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【完結】鬼が嫁入り 〜妖怪嫌いが鬼族の許嫁と幸せになる話〜  作者: 雪村
2章 見送り握手チャレンジと貴方のこと
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11話 質疑応答会(2)

「ゲホッ、好きなタイプですか!?」

「厳密に言えば好きな“女性”のタイプです」

「ええっと……ケホッ」


 雅さんは咽せた私を心配してテーブルの飲み物を指差してくれる。

 甘いデザートにはピッタリなお茶を喉へ通せば段々と収まってきた。


「み、雅さんが知りたいタイプというのは外見ですか?内面ですか?」

「差し支えなければどちらも知りたいです」

「どちらも…」


 今度は私が顎に手を当てる番だった。まさかこんな質問が来るなんて。

 しかも1番知りたいらしい。


「うぅん」

「ダメそうですか?」

「いえ。そういうわけじゃなくて」

「思い浮かびませんか?」

「はい…」


 生まれてから今年で17年。けれど未だに自分の好きなタイプがわからない。

 あの人カッコいいなとか、可愛いなと思うことはあるけどそれで終わりだ。


「もし小春様が良ければ今から私が言うもののどちらかを選んでもらえませんか?」

「た、例えば?」

「例えば髪の毛は長い派か短い派か、など」


 私は雅さんの提案に首を縦に振る。2択のうちどちらかを選ぶのなら、最初から考えるより断然楽だ。


「それなら大丈夫です」

「では今の質問はどちらですか?」

「髪の毛ですよね?えっと……長い派?」

「可愛い系と綺麗系では?」

「綺麗、系?」

「大人しい性格と賑やかな性格では?」

「私は大人しい性格が合ってるかなと」

「リードしてくれる人とリードされてくれる人では?」

「うーん……引っ張ってくれた方がありがたいですかね」


 雅さんは私の答えをノートに素早くメモしていく。次々に選択を出す姿は面接官のようだ。

 自然と私の背筋はピンと伸びてくる。


「好意を全面に出す人と心に秘める人。どちらが好みですか?」

「どっちだろう…?」

「ゆっくりお考えください。時間はまだありますので」


 さっきはより多くの質問をするために行けるところまで行きたいと言っていたのに?


 私はそう思ってしまうけど思うだけで止めておく。雅さんに反論する度胸なんて無い。


 それに隣で美味しそうにプリンを食べている姿を見ると、単に休憩を入れたいだけだと察した。


「結局は日頃から好き好き言う人か、あまり好きとか言わない人ってことですよね?」

「そうですね。わかりづらくてすみません」

「謝らないでください!……でもこの選択は中間あたりが良いなと思っちゃいますね」

「なるほど。程よくという感じですか?」

「そもそも好き好き言われる経験が無いので想像付かないと言いますか…」


 身近で好意を全面に出す人は桜花だろう。でもその矛先は私ではなく雅さんだ。


 側から見れば相手するのは大変そうだなと思うけど、実際自分に向けられたらどうなるのだろう。


 好きな人に好きと沢山言われるのは嬉しいことなのではと考えてしまう。


「でもずっとは疲れちゃうのかな?」

「……小春様。一旦、質疑応答会を中断しますか?」

「えっ?」


 すると雅さんは食べかけのプリンを戻して私に顔を向ける。

 咄嗟に目を逸らしてしまったが不機嫌になる様子もなく綺麗な姿勢を維持していた。


「もしよろしければ体験してみます?」

「な、何をですか?」

「好意を全面に出される人の相手を」

「体験?相手?」


 私は目をぱちくりさせて必死に情報を理解しようとする。

 しかし思考は完全に止まったまま動かない。


「もっとわかりやすく言えば私が今から小春様への好意を全面に出します」

「へ?」

「そうすれば自分がどう受け取るか身をもって感じられるはずです」


 雅さんは真剣だ。

 やっと意味がわかった私は戸惑いと緊張が生まれるけど、隣から溢れ出る真剣オーラに制圧されてしまう。


 でも頷けばこれから雅さんに好き好きと言われるわけだ。

 若干の好奇心はあるけど妖怪に好意を向けられるという恐怖は強い。


「ですが小春様が嫌なのであればやりません。質疑応答会を続けましょう」


 もうそのダサい名称にツッコミを入れられなくなるほど頭は雅さんで埋め尽くされる。

 しかしとある疑問が私の中で浮かんだ瞬間、我に返った。


「そ、その前に!全面に出す好意なんてあるんですか!?」

「勿論ありますよ。許嫁ですから」

「それなら私は…」


 私だって雅さんからすれば許嫁という立場に変わりない。けれど今あるのは好意より恐怖だ。

 雅さんは私の表情を読み取ったのか1度咳払いする。


「失礼しました。その言い方は間違いでしたね。それでも私はちゃんと好意はありますよ。小春様からすればまだ浅い関係なので信じられないと思いますが」

「あ、ありがとうございます…」

「そうやって頑張って受け取ろうとしてくれるところが好きです」

「え?あの」

「妖怪である私が苦手でも素直にお礼や謝罪を言える姿。そして優しく気遣う姿も好きです」

「み、雅さん!?もう始まっているんですか!?」

「はい。構えれば構えるほど小春様に負担が掛かるかなと。それでは次に参りますね」

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