26.なんか大勢キター!
「やっぱりあった。嘘はついてなかったんだ。」
男爵館の周囲の土塀や柵を調べて周囲の木の上から跳び込んで
侵入した箇所を見つけた。
「獣人って凄い距離跳べるんだな。」
『ロープ持ってましたね。獣人が飛び込んで残りを引き入れたのでしょう。』
テンプレも感心している。
獣人が参加したらオリンピックのメダルを独占されそうだ。
「人間相手なら良いんだろうけど獣人や魔物に襲われた時
この館の防備は大丈夫なんだろうか。」
『防犯対策は対人用程度みたいですね。』
結局人間が一番悪辣で脅威という事なんだろうか。
さて次は下の小屋に行こう。
『マリアさんに外に出ないように言われてませんでしたか。』
「ギリギリ家の中だろ。」
男爵家は封建領主なので警察権があり牢屋もある。
何年も誰も入っていないので倉庫扱いされているが石造りで
別館より立派かもしれない。
『あんな所で何をするんです?』
「拳銃の試射だ。あそこなら音が漏れないだろ。」
『なるほど、でも今ゴブリンの皮が処理されてますよ。』
「臭いから、誰も来ない。硝煙も隠せる。最高じゃないか。」
何故今まで下の小屋を使わなかったって?
エミュール兄が村の女の子を連れ込むのに使っていたからだよ。
まだ15でそんな事するなんて、裏山怪しからん。
別に22でそういう経験無かったからって妬んでる訳じゃないぞ、
違うぞ多分。
さて小屋の扉を開けると思った以上に強烈だ。
耳栓は用意してたが鼻栓も必要だったなこれ。
ここは男爵家の所有物だが、管理は村になっている。
つまり臭気が染みついても文句は言えない。
エミュール兄がここに隠した中二心溢れる物品には
是非染みついて取れなくなって欲しい。
そんな事を考えながら試射準備開始。
拳銃はグロッグ19のGEN4、グリップを一番細いのに変えて
9歳の手でも両手ならギリ撃てそうだ。
的は1ガロン入りジュースの空ポリボトルに水を詰めて持ってきた。
広さの関係で7m位しか離れられない。
『大丈夫ですか?石壁からの跳ね返りに注意して下さい。』
「何故外す前提なんだよ。」
『ここから亜空間倉庫に行けば楽なのに、わざわざ水を持ち歩く。
冷静さを欠いている証拠です。』
「うるさい、実銃なんて初めて撃つんだよ。ゲームでしか見た事ないんだよ。
古い表現でドキがムネムネなんだよ。」
的の1ガロンのポリボトルは、この大きさのジュースって何人で飲むの?
まさにアメリカンサイズ。この距離で外れる事があるはずない。
そう思っていましたよ。実際に撃つまでは。
『もう撃たないんですか?後半やっと当たるようになったのに。』
「結構疲れたのと、弾と薬莢拾わないといけないからな。」
見慣れぬ金属の塊はなるべく他人に見せない方が良いだろう。
潰れたホローポイント弾を回収しながら、壁の傷が目立たない事を確認する。
『ライフルの試射はここじゃ無理ですね。』
「とてもじゃないけどな。拳銃でも気を付けないとヤバそうだ。
魔物の前でぶっつけ本番は回避したいんだけど、どうしようか。」
考えても仕方ないときは亜空間倉庫に行こう。
「”萌え萌え、キュン”」一瞬ためてやってみた。大丈夫か俺。
「とりあえず、消臭スプレーがあって良かった。」
『拳銃の手入れの方法わかるんですか。』
「添付マニュアルとドラマで見た知識でやってみるよ。」
訴訟大国USらしく取説はしっかり付いていた。
チート持ち、だけど練習は必要だなこれは。
人数が少ない分仕事が楽だったり、うるさい人が居なくて気楽だったり。
川に流木が沢山流れてきて薪拾いが楽にできたり。
拳銃の練習もコソッとやったり。
そんな日がずっと続けば良いなと思った頃、当たり前ですけど来ましたよ
男爵の馬車。皆さんご無事、お元気です。
疲れたからお湯を沸かせ?早くしろ? わかってます。
これが普通なんです。なんでもありません。涙が出てるだけ、シクシク。
男爵が急いで帰ってきた理由は明後日から村で開かれる市場だろう。
村の放牧地に店を出すのだが、男爵家にいくらか払わせる。
村長が集めるのだが男爵不在では税をごまかされる可能性もあるらしい。
薪拾いの引率をしていたセバスに聞いてみる。
「聞いてはいたけど、数日前から急に人が増え始めたね。」
「昨日から商人が先乗りしてきてるけど他にも多いぞ。
農繁期になると、村に出稼ぎに来る人も居るんだ。
畑も耕さなければいけないし、羊の毛も刈らなければいけないだろ。
村の人間だけじゃ足りないんだよ。」
「それでマンチェスまで乗合馬車がでるようになるんだ。」
「そうだ。村から出て行った者たちもこの時期には帰る事が多い。」
「仕事があれば村に居られるのにね。いつぐらいまで居られるの。」
「麦の刈り入れが終わる位までだな。そう木苺が取れるころまでだ。」
寂しい事にセバスはしばらく来れないとの事。
羊を見張りながら村の子供を見ていたらしいが、羊の出産シーズンから
羊の毛刈りの期間はそれどころではないらしい。
「しかし本当かな。」
『何がです。』
テンプレが念話してくる。
「エア君の記憶だよ。市場の日に水汲みが終わると『今日は休みなさい。』と
あのイリスさんが言ってお金をくれたんだ。」
『村中お祭り騒ぎするみたいですね。いろんな物が売り買いされるようですよ。』
「なんの娯楽もないもんな。」
『令和日本人には刺激不足ですか。』
「こっちに転生してから刺激しかないじゃないか。
死にかけたと思ったら刃物突きつけらて、その上毎日児童労働。話が違う!」
俺にハーレムライフを、ハーレムがダメなら引きこもりゴロゴロライフを。
そう思う位疲れている。
お小遣いか、こっちに来てから貰ってないな。
記憶によると前回は銅貨3枚貰ったようだ。
どの位の価値かしれないがとりあえず楽しみにしていよう。




