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魔女との出会い

声のした方を見る。


見たことのない女性だった。

公爵家の用意した手の者だろうか。それにしては意味不明なことを言っていた。

そんな符丁を用意したなんて話は聞いたことが無い。


「あら、あなたまだ自分が魔女だと気が付いていないの?」



女性はそう言った。

それを聞いて私が魔女だという自供を取るためにここに来た人間なのだと思う。



「私は魔女なんかじゃない!!」



叫ぶように言った。

淑女としての教育なんて全て吹き飛んでいた。


「両親に聞いてください!!

私が魔女の様な事は一切していないと、今まで人間としてまっとうにやってきたときっと証言してくれます!」


願うように私はそう言った。


女は、面白そうににやりと笑った。


「ねえ、それって“本当”かしら?」


そんなことを言う。


「魔女には確か証があったはずです。

私にはそれがある筈がない!」

「……そっちの話じゃないわよ。

あなたの両親は本当にあなたのことを思って、あなたをかばってくれるかしら?」


女はそう言った。

私の心を揺さぶる作戦なのだろう。

そんなものにのってやる気は無かった。


「私は魔女じゃない。

それはちゃんと家族はわかってくれるはずよ」


今まで公爵令嬢としてちゃんとふるまってきた。

それを家族は認めてくれていたはずだ。


今回だって話せばきっとわかって下さる。

冤罪をかぶる羽目になった隙は怒られてしまうかもしれないけれど、間違っているのはあの王子だ。


「そう。なら直接聞いてみましょう」


歌うようにその女は言った。

直接? ここに両親を呼んでいるのだろうか。

潔白を証明しなくてはと思う。


けれど心の準備をしたのと真逆に両親は現れない。

何かを試されている気がした。

また体をめぐる血が熱くなるような感覚が強まる。


女が面白そうにこちらを見て笑った。

嘲笑われたのだと思った。

何かを言おうとしたが目の前がめまいを起こしたようにぶれた。


* * *


次に見たのは、懐かしい景色だった。

牢の湿った匂いもしない。鍵を開けられた覚えも馬車に乗せられた覚えもない。


一瞬でよく見たものたちが目に映る。


「魔法……」


魔女が使う悪しきものと、聖者が使う奇跡とがあるという。


この女が、この女こそが魔女だというのか。


「お前、お前が!!」


私がそういう。


「そんなことよりも、家族とやらがあなたの話を受け入れるか、それをちゃんとお見せなさい」


まあ無理だと思うけれど。面白そうに女が付け加える声が聞こえた。

ここは私の屋敷の中。


警備の騎士たちがいるよりずっと奥、家族のためのスペースだ。


廊下を通ってすぐ先に多分執務中のお父様がいる。


「どうやって、今ここにいる説明をすれば」


そもそもこれでは脱走してきたみたいだ。


「その件は大丈夫ですわ」


女は笑った。

何が大丈夫だというのだろう。


「国王の玉璽の入った書状をもっていますの」


それをどう判断するかはあなたのご家族次第ですが、また女は面白そうに笑った。


「少なくとも、最後の慈悲として家族に逢わせる位には思ってもらえるわ」


女はそう言って、人の気配のする方。廊下の奥へ向かって行った。

慌てて私もその女を追いかけた。

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