音楽は才能じゃない! ~努力で上位10%のバンドを目指す軽音部~
中央高校の軽音楽部は、いわば駄目クラブだった。才能に恵まれた面々ではない。入部した理由も、音楽が好きだからという簡単なものだ。
しかし、夢は高く、全国のバンドコンテストで上位10%入賞を目指す。
最初はバラバラだった。音痴まがいの熱心な新入部員。リズム感に乏しいドラマー。伴奏の感覚に恵まれぬベーシスト。ただひたすらハイトーンを好むボーカル。お互いの音が合わずに、音痴とも思えるほどの大失敗作が量産された。
けれども、メンバーの熱意は誠実だった。休み時間、放課後の時間を使い、一心不乱に練習に打ち込んだ。だが、どれだけ時間を費やしても上手くいかない。音はぶつかり合い続け、進歩は見られない。
最初の1年間は、ただひたすら時間を費やし続けた。メンバー一人ひとりは、己の課題を見つけられたものの、なかなか解決の糸口が見つからなかった。
「俺たちには才能がないからこその限界なのかもしれない」
苦しくなってきた頃、ある事件がきっかけとなって、みんなの本質的な変化が訪れた。それは、目からウロコの出来事だった。
ある日、クラブの先輩がやってきた。
「今の前に立たせてくれ」と、先輩は言った。
普段無口の先輩が今日は饒舌だった。
「お前たちには基礎が大切なことがわかっていない。音程、リズム、強弱...。一つひとつの要素を確実に仕上げなければ調和は生まれない」
先輩は音を立ててみせた。それは耳に心地よい音だった。
「俺は才能に恵まれていない。ひたすら基礎を積み上げてきた。皆も同じような過程を経る必要がある」
メンバーはみな裸足で地に足をつけられたような思いだった。そう、彼らはこれまで適当に練習を重ねてきただけだった。
「とにかく一つひとつ、確実に仕上げていけ。そして最後に、音を重ねあわせる。それが調和の近道だ」
先輩の言葉に、メンバーは心打たれた。そう、基礎に忠実であることが何より大切だったのだ。先輩はその点に気づいていた。
「もっと基礎に立ち返り、自問自答を重ねよう」
メンバー一人ひとりが言った。これが新たな第一歩となった。
以来、練習の質が変わっていった。基礎に立ち返って一つひとつ確認する作業を徹底した。音程、リズム、強弱、全てに気をくばる。そしてついには、メンバーそれぞれの音を、上手に重ね合わせられるようになった。
基礎を怠らなかったおかげで、着実に調和のとれたサウンドが生まれるようになっていた。メンバー一人ひとりの特性も徐々に生かされ、お互いの音が呼応し合うようになっていった。
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