優秀な王子だった筈の人2※婚約者の王子視点
婚約はすぐに破棄された。
というか、最初から婚約はされていないという扱いになったらしい。
これで大手を振って新しい婚約者を探せると思ったけれど上手くいかなかった。
そもそも、高位貴族の令嬢は皆すでに婚約者が決まっていた。
不慮の事故を考えてふつう残しておくだろう!!と言ったが、従者は、はあ、とため息をついただけだった。
仕事の山はたまるいっぽうだった。
それでは外国はと思ったけれど、何故か上手く話が進まない。
どうにもならなくて、弟の婚約者を挿げ替えようと陛下にお伝えしたけれど駄目だった。
父親に子供として頼んでも駄目だった。
とにかく使える婚約者が必要だった。
政務はたまり続け、王宮で嫌な噂が出ていた。
許せなかった。
優秀である自分をそんな風に言う家臣は手打ちにするべきだと思ったが、なぜか止められてしまった。
けれどそんな中新しい婚約者が決まった。
とある伯爵令嬢らしい。
どんな令嬢かしらべると、何故か子爵家から養子に入り伯爵令嬢になっていることが分かった。
なんでそんな娘がと父に抗議したが、父は首を振るばかりだった。
新しい婚約者は城に来るなり、俺に庭園を案内して欲しいだの、王宮の珍しい茶器がみてみたいだの、我が儘ばかり言った。
こちらは仕事が忙しいというのに。
「すこしは手伝ってくれ!!」
俺がそう言うと伯爵令嬢は伯爵令嬢の癖にぽかんとしてそれから「そういうことは王子殿下のお仕事では?」と言った。
「いずれ、王子妃、王妃になるのに何を言ってるんだ!!」
と俺が言うと、「いずれ、ですわ」と答えられた。
「その日のために今はまだ勉強中です。
それが終わるまではお手伝いなんてそんな無責任なことはできません」
だって、“あれ”はやっていた!! のどまで出かかった言葉を飲み込む。
それから、家庭教師たちにまず自分の政務を手伝えるように教育するように伝えた。
王宮の家庭教師たちは皆、馬鹿にするような目で俺を見てきた。
俺は優秀なのに何なのだ。
「弟殿下に一部仕事を回すことになりました」
補佐官は言った。
弟は病弱だった筈じゃないか。
補佐官の一部も弟付きになるらしい。
病弱だった筈の弟が健康になったらしい。
なんでだ。
それよりも優秀な俺の考えた新しい施策をと、大臣に、陛下に見せるが誰もその意見を実行させてはくれなかった。
「ずっと、美しい妃が欲しいと言っていただろう。
それでいいではないか」
ある日、陛下が、父としてそう言った。
伯爵令嬢は確かに美しい少女だった。
そうじゃない、違う! 言いたいことは沢山あったのに言えなかった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
それもよくわからない。
伯爵令嬢は回帰前、殿下といつもいた女性です