3.例の木の実キター。(でも選択肢は食べる他ない。)
エア君の記憶情報をよると。
この人はセバス♂60歳を超えているが元気、職業は羊飼い・・・。
執事かと思ったら羊飼いー!。いかん寒くなってきた。
「師匠、僕はどうなったのですか。
馬から振り落とされたのは覚えているのですが。」
うん?師匠って呼んでるんだ。何故?
「そこまで覚えているのか。なら大丈夫そうだな。
頭を打って気絶したんだよ。
なかなか気がつかないから心配したんだぞ。」
セバスは一緒に入ってきたママの方を振り返り大声で話しだす。
「油断はできないが、大丈夫そうです。
意識もはっきりしていますし体も動いているようです。」
「油断できないとは?」ママが聞き返す。
「はい、昨日言ったように戦闘で兜の上から殴られた者の中には
傷もないのに死んでしまったり、その直後は平気な様子だったのに
翌日急に倒れたという話も聞きます。
その逆に意識を失って数日経ってから無事目覚めた
という話も聞いた事があります。」
死という言葉が出た位から気が付いて声が小さくなって俺の方を見た。
がさつな感じだが、良い人なのだろう。
「どうしよう。回復魔法は使えるけど頭の中は分からない。」
ママが泣きそうな顔でベットの横に来た。
「大丈夫だよ。ママの回復魔法は最高だもの。」
抱きしめられた思ったらママの手が俺のたん瘤に触る。
回復魔法!。こんな感じなんだ、なんか湿布を受けているようだ、
腫れがひくのを感じる。
「エア、愛してるわ。」
前世で言われた事ないセリフを言われた。
日本の両親はこんな事言わないよな。
言われたらお互い気恥ずかしくて困るだろうし。
その後ママ、セバスにいろいろ話かけられて、適当に答え続けた。
エア君の記憶で無難に切り抜けていたが、
身に着けていた勾玉、テンプレの事を聞かれた時は焦った。
とっさに『ほら、おばあ様の遺品を貰った時にあったじゃない。』
と言うととりあえず納得してくれた。
そうなんだ、遺品は第一夫人の所で良い物を取り、
第二夫人の所で使えそうな物をとった後
第三夫人たるママの所にきたので何このゴミ?という状態だった。
その中に石ころが結構あったのでそれだと思ったのだろう。
テンプレは形の面白い単なる石、光沢があるわけでもなく
価値がありそうには見えない。
助かった記念にお守りにしようと思う、と伝えると賛成された。
質問タイムが終わるとセバスは仕事があると帰っていった。
俺は目覚めてからずっと思っていて
口に出していなかった事を言った。
「お腹空いた。喉乾いた。」
前世含めどの位食事していないだろうか?
体だけの問題だから前世は関係ないか?
兎に角腹ペコだ、何とかしてくれ。
「良かった、食欲出てきたのね!それじゃ服を着なさい
、食堂で食べましょう。」
頭をぶつけたらしばらく動かさない方が良いという知識はなしですか。
今回は別に何の問題もありませんけどね。
しかし貴族に転生する言われてきたんだけど変じゃね?
使用人とかいない訳?セバスさんは使用人じゃないみたいだし。
エア君の記憶では釣りや野遊びの師匠らしい。
師匠と言えば剣技や魔法じゃないのか?
で、服は自分で着るんだ、
メイドさんが出てきて優しく着せてくれるとかないんだ。
しかも箪笥の中の衣装、数着しかないよ
取り出した服、継ぎや修理の跡が歴然だよ。
エア君の記憶がこれが良いと判断しているから良いんだけど、
スカートなんだよ俺の衣装。
前世の感覚では女装趣味まっしぐらだよ。
それに合わせコマコマした物があり、それ着て終了だよ。
確認なんてできない、鏡なんて無いしね。
暗いから窓開けたら激寒だった。
カーテンだけはあったけど窓ガラスなしだよ。
そんな状態でやっと着替えてドアから出て、知っていたけど驚いた。
食堂?これをダイニングって悪徳不動産でも
表記しないと思う。
竈があってその横にテーブルが置いてあるだけ。
台所だな、物ないし。
幸い竈には火が入っており温かい。
入口ドアの所に窓ガラスが入っていて明かる・・・くない
透明感のない小さなガラスのため部屋は全体に薄暗い、
上を見るとここにも天井がない。
貴族、なんだよな?男爵とか言ってたよな?
生活水準ヤバくないか?
「誰か知らないけど竈に火を入れて見ていてくれたみたい。
お湯が沸いているからお茶を入れてあげるわ。」
わーい、貴族のお茶会・・・この匂いはミントティーだ。
椅子はクッションなしだが背もたれはある。
テーブルの上を見ると木の皿の上に小さめのリンゴ位の物がおいてある。
食べ物に違いないが色合いが青。綺麗な青。
どこかの国のケーキみたいな青。食えるのか?これ。
ママが陶器のカップとお皿を置いてくれた。
ママが席に着いて二人でお祈りするまでちゃんとしてたよ。
エア君の記憶の通りにしただけだが、
この子8歳にして随分行儀の良い子供だったんだな。
ママが青い奴の皮を剥いてくれる間にお茶を飲んだんだけど、
予想通り乾燥したミント100%煮出汁。
砂糖?母屋にはあるらしいが高価すぎて薬扱いらしい。
これは食生活大変そうだ。
エア君の記憶によるとこの普段別館にある食べ物は警告されたアレ、
フロロの実位しかない・・・危険であっても食べるしかない。
どっかの慈善団体のCMを思い出す。
木の皿の上にカットされたフロロを置いてもらえた。
幸い中見は白っぽい。食べてみると甘酸っぱくて美味しい果物だ。
リンゴより硬くて水分は少なめ、香りは桃よりのリンゴかな?
種を見ると桃のような大きな種が中心にある。
リンゴみたいな芯がないので食べやすい。
・・・でもこれ沢山食べると生殖細胞に影響あるんだよね。
程々にしておこう。
フロロの実を置くとママはまだ食欲が無いと思ったみたいだ。
考え事をしたいので部屋で休みたいと言うと少し寂しそうに許してくれた。
そういう事がよくあったらしい。
エア君の記憶を見てみるといじめられっ子だったんだね・・・。
感慨にひたりながら部屋にドアを閉めた瞬間声がした。
『お待たせしたっちゃ。』
部屋の中にモザイクのかかった人物?が居る。
「おい、話が違うぞ。いい加減にしろ!」
『声を出すと周囲に変だと思われるっちゃ。
考えるだけにするっちゃ。
慣れないなら小声で喋るっちゃ』
「貴族に転生させてやると言うからOKしたら何だよこれ、
自分達で家事やって納屋みたいな所で暮らしてるじゃないか!
しかもあれだ、あれが居ないじゃないか。」
『執事は居ないけど羊飼いは居るじゃないかい、だっちゃ』
「むりやり俺の寒いギャグに合わせなくて良いよ。
違う、メイドさんだよ。優しいメイドさんとか
獣人のメイドさんとか、
巨にゅ、ケホンの愛嬌のあるメイドさんとか」
『本当に品性下劣だっちゃ。
メイドさんは本館には一人居るっちゃ。
でもあんまり会わない方が良いと思うっちゃ。』
「どういう事?」
『第一夫人に付いてきた人っちゃ。
礼儀とか何とかうるさくて、その体のエア君は大嫌いだったっちゃ』
「何だそれ。居ない方が良いじゃないか。
それとチートをくれるって言ったよね?
言葉とか家庭環境が判るのがチート?
それとも現代日本の科学知識がチートとでも言うのか?
自慢じゃないが俺はここで現代知識を使いこなす能力ないぞ。
こんなのチートと認めないぞ!」
『乱暴だっちゃね。折角いろいろ用意してあげたのに。』
「元はといえば、誰かさんが電撃するからだ。
元の体に帰してくれ!帰りたいよー。」
『今度は泣き出すとは情緒不安定だっちゃね。
元の体は袋に入れられて警察だっちゃ。
お父さんだけが見てお母さんと妹さんには見せずお骨にする事になったっちゃ。
今更戻れないっちゃ。』
・・・さらっと、凄い事言ったね。
お父さんお母さん、ついでに妹よ、哀れな兄を許しておくれ。
『チートの話は本当だっちゃ。
お前の為にいろいろ苦労して持ってきて亜空間に置いてあるっちゃ。』
「亜空間って?」
『次元のハザマ、みたいな所があって物が保管できるっちゃ。
その中では時間が経過しないっちゃ』
「何でも保管できるんですか?」
『基本的には何でも、だっちゃ。
ただし出入りできるのは登録者だけだっちゃ。
銀行の貸金庫より安心だっちゃ』
「で、中身は何なんですか?」
『じゃーん、これだっちゃ。』
モザイクの後ろからタブレットが出てくる。
「え、それだけ?」
『そんな訳ないっちゃ。
お前の顔面でロックが外れるから中を見てみるっちゃ。』
「何かのリストですね、食料、ガソリン、種イモ、薬品類。
ほうほう、あれ?M72LOW、M3ベネリ、って
これどっから持って来たんですか?」
『アメリカの田舎っちゃ。
FXやら仮想通貨で大儲けした奴がもうすぐ文明が滅ぶと信じてて
大量に買ってた物だっちゃ。戦争でもする気か?位あるっちゃ。
買った当人は食いすぎでデブりまくり、
医者に行かなかったから急死したっちゃ。』
「だからって持ってきて良いんですか?」
『大丈夫だっちゃ、独り占めしようと隠してたから。
無くなっても誰も気が付かないっちゃ。OK牧場だっちゃ。』
「ギャグが有名キャ〇の年代と会ってますね。
で、これ取り出すのどうすれば良いんですか?」
『中に入ってそのタブレットで探すと保管場所を教えてくれるから持ち出すっちゃ。』
「どうやったら出たり入ったりできるんですか」
『その前に警告するっちゃ。
今のお前は物理的にも立場的にも弱いっちゃ。
何も考えずに使うと折角チート武器があっても
使いこなせず取り上げられるか殺されるかして終わりだっちゃ。
この世界元の日本と違って弱肉強食、
強い者は奪って当然、みたいな世界だっちゃ。
悪い事は言わないからそのタブレットも向こうに置いて来るっちゃ。』
「なんとなく解ります。とりあえずそうしておきます。」
『出たり入ったりする方法は簡単だっちゃ。
両手で頭上にハートマークを作って”萌え萌えキュン”
と言えば良いっちゃ。』
「・・・。変更は出来ないでしょうか。」
『出来ないに決まってるっちゃ。』
「一応聞きます。何故でしょうか、恥ずかしいは古いわ。やりたくねー。」
『面白いからに決まってるっちゃ。嫌ならあげないっちゃ。』
「いや、絶対必要になると思うからやりますよ。ううハズイ・・・。」
タブレットをエプロン風の服の中に入れ”萌え萌えキュン”腕を上げると
俺の体は白い空間に吸い込まれた。