新しい私
* * *
目を覚ますと、いつもの私の部屋だった。
『いいえ違うわ。鏡を見てごらんなさい』
相変わらず頭の中で声がした。
火で焼かれたはずの体も痛くない。
恐る恐る起き上がり、姿見の前に来る。
そこで初めて鏡を見るようにと言われた理由が分かった。
「わかがえっている?」
「違うわ。時間が巻き戻ったのよ」
今度は直接耳に聞こえる声がした。
その次の瞬間、鏡からにゅっと腕が出てきて、私の腕をつかむとそのまま鏡の方へと引っ張った。
ぶつかると思った鏡はぶつからなかった。
おもわずつむってしまった目を開くと、そこは薄暗くまるで夜の様だった。
私が目を覚ました時私の部屋は日差しが降り注いでいて昼間だった筈だ。
「魔女の世界へようこそ」
私の手をひいたのはあの時の女だった。
それですべてが夢などではないことを悟った。
ぶるり。
処刑の時の様をおもいだしてからだが震えた。
「あらやだ。まだ起きてもいない未来のことは忘れて楽しみましょう?」
あの時とこの人の年齢は変わらないように見える。
私は若返ったのに。
「あの……」
私が話しかけるとそれを遮るように女は言った。
「ようこそ新米魔女さん。今日はあなたの歓迎会よ」
その人が言った瞬間空にベルの様な形をしたものが浮かび上がりランタンの様に橙のあたたかな光がともる。
そして色とりどりの髪の毛の色をした人々がいることにようやく気が付いた。
「魔女の集会にようこそ」
口々に言われる。
男の人も女の人も若い人も年老いた人もいた。
けれど、ここにいるのが皆魔女なのだと気が付いた。
こんなにも多いなんて驚いた。
見つけ次第私の様に処刑されるものだと思っていたのにこんなにも多いなんて。
「これから、よろしくお願いいたしますわ」
私がそう言うと、一瞬シンと静まり返って、それで、何か間違えてしまったかと思った。
けれど、次の瞬間皆がわっと歓声を上げて、「料理をたべろ」だとか「あなたの使った時戻りはすごかった」だとか一斉に話しかけられた。