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10.回復魔法キター(魔物もキター)

甘味を堪能したマリアさんが俺に言い聞かせてきた。

「10歳以下で魔法を使っちゃダメって国法で決まってるの。

 もし魔法を使った事を知られたら大変よ。

この事は絶対人に言っちゃダメよ。」

「わかってるよ、ママ。人には言わないし人前で使わない。」

あんな恥ずかしい事、人前で出来る訳ない。

取り出したチート物品については注意が必要だな。

物が貴重な世界で量産品なんてないので、誰の物とか新しい物はすぐわかる。


さて別館にはあまり人が来ないとママは言ったが、

ずっとおかしいと思っていた。

回復魔法を使える人がいるのに何故人が来ない。

人口が少ないとはいえあまりにも少なくないか?

「ねえ、ママが回復魔法を使うようになったのはいつ?」

「14歳の時よ、行商の人の手当の手伝いをしていてね、

何とか助けたいと思って前に回復魔法をかえてもらった時を思い出して

詠唱したらできちゃったの。」

マリアさん、天然なんだよな。チョロいし。

「凄いね。騒ぎになった?」

「使える人は千人に一人もいないって驚かれたわ。

 でもね、ママはヤブ、使えない回復魔法使いなのよ。

 魔法でお金を稼ごうと思って傭兵隊に入ったんだけど、

 全然役立たずで。」

「回復魔法って効果ないの?」

その後の話を要約するとこうだった。

・回復魔法の原理とか難しい事はわからない。

 ただこうなって欲しいと願うだけ。

・俺が想像するような、

 欠損部分を再生するとか重症者をあっという間に治す魔法はない。

・腫れとか、切り傷、擦り傷は治せるし得意。

・心臓がや呼吸を一時的に再開させる事はできるが

 それでも治らない事がある。

・病気は治せないと思った方が良い、薬の方がマシ。

・ケガではないものは治せない。

 手にできたタコなんかも治せない。

・傭兵仕事中、お腹に傷を負った人は傷を治しても死んでしまった。

 理由は判らないが、治せない事が多すぎて傭兵をやめた。


内臓の損傷や病気に対する知識がなくて対症療法しかできないって感じか?

「そのころの傭兵の一人がセバスでね。

 どういう症状にどう対処した方が良いかは

 セバスの方がよっぽど詳しいわ。」

なるほど、人があまり来ないはずだ。

この状態でヤバい物置いといても寝室まで入る人はいないだろう。

この日は怪しまれないように暗めに調整した

LEDカンテラの明かり、の下遅くまで話こんだ。


それ以降別館で食べる食事は俺が作る事にした。

まあレトルトやら缶詰やらレーションやら組み合わせて出すだけだけど。

こっちの料理って素材をこれでもかと煮込むのが多い。

素材が悪いから仕方ない所はあるんだろうけど毎日続けられたら拷問だ。

令和日本人の俺が贅沢すぎるのか?しかし,

胡椒とか唐辛子とか化学調味料とかウマー。

本館で食べてる人に悪いね、

と言いながらこの世界ではポピュラーでない昼食も食べるようになった。

レナ、レオニー許してね。

マリアさんは、エア君に魔法を使わせる事に葛藤があるようだ。

今の所食欲と甘味欲に逆らえないようで、

「少し早いだけだから、少しだけだから」

部屋の隅で言っているのが聞こえたりする。


その数日後事件は起きた。

村の方が騒がしいなと思ったら別館のドアが叩かれた。

開けると背中から腰に大きな傷を負った

50歳位の女性が同年配位の男性に支えられていた。

慌てて中にいれてベンチに座らせる。

出血は激しいが意識はあるようだ。

「ゴブリンに切りつけられました。

 森の中で急に、刃物を持っていて。」

「それ以上は必要ないです。

 傷を治すのが先、血が流れ過ぎてしまう。」

俺の方に向き直ると、いつもと全然違う口調で言った。

「エアヴァルト、私の部屋から新しいリネンを持って来て、

 それとお湯も用意して。」

「はい、お母さま。承知しました。」

久しぶりにエア君の体の記憶が働いた。

布を渡し、台所からお湯を持って行くとマリアさんは傷口を確認し、

その周囲をきれいに拭くと回復魔法の詠唱を始めた。

驚いたね、エア君は見たことがあるようだが俺は初めて見る。

マリアさんが手をかざすとみるみる傷口が塞がっていき、

最後は赤い線のような形になっていく。

数回それを繰り返すと傷口は完全に塞がったのか

リネンを当てても血が付かなくなった。

「僕のママは凄いだろう。」

どこかでエア君の声がしたような気がした。

そこで気が付いた、この人上半身裸だ。

今の俺、体9歳だから良いよね。

絶賛女装中で女の子扱いされてるし。

この女の人も別に恥ずかしがってないから許されるよね。

『いやダメでしょ。紳士だったら席を外すでしょう。

 ガン見するなんて品性下劣』

”そういう目で見てねぇ、

 回復魔法なんて、あんな凄い事されたらそりゃ見るでしょ”

『そういう事にしておきましょう。

 アンタのストライク範囲ゾーンの広さには驚きました。』

”だからそんな事言うな。俺のストライク範囲は今の所マリアさんだけだ。”

テンプレと不毛の念話をしている間にリネン布を傷口に巻き付け服を着せた。

「血を失っているし、悪い気も入っているから2,3日は静かにしていてね。

 その間、傷口は清潔に保って。」

マリアさん、いやママ格好良い。

「有難うございます。」男の人にお礼を言われた。

オロオロしてたのが、ようやく落ち着いたようだ。

出血のせいか顔色は良くないが、女の人も落ち着いてきたようだ。

「ゴブリンって近くの森に出たの?何匹位」マリアさんが質問した。

「森の奥の方です。薪があと少ししかなくって。

 何人かで行けば大丈夫と思ったんですけど。」

「言ってくれれば俺が行ったのに。

 女ばかり3人で行ったらしいです。」

「数はどうだったの?」

「見たのも、追いかけてきたのも一匹でした。

 薪を思いっきり投げつけたらそれ以上は 追って来なかったので

 助かりました。」

「刃物持ってるゴブリンは厄介なんですよね。

 村長とお館には連絡しましたから大丈夫でしょうけど」

二人が帰った後、俺やっとわかった。

この部屋、食堂と言ってるけど玄関入ってすぐの所に

小さい机とベンチが向かい合わせに置いてあるんだ。

奥の食事するテーブルと台所までの距離が微妙に離れている。

診察室じゃん。

本館をこの用途に使うと床が血で汚れるのが嫌だったんじゃん。

疑問が一つ解消したよ。


で、ゴブリンだが偶に出るらしい。子供を襲う事があるのため

『悪い事をするとゴブリンが来るよ』みたいに使われている。

残念ながらエア君は実物を見た事が無いらしいので

俺も具体的な姿が思い浮かばない。

テンプレも資料が無くてわからないらしい。

肝心な時に役立たずだ。

「ママ、ゴブリンって見た事ないけど、どんな奴」

「魔物だけどそんなに怖くないよ。

セバスの飼ってる犬の方がずっと強いから村の中には入ってこれないよ。」

「でも刃物持ってるんでしょ。」

「普通は木の枝か骨しか持ってないのにね。

 刃物はどこかで盗むか拾うかするみたい。

 刃物の使い方を知らなくて

 無茶苦茶に振り回すだけだからそんなに強くないよ。

 そんなに怖がらなくても大丈夫」

「お話では頭悪いって聞いたけど。どんな姿してるの。」

「エアより背は小さいけど、がっちりしてる感じかな。

 緑色の毛で覆われていてね牙と爪が鋭くて

 汚くて臭いから犬がいれば気が付いてくれるわ。」

イメージのゴブリンとは多少違う気がする。

女性を誘拐して苗床にするなんて事はなく

同一種族間の有性生殖だそうな。

大集団、火を使う?そんな事はなく森では狼と生存競争していて

狼優勢との事。

とりあえず少年より幼児よりの俺は

大人しく家に居れば良い=楽できると理解していた。

そう,馬鹿が動き出すまでは。



























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