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【完結】鬼が嫁入り 〜妖怪嫌いが鬼族の許嫁と幸せになる話〜  作者: 雪村
2章 見送り握手チャレンジと貴方のこと
6/50

6話 神楽雑貨店の仕事

【桜花に放課後、実家の手伝いを求められたので少し帰るのが遅くなります】

【はい】

【夕飯までには帰る予定です】

【はい】


「スマホ操作慣れてない雅お姉ちゃん可愛い〜!」

「勝手に見ないの」


 学校が終わった私と桜花は実家である妖怪専門の雑貨店で作業する。


 神社に近く、薄暗い路地裏に佇む神楽雑貨店は本日定休日だ。

 だから桜花も私を誘ったのだろう。


 雅さんと共に暮らす前はごく稀に手伝っていてそこまで貢献はしてない。

 それくらい私は妖怪に関わりたくなかった。


「ねぇねぇ、雅お姉ちゃん呼んだら来てくれるかな?」

「雅さんも忙しいんだからやめなよ」

「そっか〜。鬼族は大変だね〜」


 桜花はダンボールをドサっと私の前に置く。きっといつもの作業だろう。


「じゃあお姉ちゃんに問題です。雅お姉ちゃんのお仕事は何でしょう?」

「鬼族の何か」

「はぁ……。許嫁の情報何も知らないじゃん。お仕事くらい聞いておきなよ」


 手伝って欲しい物はまだまだあるのか桜花は裏の座敷と表の店を行ったり来たりしている。

 次々に積み上げられるダンボールを見て不安になった。


「ちなみに今日はこのダンボールの中身の商品全てにシール付ける作業ね!」

「多くない?」

「文句言わない。あたしが持っているこの茶封筒の中身、わかるかい?」

「……バイト代とか?」

「そう!こっちはあたし!こっちはお姉ちゃん!お母さん達が用意してくれたんだ」

「ならやるしかないか。お母さん達はどこ行ったの?」

「しーらない!」


 桜花は私にバイト代が入っている茶封筒を手渡す。どうやら前払い制らしい。これで逃げ道を無くすようだ。


「早速やろうか!あたしこっちからやる!」

「なら私はこれから」


 妖怪の雑貨店と聞けば昔ながらの古いお店というイメージがあるようだが、神楽雑貨店はどちらかというと今風だ。


 外観や内装は古臭さ満載だけど商品はバーコードスキャナーで会計する。

 しかもQRコード決済も可能だ。


 雅さんのように人間に近い見た目の妖怪は普通に人間社会で暮らしている。

 “現代と古代を合わせた雑貨店にする”というのが神楽雑貨店のボスである祖父の口癖だった。


「さっきの続きだけどさ。雅お姉ちゃんのことどれくらい知っているの?」

「ほとんど知らないかも」

「はぁ……」

「しょうがないじゃん。一緒に暮らし始めたのも突然だしそもそも最近まで数回の挨拶と短い会話しかしなかったんだから」

「はぁ……」


 桜花はわざとらしいため息をしながら商品シールを貼っていく。

 それにムッときた私は言い返すように口を開いた。


「私は桜花と違うの。それで?雅さんの仕事の答えは?」

「自分で確かめな〜」

「は?問題って言ったじゃん」

「だってそれくらいは知っていると思ったんだもん。でも知らないならお姉ちゃんから聞くしかない!会話の話題としてピッタリじゃん」


 そう言われたらそうかもしれない。ただでさえ話題が無いのだから、お互いのことを聞く質問は良いかもと思ってしまった。


「はい1箱おーわり!」

「早くない!?」

「お姉ちゃんと違って頻繁に手伝ってますからね〜。でもあたしの方がやる量多いとバイト代が不公平だなぁ。絶対同じ額入っているはずだし」

「ま、まさかノルマを決めてやる方法じゃないよね?」

「あたしはそれが良いけどお姉ちゃんはどう思う?」

「………夕飯までに帰らないと雅さんが心配するから」

「ふふーん。それなら許そう。お姉ちゃんは出来る範囲で良いよ」


 絶対からかうために言ってきたこの妹。私はニヤつく桜花を横目に作業を再開する。

 雅さんを理由に使ってしまったけど、心配させたくないのは本心だった。


「まぁお姉ちゃんが雅お姉ちゃんを傷つけることはこの先無さそうだね」

「何か言った?」

「ふふーん」


 桜花は教えてくれることなく嬉しそうに鼻歌を奏でながら次のダンボールに手を伸ばす。

 それ以降は私と雅さんの話題が出ることはなかった。


 時々話しながら。でも手を止めずにする作業中、私は考える。

 今度夕飯の時にでもお仕事の話をしてみようかなと。

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