さようなら
ルイは私の使い魔となってくれた。
私の魔女としての勉強も進んでいたし、ルイの勉強も進んでいた。
二人で魔女の集会にも行って挨拶もした。
魔女のための店の場所も教わった。
そして、昔々国が滅びてしまった遺跡の場所を教えてもらった。
深い深い森の中にあるその場所は自然にあふれていて、獣人たちが暮らしやすく、その深い森が外界との境界線になるだろうと。
最終目的地はそこにすることにした。
ルイはぐんぐんと学をつけている。
魔女の中で家庭教師もできるものが何人かいて名乗り出てくれた。
私も教えられる分野はある。
そろそろ、頃合いだと思った。
* * *
私を裏切った人たちにはもう二度と関わり合いになりたくなかった。
名前を呼ばれることも嫌だった。
けれど、私以外の人間が代わりのスケープゴートにされるのも嫌だった。
私には奇跡が起きたけれど、新たに多くの人の恨みを買うかもしれないその人に同じような奇跡が起こるのか、それとも皆から嫌われずすくわれるのか、そんなこと考えたくもなかったし一々監視もしたくなかった。
でも到底許せるものではない。
そんな許せる様な思いならばきっと私は魔女になっていない。
私の人生の大半を妃教育につぎ込ませ、それをいとも簡単に裏切り捨てた。
その事実は今も私の中に確かにある。
多くの人々の前で貴族としての辱しめを受け、人生を一度終えた。
その事実は変えようがない。
その話はルイにはしたし、私に声をかけたあの魔女を含めて何人もの魔女はその事実を知っている。
だから私たちに協力してくれる人がいるのだろう。
何となく分かる。
私も同じように、虐げられ嫌われた末に魔女となった後輩がいたとして、自分を重ねて手を差し伸べてしまうだろう。
だから準備は進んだ。
ルイだけは「俺が全員かみ殺してきましょうか?」と最後まで聞いてきていたけれどそれは断った。
これは私の復讐だから。
新たな住処は用意してある。
貴族令嬢として世話をされる生活以外の、自分で生活する練習も済んでいた。
「それではお暇しましょう」
そう言って私たちは屋敷をあとにした。
そして、いくつかの魔法をこの国全体にかけた。
それは本来、普通に生活をしてさえいればきっと困らないもののはず。そういう魔法だった。