魔女とはなにか
色とりどりの人々、色とりどりのお菓子にお酒、それからキラキラと光る灯。
何もかも初めて見るものばかりだった。
それに皆親切だった。
「何故こんなによくしてくれるんですか?」
見つかると処刑されてしまうため、隠れて生きているからだろうか。
皆が顔を見合わせていた、少し言いづらそうな何かがある雰囲気だった。
少し年かさのいった女性の魔女が静かに言った。
「皆に愛されて、奇跡を発現させたものが聖人だよ。
じゃあ、魔女は――?」
少しだけ間を置いて魔女について説明をしてくれた。
周りの人間から誰からも愛されず、大切にされず、そういう状態でも奇跡が起こることがある。
それが魔女だ。
誰からも憧れられず、好かれず。そういう人間だけが魔女になれる。
「なに、お前を知らない者の数は含まれないがね」
世の中の全てから嫌われているというのは少し違って、世の中には私のことを知らないかそれか、私のことを嫌いな人しかいない。
その状況の中特別な力を使える人を魔女と呼ぶらしい。
ああ、あの時私には味方なんか誰もいなかったのね。
魔女になった瞬間、きっとあの血が沸騰する感覚。あの瞬間私を愛していた人は誰もいない。
それを知っていたから、家族にあっても無駄だとあの人はわかっていたのだろう。
それから、私は周りを見回す。
私の様に大貴族出身でも無ければ知り合いがそれほど多くない人もいるだろう。でも、この人たちは皆、少なくとも力が発現した瞬間この人たちも誰からも好かれてはいなかった。
一人ぼっちだった人たちなのだ。
何故だか涙があふれそうになりこらえる。
「まあ、これから、誰かと愛し合うのは勿論自由だよ」
常に嫌われ続けないと魔女の力が使えなくなるとか死んでしまうとか、そういうことはないらしい。
「はい、わかりました」
「それから、使い魔を探すこと」
「使い魔?」
使い魔というのは魔女のしもべらしい、動物の人もいれば人間のひと、獣人を使役するひと、中には竜を従えているひともいるらしい。
使い魔になるべき生き物は魔女が見ればすぐに“分かる”らしい。
「色々助けになるから早く見つけておやり」
一人の綺麗な髪をした魔女が、首にからまる白蛇を優しくなでながら言った。
時が戻ったとはいえ、このままだと私は私を知るものすべてから嫌われてしまう。
ならば、気を許せる者が欲しい気持ちはとてもよくわかった。
でも、できれば知り合いの人間でないことを祈りたかった。
婚約破棄から処刑まで、見た人々の誰かだと思うと寒気がしてしまう。
それから、私は魔女の集会を楽しみ、それから魔女について書かれた書物をいくつも受け取った。
それらの本はまるで重みが無く、魔女以外には見えないらしい。
「魔女とされて処刑されたものに本物の魔女なんかいる訳がない」
どこに閉じ込められても力で抜け出すことだってできる。火あぶりで体を焼かれない方法だってあるらしい。
「だから、お嬢さん。恐れずに進みなさい。
そしてこうやってたまの集会で様子を聞かせておくれ」
皆は私にそう言った。
私はあの人、最初に牢であった人に手を引かれ再び屋敷に戻った。
「あの、あなたの態度は気に入らないところもあったけど、結果的に助けられたわ。ありがとう」
私がそう言うとその人は少し驚いた顔をして、それから面白そうに笑った。
「仲間が増えるのは久しぶりなの。困ったことがあったら……。そうねこのペンダントをあげるわそれを握って私を呼んで」
貴女、符丁ってやつをすぐ忘れてしまうみたいだから分かりやすいものの方がいいでしょ。
そう言いながら私をその人は軽く押した。
そうすると私は、私の部屋の鏡の前にいた。