで白い。物の隙間に通路がある。
その先に壁・・・もない。
天井と同じくどこまでい白空間が広がっているようだ。
上着をめくってお腹の所に入れたタブレットを取り出す。
動作はしているようだ。
これ電源ってどうなんだろう?
例のリストを画面に出し適当にタップすると画面は
地図らしき物に切り替わり画面に矢印が現れた。
ご丁寧にラックの番号まで表示されている。
「北米の大型ホームセンターかよ」
ツッコミを入れていると頭の中に声が聞こえた。
『集めた人がその方式がわかりやすいと選択したみたいです。』
「テンプレ、お前生きてたのか。
何も反応しないから死んだと思っていた。」
『ご主人様が新しいデーターを持ってきたので
システム更新していました。
書き換えと再起動を繰り返すので多少時間がかかります。』
「それって。お前、なにげに物凄く旧式じゃないのか?」
『悪かったですね。そんな私に頼ってるくせに!』
図星だったようだ。
「とにかくシステムがいまいち理解できん。説明してくれ。」
『それが人に物を頼む態度ですか。言い直してください。』
こいつ、そもそも人じゃないだろ。まったくメンドクサイ。
「利用方法が良く理解できません。
無知な私に教えていただけませんでしょうか。」
『相変わらずプライドありませんね。よろしい、説明しよう。
耳の穴かっぽっじって聞くように。』
腹立つ、こいつの中身絶対老害だね、
偉そうにしたくて仕方ない奴だ絶対。
「時間が止まっていると聞いたが俺は動いているし、
タブレットも動いている。どういう事だ。」
『一瞬で言葉使いが戻りましたね。まあ良いでしょう。
この中で時間が動いているのは限られた範囲、
あなたとそれに関する部分のみです。
したがってあなたから離れた瞬間時間が止まります。
そこにあなたの体から離れた南京虫が居ますが、
体から離れた瞬間動けなくなっています。』
嫌だエア君なに飼ってるの?ちらっと見ると確かに居る。
というかエア君の眼良すぎるだろ。
「あの南京虫はどうなる?」
『放置すればずっとそのまま動かず生き続けます。
ですから元の世界に戻せば再び動き出します。』
「放置するのも元の世界に戻すのも嫌だな。
処理はできないの?」
『タブレットでリストに無い物を削除する,
項目をクリックすれば処分されます。
どう処分されるかは知りませんが完全に消滅するそうです。
他に質問は?』
「俺がこの中にいる間、外の世界はどうなっているんだ?
外から見たこの空間はどう見えるんだ?」
『あなたが感じている時間で動いています。
外の世界からこの空間は見る事も感じる事もできません。』
「という事はここに逃げ込めば誰にも会わず生活できるという事だな。
食料は沢山あるし。」
『退屈すると思いますけどね。
この中では火薬は爆発しないし植物も発芽しない、
物も燃えない、更にトイレないし。
体を離れた瞬間の新鮮なウ〇コがずっと残りますよ。
一旦外に出て削除すれば消せるとは思いますが。』
「・・・。このだだっ広い環境で出せる自信はない。
無理か、いやトイレだけ外で・・・。次の質問、配達はしてくれないの?
置き配でかまわないからさ。」
『そのようなサービスは実施しておりません。
そもそも何時でも入れるんだから取りに来て下さい。』
「指定場所受け取りシステムか、仕方ない。
次の質問、外の世界に戻る時はどんな場所に戻るの」
女湯とか女子更衣室とかに出現したら嬉しすぎ・・・、
コホン、困る。
『都合の良い場所には行けません。
入ったのと同じ場所で時間だけが経過しています。』
なるほど次の質問だ。
「物を取り出す時はどうすれば良い?」
『基本あなたが所持している物を持ち帰れます。
鞄か何かにいれて”萌え萌えキュン!”をやれば良いのです。』
「恥ずかしすぎる・・・。」
『そうですか?結構似合ってますよ。
そこに姿見がありますから自分の姿を見てみると良いですよ。』
見ると事務机がありその横に姿見があった。
可愛らしい少女、美少女と言ってもギリ許されるかな?が映っている。
「まあ、これが私・・、ってなるかー。何じゃこりゃー。」
『さっきエア君の幽霊見たでしょう?同じ姿じゃないですか。』
「第三者として見るのと自分の姿と認識して見るのは違う!
それに幽霊は青白くって色がなかったし。」
『その姿なら”萌え萌えキュン”すれば一部マニアが喜びますよ。』
「一部マニアってなんだ!この体は男の子だぞ、
しかも中身は22歳男の異世界人だぞ!キモいわ!」
『不毛の会話になりそうなので、先にシステムを説明します。
外の世界から入って来ると必ずこの位置に来ます。
ですから急いで取り出す必要のある物とか
管理する為のタブレットとかは この場所に置いておいた方が
良いと思います。』
「わかった。他に説明はないか?」
『ここに入っている間外からは見えません。
部屋に居ないことが知られると困りますので注意してください。
この中にいると私も外がどうなっているか分かりません。』
「そういえばこの空間ならネットが使えるとかは無いのか。」
『残念ながら圏外です。』
〇×並みにエリア狭いな。悪態つきながら周りを少し見た。
鏡の横に服と靴の棚がある。
サイズは全く合わない、大男というか肥満男性だったようだ。
裁縫用具やミシンがあるのはサバイバル生活で
使うつもりだったのだろう。
次に銃を探した。やはり護身用に必要だろう。
異世界チートと言えば銃だろう。
割と近い所に銃器類はあった。驚く程大量にある。
いくらアメリカでも爆発物や機関銃は禁止じゃなかったか?
ドラゴンミサイルとかスティンガーとか
何に使うつもりだったんだ?
M2HMG?だから映画でしか見た事ねぇよ。
しかもピックアップトラックに搭載かよ。
これ無敵じゃね?と思っていろいろ触ってみた・・・
銃火器を触った結果、何度も警告された理由がわかった。
俺の体、小っさ!8歳だから当たり前か。
銃をちゃんと持てない。引き金に指がかろうじて届くだけだ。
日本に生まれた平均的日本人だから銃なんて持った事はない。
アクション映画好きだしゲームもやるから扱い方の知識は
ほんの少しあるけど持ち出してちゃんと使えると思えない。
いきなり使ってもすぐに捕まって取り上げられるだろう。
ここに逃げ込めれば良いけど仕組みを知られたら
出口でずっと待ってられて詰みだ。
何せ出入りの時は”萌え萌えキュン”と両手を揃えて上にあげる。
その間は全く無防備という事だ。
チートな設定をもらったが使えなければ意味がないといった事だ。
「よく考えてから使わせてもらおう。
ところでお前最初紐がなかったと思うんだけど、
この紐どうしたの?」
『エア君の釣り道具があったのでご主人様が糸を少しカッパらっ
・・・利用させていただいたようです。』
という事は釣り糸かい、このぶっといの。
糸というより紐だぜこれ。
エア君の記憶を調べてもあまり釣れてない。
というかこの糸で少しでも釣れてるのが逆に凄い!
『警告します。
少なくとも今日はエア君の母マリアさんが定期的に
様子を見に来ると思われます。
あまり長居しないよう気を付けて下さい。』
「わかった。」
持っていきたい物は山のようにある。
持って行っても良いと言われている。
でも持っていったら絶対どこから入手したか詰問されるよな・・・。
辛い、辛すぎる。
異世界転生ってチートでドヤーってできるんじゃないのかよ。
考えに考えて釣り糸と釣り針を持つ、
小さいからポケットに隠せるだろう。
万一見つかっても言い訳できそうな気がする。
それともう一つ、見つけたんだから仕方ない。
目立つかもしれないけど仕方ない。
殺虫剤(DDT)というのを見つけたんだよ。
ばれないように使うから、お願いだ。
ただの白い粉だよって言い訳するから。
南京虫と同じベットは嫌なんだよ。
これだけは許して欲しい。
ビニール袋に小分けして殺虫剤も持った。
タブレットを入れてきたせいでまくれていた上着を整える。
姿見があると便利だ。さて覚悟を決めるぞ。
ううやりたくネェ。ポーズをとった俺は叫んだ
「”萌え萌えキュン”」
腕を掴まれるような感覚とともに真っ白な世界に、
そのあとゆっくりと降ろされていく。
藁屋根の裏側かなり高い所から落とされた。雑だ。
『お帰りだっちゃ。』
ベットの所にモザイクがかかっている。
寝そべっているのだろう。
『説明は聞いたっちゃ?凄いチートだっちゃ。
これで電撃で与えた損害はチャラだっちゃ。』
言いたい、いろんな事を言いたい。
『ウチのアフターケアは完璧だっちゃねー。
それでは失礼するっちゃ。』
「ちょっと待て!いや 待って下さい。
もう少し丁寧なフォローをして下さい。」
俺は無様に、思いっきり泣きついた。
『仕方ないっちゃね。少しだけなら話を聞いてやるっちゃ。』
不平、不満を思いっきりぶちまけてやる!・・・できるかな。