34.外伝 バルツ村での噂話
「プークスクス!」
「もう、エバったら面食いなんだから。プークスクス」
ああ、やっぱり笑われてしまった。
私はエバ11歳♀、バルツ村の農家の娘。
作業の関係で村の女が集まったんだけど、
休憩時間に私くらい歳の子が集まりどの子が好きか
発表会になった。そこで私はエアが好きだと言ったら皆笑い出した。
「あの子顔は良いけどちょっと変じゃない。」
「一応領主様の子供なのよ。」
「どっかに奉公に行くからすぐ居なくなっちゃうじゃん。」
うん。エアヴァルト、エアは変な子だ。
数カ月前までは村の子とほとんど話さない、
話しても随分しょってる話し方をする子だった。
貴族様だからあの話し方の方が正しいらしいけど。
でも最近は態度が全然変わった。
小さい子には優しいし、普通に話しかけてくる。
「確かに最近は良くなったけどね。」
「元々よい子だったけど恰好つけてたのよね。」
「顔は良いけど頼りないよね、カエルも鶏も捌けないって。」
顔は良い、顔は良いってエルザ姉ェも絶対気になってるだろ。
そうなんだ、エアはズレた所がある。
カエルや鶏を絞める時、物凄い顔をして見ている。
絞めなきゃ食べられないって。
それだけじゃない。畑で虫を集めていたら
『どうするの?』って真剣に聞いてきたので
鶏にやると言ったらホッとした顔をしていた。
いくら貧乏でも虫は食べないよ。お貴族様だから知らないのかな?
「でもあの子魔法が使えるかも知れないんでしょ?」
「両親とも魔法が使えるからね。」
「魔法が使えたら稼ぎが段違いなんでしょ?」
「同じ使用人でも王都の大きいお屋敷で働けるって。」
「良いな王都、この間来たみたいな綺麗な馬車や綺麗な男の人が
いっぱい有るんだろうな。」
魔法を使える人は珍しい。エアのお母さんは領主様、というより奥様が
実家に無理を言って呼んだらしい、大人たちがいろいろ噂していた。
「よし!魔法が使えるようならちょっとひっかけてみよ。」
エルザ姉ェ、だいぶ年下だよ。
「そんな事言ってると他の子に持って行かれるよ。」
「気をつけないと二人に一人は一生相手なしなんだから。早い者勝ちだよ。」
「あーあ、私も男に産まれたかった。」
「エルフの呪いだかなんだか知らないけど何で女ばかり産まれるんだろう。
力仕事する人間が足りなくて困るよね。」
「本当、男どもをおだてて働かせるの大変なんだから。」
おばさん達が私たちの話に割り込んできた。
農業も林業も力仕事が多い。男手のある家は裕福だったりする。
私の母も良い相手を見つけるように言う。
私この村でずっと暮らすのかな?
できたら町にも行ってみたいけど、良くわからないや。
村は羊毛を煮洗いする匂いで満ちている。
あれを全部干して、梳いて糸車にかけて・・・。
その間に麦を刈ったり干したり、ああ忙しい。
エアは貴族の子だからやらなくても良いんだよな。
羨ましい。
私をお嫁にもらってくれないかな?
偉い人の家の中を掃除したり、台所仕事してれば良いんでしょ?
絶対農作業より楽じゃん。
大釜周りの力仕事をする男達を見ながら彼女は将来の事を考えた。
もっとも真剣に恋愛を考える年齢でもないし、
洗い終わった羊毛を笊に入れるのに忙しい彼女は
エアヴァルトの事なぞすぐに忘れた。




