48.居つきたくなる村、キター
陽が傾き、薄暗くなった森を乗馬した5人の男が進んでいる。
「これ本当に道なのか?頭をうたない様にするの大変だぞ。」
「俺を信じろ。誰かかが最近通った形跡がある、道かどうかは知らんが。」
「最初に通った奴の後を大き目の足跡が追ってたんだろ?ヤバくないか?」
「魔物かもしれんが俺たち5人なら大丈夫だろ、多分。」
「多分ってなんだよ。一昨年こっち方面に稼ぎに来てた奴が
行方不明なんだろ?危ないやつだったらどうするんだ。」
「50歳過ぎても売れなくてドサ回りで旅芸人やってた奴だぜ
病気かなんかで野垂れ死んだだけさ。」
「旅芸人兼人さらいだからな、こんな田舎でやる仕事じゃねぇな。」
「若いうちに稼いどかないと明日は我が身ってやつだな。」
彼らは二組の集団に発見されていた。
一組はエルフ達だが、もう一組は、・・。
彼らは知らなかった、北方街道も草原の道もシャーフラントの中では
魔物が少なく安全な場所だった事を。
先頭を行く男が落馬した、と同時に豚か猪のような顔だが二足歩行、
誰かが食べたくない人型の魔物が数頭現れた。
「オークだ!」
「ヤバイ、囲まれるぞ。」
「一旦、引け、ここじゃ長剣や槍が十分使えん。」
派手な恰好から想像するよりはずっと機敏に彼らは対応した。
馬には既にオークたちが取り付いていて身動き取れないとみるや
飛び降りて剣を抜いた。
「掴まれるな、こんなデカいのに掴まれたら終わりだぞ!」
「剣を振り回すな、木立に引っ掛かる!」
その様子を少し離れた樹上でエルフ達が見ていた。
「ありゃ、もう始まっちゃった。」
「暗くなってからだと思ってた。」
闇で目の見えない人間は片手に松明や照明を持つので
隙が増える事をオークは知っているのだ。
「ドースンの?良いエルフとして助ける?」
「ドーしよっかな?人さらいだし、性格悪そうだし。」
「後ろに居た二人は逃げキリそうだよ。」
「オークたち馬に群がって追っかけないね。」
「そりゃ馬の方が食べる所多いもん。そうするっしょ。」
「前の3人の内、一人はオークがばらばらにしてる。
ヤベッ。他の二人はこっちに逃げて来くる」
「ドーするか、族長に聞こうぜ」
「えー、口笛苦手、次のミッチャもあんまり上手くないから
ちゃんと伝わるかな?」
「二人、必死に抵抗してるけど、時間の問題だよ。あっ殴られてる」
「もう血だらけじゃん、ホッといたら死んじゃうよ。」
「仕方ない助けてやろう、私たち良いエルフだもん。」
「オークを無駄に殺しちゃだめよ、食べる分は残しとかないと。」
「又それ?やダナー、あいつら、美味しくないモーン。」
もう動けなくなった男にとどめをさそうとオークが振りかぶったこん棒に
エルフの矢が刺さった。
他のオークの足元にも複数の矢が刺さる。
慌てて樹上を見上げたオークたちは素早く引き上げていった。
ここで勝率の低い戦いをするより、馬肉を食べた方が良いと
思ったのだろう。
「下、安全確認ヨシ?、パーペキ大丈夫?」
「うん、大丈夫だと思うよ。」
「バカ、ちゃんとヨシしてよ。怪しい所は近づいて確認して。」
☆良いエルフさんの豆知識ー。
体が重くて大きいオークは木登りが苦手なので、樹上から弓矢で攻撃しさえすれば
全然怖くないよ。でも地上で近づかれるとチョー危険なので注意してね♡
数分後、木から降りたエルフ達が相談していた。
「助けちゃったけどさ、これどうする。」
「一応男だよ。人族だけど。」
「さっきの小っちゃいのと違って可愛くない、性格悪そう。イラネ」
「泣きわめいてたけど、もうそんな元気もないみたいね」
「ほっとくと死んじゃいそうだよ。」
「向こうの人はオークがバラバラにして持ってちゃったもんね。」
「可哀そうになって助けたけど、チョー困る~。」
「とりあえず連れて帰って、族長にどうするか聞こうよ。」
「こんなの連れて帰っていいのかな。」
「目隠しだけはシトコ―。」
エルフ応急手当をしたあと、どこからともなく取り出した大きな布で
担架を作ると二人を運び始めた。
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「それで連れて来た?相談もせずに?調子こいてると、しばくよ。」
「手当だけして森の外に出せば良い物を。」
集会所らしき建屋の中でエルフの族長とバッチャが
帰ってきたエルフ達にお小言を言っている。
バルツのエリーさんとマリアさんは族長に言われて二人の男を調べている。
「どう?」
「ジェニの兵隊に間違いありません。エアの契約書も持っていました。」
「どれどれ、無給で30年間の雇用契約、詳細は都度決定、酷い契約だな。
こんな可愛い子供になんて事を」
エリーさんが契約書を見て首を振り、俺の頭を撫でてくれた。
この人、山の上で俺をひん剥いて洗った人で、俺は未だに恥ずかしいけど
何かと気にかけてくれる優しい人だ。
「この書類破っても、又何枚も書くんでしょうね。」
「マンチェスに行ってバルツ男爵の書類を無効にしてもらう他ないな。」
相談が終わったマリアさんは男の一人の方に手をかざし詠唱を始めた。
「何するの?」
「回復魔法をかけるの。」
「あんたたちを捕まえて酷い目に合わせようとしている奴だよ?」
「それでも、命には変わりないでしょ?」
マリアさんはエルフ達と手分けをして回復魔法をかけていく。
怪我人の顔色が良くなり、呼吸が安定するとエルフ達がマリアさんに声をかけた。
「アンタ、人族にしては結構やるじゃん。
ただの子持ちのリア充だと思ってた。からかってゴメンね。」
「子供が居るのが羨ましかったの、ゴメンして。」
マリアさんが首を振って手を握り合っている。
本当に良いエルフ達だ。自分達で言わない方が良いと思うけど。
「その二人は納屋に入れて扉に閂かけておいて。
ハプニングで押しちゃったけど、宴会開始!」
テーブルにどんどん料理が並んでいく、待ちわびていたらしい幼児達が
つまみ食いをするが、エルフ達は注意する事無くそれ以上につまみ食い
全く自由だ。
巨大なステーキ、肉と野菜のスープ、ローストされた鳥、サラダ、卵料理
料理のレベルは男爵家の比ではない。
香辛料や香草で香りつけしてあるし、エルフ達の真似をした
幼児達が口に入れて泣き出してしまったがワサビや辛子まである。
パンに乗せろと蜂蜜まで出してくれた。
「凄いご馳走だね、毎日こんなの食べてるの?」
「今日は特別、メガボアの解体も終わったしね。」
「普段は2、3品とフロロだけよ。」
「お酒も少ししか飲めないの、悲しいよー。」
「そうそう、ハチミツ酒は族長が独占して、私たちはフロロ酒ばっか」
「庶民はフロロ酒でいいの、ホレ、君も飲みな」
うちの子に何するの―、とマリアさんが飛んできてエルフ達と揉めている。
幼児達が口いっぱいご馳走を詰め込んでむせると、エルフ達がフロロジュースを
飲ませている。
いいとこだな、俺、ここに定住したい。




