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お前は魔女だ

婚約者であるこの国の王子が最近よそよそしいのはわかっていた。

そしていつも同じ女性を連れて歩いていることも知っていた。


そのことについて公爵家の主たる父に相談もした。

放っておけという事だった。


その言葉の裏には、どうせ王子が結婚するのは公爵令嬢たる私なのだからという事が見え隠れしていた。

王子の人となりは関係ない。

私の意思も関係ない。


そういう結婚だから、私から口出しすることは何も無い。

そう思っていた。


万が一、婚約が取り消されるとしてもそれは一族同士の話で、それこそ私の意思など関係ない物と思っていた。


* * *


「殿下、いまなんとおっしゃいましたか?」


私が婚約者である王子にそう聞いた。


「だから、婚約を破棄すると言った」


今は夜会の真っ最中で、そんな話をする場ではない。



「何故……」


何故突然、何故こんな場所で、何故わざわざ私本人に……。

疑問がつい口をついてしまった。

周りの貴族たちが面白い余興でも見るようにこちらを見ている。


大貴族たる、公爵家の令嬢がこうやって晒しものの様にされてる姿が面白いのだろう。

王子は何らかの理由を言うのだと思っていた。

愛する者が出来たとか、私がいかにいたらないのかとか、それとも新しい後ろ盾が出来たからだとか。


けれど、王子が言ったのはそのどれとも違っていた。



「この女は“魔女”だ!!

魔女は処刑せねばならない!!」



周囲がしん、と静まり返ってそれから、ざわめく。



何を言われた?

私は何を今言われたかを反芻する。



魔女、この世界にとって世界の均衡を崩す悪しき存在。

理を曲げ皆の生活を脅かす悪のもの。


見つけ次第、処刑せよという国法が定められている。



「違います!!私は!!」


魔女なんかではない。

体が震える。


この人は、この男は、いらなくなった婚約者に対してそこまでするのかと思った。


婚約者として不要になったという理由で、冤罪をかけて処刑しようとしている。



魔女、そうだ魔女には確か証があったはずだ。


私が口を開こうとすると「魔女が呪言を吐こうとしている!!さるぐつわをして縛り上げよ!!」

私の婚約者、否、元婚約者はそう言った。


既に待機していたのだろう、王城の騎士たちが私を押さえつけた。

恐怖に震える。

完全に嵌められたのだ。



私はこのまま処刑されてしまうのだろうか。


引きずられるように連れてこられたのは貴族用の牢ですら無かった。

恐怖が怒りに変わる。血が沸騰するかと思う様な怒り。


実際に沸騰していたのかもしれない。

目の前がチカチカとする。



家門の誰かから連絡は無かった。

最後に言い残すことはとも、除名嘆願も、冤罪を晴らすための何かも無かった。


もしかしたら、私の見えないところでそういった動きはあったのかもしれないけれど、酷い生活は何も変わらない。


当然王城の騎士にも、女官たちにも、一族の縁者はいる。

誰からもなんの言付けも無いという事はそういう事なのだろう。


切り捨てられたのだ。

沸騰した怒りが更に高まるのを感じた。


その時だった。


「同胞よ、その誕生を祝福します」


そうどこからか声が聞こえた。

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