9/147
9話
桜が家へと入ったのを横目で見ながら、翼も自宅へと入る。
鞄を下ろし、スーパーで買ってきた弁当を電子レンジで温めようとした時に、スマホに着信が入る。
「もしもし?母さんどうしたの?」
電話の主は翼の母親だった。
「今日?入学式だったよ。・・・」
「友達はできなかったけど知り合いはできたよ。・・・」
「うん。こっちは大丈夫だよ。母さんは?・・・」
「そっか、それならよかった。またね。」
短い電話が終わった。翼は軽くため息をつき、弁当を温め始めた。
「今日は早く寝よ。」
弁当を食べ終わり、ぼーとテレビを眺めていたが、どこか落ち着きがない様子が見える。
「散歩でも行くか。」
心を落ち着かせるため、翼は散歩に行くことを決めた。4月とはいえ、まだ冷える。少し厚い上着を羽織り、周辺を散歩するために玄関に手をかける。