28.貨幣経済キター!(大混沌経済かもしれない)
やってきました市場の日。
前日の昼頃から開いている店もあるし、明日までやってる店も多いらしい。
結構雑な市場の日。
水汲み中にエノラさんから声がかかり、男爵居室にお呼びいただいた。
お父様様立ち合いの元イリスさんからお小遣いをいただき、お礼を言う。
様式美?銅貨何枚か渡すだけでここまで形式を整える必要性に疑問しか感じないね。
貰えた銅貨は俺に4枚、レオニーに10枚、相場がわからん。年齢相応なのか?
ちなみに大人の貴族は必要な物があったら買いに行かせるとの事で
今年からレナは市場に行けない事になっている。
そういう訳でお小遣いと休みをいただき、朝食後市場に行く事になった。
何かメモを持ったエノラと男爵の遠征に同行していた使用人のミューラーが
入口まで一緒らしい。
「レナ可哀そうだね。折角の市場なのに。」
「良さそうな物が有ったら知らせに戻って、て何度も頼まれたよ。
大人になるのも考え物だよね。」
レオニーと俺が話しているのをエノラがちらっと見たが
何も言われなかった。
オフの過ごし方まで文句言われたくないね。
市場には既に大勢の人が集まって、何やら売り買いしている。
近在の村の人も買い出しに来ると言っていたから過疎ってた村とも思えない。
もっとも令和日本人の俺から見ると、大学のあった田舎町のスーパー程度の
賑わいにしか思えないけど。
「ねえ、レオニー。みんな市場の入り口の立て札を見てから入るけど、あれ何?」
「ああ、私たちには関係ないから知らなかった?今日の相場だよ。」
「相場?」
立て札には 金貨1枚が銀貨36枚、銀貨1枚が銅貨100枚と書いてある。
「知らなかった?お金って毎日値打ちが変わるのよ。」
レオニーがお姉さんぽく教えてくれるが、そういう問題じゃないような気がする。
「銀貨一枚で交換できる銅貨って、日によって枚数が変わるの?」
「一日位じゃ変わらないよ。でも去年は銅貨110枚だった気がする。」
これは、あれだ。政府の決めた公的価値がなくて各金属の価値で取引してるんだ。
面倒クサ、クサはえるわ。
ちなみに銅貨1枚が1ゼニー、重さの単位にもなっている。
金貨や銀貨も1枚は同じ重さらしいけど、純粋な金銀銅ではなく合金のようだ。
重さで取引して良いのか?単位名称へのツッコミは疲れるのでやめておく。
「ここらじゃ金貨なんか使わないけどな。」
立て札を見て考え込んでいたら村の人に声をかけられた。
「余程大きな取引をする商人とか貴族が大金を運ぶ時だけだよ。」
「そんな所に立ってないで、早く市場を見て回りな。」
市場で物を売っている人も声をかけてきたし、レオニーは既に中に入っている。
そういえば、この世界の物価って全然知らないや。どんな物があるのかも。
幸いと言うべきか、一応値札が付いている物が大半だ。
一応というのは、あっちでもこっちでも値段交渉をしているからだ。
面白いのは、村の人がチーズとか持って来て他所の商人が逆に買っている。
物々交換もしているようだし、銅貨以外に金属の塊をやり取りしている。
混沌だな、この市場。
紙やインクを売っている店があったのでのぞいてみる。
B4サイズ位の紙が3枚で銅貨1枚?銅貨3枚なら紙10枚にする?
俺の小遣い少なすぎないか。えっ輸入品だから高い、
国産は羊皮紙しかないから1枚が銅貨70枚?何につかうのそれ?。
インクは量り売りだからインク壺持ってこないと売らない?
そうですかお金がなくてどっちみち買えません。
いつの間にか横に立っていたレオニーが俺に何やら差し出して来た。
「奢ってあげる。井戸改良のご褒美」
何やら甘い匂いのするお菓子のようだ。
「ありがとう。」レオニーが既に食べているので俺も食べてみる。
うん、クレープだ。ドライフルーツを穀物の粉を焼いた物で包んである。
砂糖も蜂蜜もクリームもないが、甘い匂いは穀物と少しのバター。
要は味はあんまりない、穀物やドライフルーツの甘さは感じる。食レポ終わり。
レオニーに値段を聞くと銅貨1枚で2個買えるとの事。
「レナに持って行きたいけど、冷えると美味しくないのよね。
お砂糖かけてもらうと値段が上がるし。」
こんな物でも彼女達は楽しみにしていたようだった。
価格の傾向はわかった。
この市場、農産品とか食べ物は安い、俺の小遣いでもオヤツ位は買える。
木製の皿とかカップ銅貨2,3枚あれば買える。
それに比べ工業製品は馬鹿高い。
小さめのナイフが銀貨1枚とかする。
陶器ですら高い。コップ1個銅貨20枚
木製の食器ばかり見るわけだ。
あと商品に輸入品が多い。
絹や木綿みたいな布、紙。胡椒他香料、砂糖。
みんな輸入品らしい。
村は自給自足傾向が高いから布はあんまり売れていない。
亜麻を作ってリネンも作っているし、織物も自分たちの分は織っている。
買いたくても買えないというのもあるか。
バルツ村の主産業は羊毛や亜麻の紡糸業なのだが、子供も含め200人強の村で
ひと冬みっちり紡いだ糸の価格が銀貨3000枚にならないと聞いた事がある。
糸が安いのか他が高いのか。
確か令和日本で金銀銅の値段は 金を1とすると銀60、銅6000位だったはず。
就職面接前に経済ニュースで覚えた。金が投機的にどうたらこうたら。
就職決まって3歩で忘れたから細部は知らん。
『あなたらしいですね。』
「テンプレ、通貨単位あんまりじゃないか?」
『あれを通貨と呼ぶのは私の見識的には抵抗がありますが、まあ良いです。
金貨、銀貨、銅貨 ”は” 王国が発行しています。』
「えらく含んだ言い方するじゃないか。どういう事だ。」
『他に私鋳された硬貨や外国硬貨、布や麦が取引に使われています。』
「まじ物のカオスだな。硬貨以外の受け渡ししてるから変だとは思った。」
結局持ち帰りのお菓子を買う事にしたらしいレオニーが砂糖をかけてもらっている。
何かの葉っぱに包むんだ。お釣りに小さく丸い物を貰っているのが私鋳銭だろう。
市場の賑わい、硬貨を秤に乗せる人たち、物々交換の交渉。
前世である令和日本とのあまりの違いに俺はついていけるのだろうか。




