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18.銀貨二枚、キター

本館の人達からの指示や説明は妙にあっさり終わった。

こういう時に報酬の話とか、ねぎらいの言葉とか出ないのかな?

周囲の人達は緊張を解いて話し出した。


「エア、よく我慢したな。おかげで話が短くて済んだ。」

「イリス様も流石に困ったんじゃないか?

若様、無理がありすぎるだろ。」

「若様、自分でも無理あると思ってるのが丸わかりだったな。」


「亡骸は教会に安置しろ。難しいかもしれないがなるべく綺麗に。

ゴブリンは明日皮を剥ぐから下の小屋へ放り込んでおいてくれ。」

少し騒がしくなったが、セバスが指示を出すと皆動き出した。


毛布でス巻にされて動けない俺はロバの上からセバスの肩に担がれた。

「エアは今日は何もしなくて良い、家で休みなさい。」

マリアさんに聞こえるように言って、俺の服が入った袋と一緒に

セバスは別館の中に俺を届けてくれた。

ス巻の毛布は次の野営の時までに取りにくるとの事だった。

ゼバスが別館からすぐ出て行ったのは忙しかったのか気を使ったのか。


別館内でス巻、ミイラのようにグルグル巻きにされた毛布を

やっと解いてもらえた。子供の体温保持を考えたんだろうけど

歩けないし、窮屈で仕方なかった。


で、マリアさんというかママ。

傷を見た瞬間顔色を変えて回復魔法は良いんですけど俺全裸です、

スッポ〇ポ〇です。

魔法の前に服を着させてもらませんでしょうか。

寒いです。それ以上に恥ずかしいです。


青黒く変色していた箇所は回復魔法でみるみる腫れが引き痛みも引いてきた。

泣きながら抱きしめてくれて感無量ですけど、繰り返します。

俺スッポ〇ポ〇なんですよ。

いくら体が9歳とはいえ、いや幼児じゃないんだから9歳でも嫌がります。

やっと解放されて部屋に飛び込んだ。

今日一日で何人に見られただろう?もうおムコに行けないかもしれない。


『え、露出するの趣味じゃなかったんですか?』

部屋に入った瞬間テンプレが念話してきた。


「ずっと黙っていて最初に言うのがそれか?

俺にはそんな趣味はないと何度言えば。」

『私と念話する時小声ですけど声が出たり、表情が出たりしています。

周囲から見ると一人でブツブツ言ってるように見え気味悪がられます。

近くに人がいる時は私が注意していますが、遠くから見られていると

見落とす事があります。心の中だけで済ますようにして下さい。』


「エミュール兄の事か?見られてたのかな。」

『噂話からかもしれません。田舎で話題が無いからすぐ広がります。』

さて、服を着たぞ。この世界の服も着慣れてきて早いものだ。

『女物を躊躇なく着るようになりましたね。』

「だから変態みたいに言うな!この世界に合わせてるだけだ。

周囲の方が変態じゃないか。全部引ん剝く事ないだろうに。」

『ムカデの体液に毒が入ってないか心配だったみたいですよ。』


「それならそうと言ってくれれば良いのに。」

『アンタを不安にさせない思いやりでしょ。

それ位気が付かないんですか?』

「無神経で悪かったな。それで本当に毒はあったのか。」


『無いですね。消化液と多少のゴブリンの肉が主成分です。』

「聞くんじゃ無かった&洗われて冷たい損か。

まあ善意100%で洗ってくれた人には感謝しかないな。」


食堂ダイニングと言う名の台所に戻り、とりあえずヤバい物は回収した。

服や毛布と一緒にDDTの袋や拳銃が取り出してあって一瞬焦ったが

マリアさん今は見慣れぬ品物に興味が湧くような精神状態ではないらしい。

・・・拳銃の引き金引かないでくれてマジで良かった。


それより、困った。

俺は日本で女に泣かされた事は多々あっても泣かせた事はない。

エア君(つまり俺だが)を見ているマリアさんの涙が止まらない。

再度回復魔法をかけようとしてくれるけど、疲れるんでしょそれ?

もう大丈夫ですから。俺に謝られても困ります。

頭にきている事は沢山ありますけど、

悪くない人に謝られてもどうしたら良いかわかりません。


”テンプレ、どうしたら良いんだ?”

『とりあえず笑って、大丈夫だと言ってあげて下さい。

その後はいつも通りにしているのが良いと思います。』

珍しく皮肉も言わず答えてきたな。


「ママ、僕は大丈夫だよ。濡れた物干したら御飯にしよう!」

エア君補正をかけた声で、目いっぱい可愛らしいポーズで言った。

『可愛いポーズ練習してて良かったですね。』

余計な事を言う奴は無視だ。


マリアさんはチョロい。この世界での我がママながら本当にチョロい。

オレオレ詐欺に秒でかかりそうな位チョロい。

前世の俺でもナンパできそうな位チョロい。

『流石にそれは無理だと思います。』

いちいち煩い奴だ。

一緒に服や毛布を干しているうちにマリアさんに元気が戻った。

拳銃より化繊の毛布に興味を持っていて助かった。

この世界に無い肌触りだろうから当然か。

「高価なの?」と聞かれたけど、この世界の毛布はウール100%、

質はピンキリみたいだけどそっちの方が高いと思います。

「火の傍によると溶けちゃう安物だよ。」と答えると目を丸くしていた。


さて、腹立つから今日は豪華なディナーとしよう。

どういう理屈かしらないが冷たいままの倉庫からケーキ取り出そう。

あれは自然解凍で食える。

電子レンジが使えなくて大半の冷凍食品が食えないのが辛い。

まあレトルトと缶詰でも馬鹿にできない物が食えるから良いけど。

本館の奴らに見せつけられないのが残念だ。


その時、ドアがノックされた。

マリアさんがまだ涙をぬぐっているので俺が出るとレオニーが

小さく折った紙きれを差し出してきた。

?何か入っている。

「エミュール兄もあれで悪いと思ってるみたいよ。それをエアに渡せって。」

「どうだか。他には?」

「伝言はそれだけよ。ねえ、エアって銀器磨きってやった事あった?」

「ないよ。」

「大変よ。エノラが良いと言うまで何度でもやり直しさせられるから。

それにポットの中とか手が届かないし、尖った所が多いし。」

どっかのゲームに布で磨くとかあったな、位しか考えてなかった。

あの陰険なエノラが良いと言うまで、大丈夫か俺。

「手が空いたら手伝ってあげるからね。また明日。」

俺は暗い顔をしてしまったのだろう。

レオニーは俺を慰めるように声をかけ帰っていった。


振り向く前に俺は必死に笑った。そうするしか無いだろ?

マリアさんに紙包みを見せ開いてみた。

乱暴な字のメモに2枚の銀貨が包まれていた。

『男爵家の名誉の為、本日の顛末は以下のようにする事

・エアヴァルトが無理やり頼むからエミュールは坑道まで行った。

・坑道の中でエミュールは炎魔法によりゴブリン一匹を斃した。

・上のゴブリンを調べていた時トーテムフートが出現した。

・エミュールは炎魔法でテーテムフートも斃した。

・落盤が起こり、軽いゴブリンは運び出せたが重いトーテムフートは

 運び出せず埋もれてしまった。

・落盤の際エアバルトは傷を負った。

・トーテムフート出現を急ぎ知らせる為エミュールは単騎戻った。

・エアヴァルトは傷を負ったせいもあり早馬に乗らず

 屍骸の見張りの為残った。

銀貨2枚は恐怖に耐えこれらを証言した事に対する褒美とする。』


「・・・何、これ?」

「仕方ない、事なのよ。銀貨はエアが貰っておきなさい。」


亜空間倉庫から持ち出すケーキはどれにしようかだけ考えて

銀貨を握り自分の部屋に入った。

行く前に、エア君の数少ない私有財産だった小さな箱を開けた。

石ころ、ボタン、小さな銅貨が6枚。

そこに銀貨2枚を放り込んだ。

8歳の子供がどんな気持ちで貯めてたんだろう。


でも、今はこっちが先だ

「”萌え萌え、キュン。」

俺の体は真っ白な空間に引っ張り上げられた。




























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