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82話

 「あの子が悪くないってどういうこと?」


 春先輩が翼に問いかける。


 「僕も詳しい事はまだ全部聞けてません。でも、話を聞く限り、桜は悪くないんです。」


 「そんな上部だけの言葉だけで言われてもなんにもならないよ。東山くん。」


 「話を聞いてください、春先輩!」


 翼に背を向けて歩く春先輩を翼は追いかけようとした。


 「お姉ちゃんどうしたの?」


 その時、小学生低学年くらいの男の子が春先輩に声をかけた。


 「なんでもないよ。学校の後輩くんと少しお喋りしていただけよ。」


 春先輩は優しく声をかけた。


 「東山くん。今日はとりあえずこれでおしまいね。また明日ね。」


 「はい・・・。春先輩。また明日。」


 二人は短い挨拶を済まし、それぞれの休日に戻っていった。


 翼は立ち尽くしたまま、空を見上げた。自分のことではないのに悔しいという感情が溢れてどうにかなりそうだった。その後はあまり覚えていないが、気がついたら自宅へ着いていた。


 家でボーとしていると、スマホに桜からメッセージが届いた。


 『今時間ある?』


 『大丈夫だよ。』


 『なら、今からあなたの家へ行くわ。』


 『りょうかい。』


 短いやり取りのすぐ後に桜が家に来た。


 「今日はどうしたの?」


 「さっき、京子から連絡きてね。京子に話聞きにいったそうじゃない。」


 「うん。聞きにいったよ。大体のことは聞いた。」


 「そっ。」


 二人の間にはなんとも言えない空気が漂う。


 「その後、公園で春先輩に会った。」


 「それで?」


 「なんもなかったよ。強いて言えば、哲先輩と対して反応は変わらなかったっていうくらいかな。」


 「まぁ、しょうがないわね。明日から部活どうするの?」


 桜からの質問に翼は正直なんて答えればいいか迷った。このまま、自分と桜は違うと割り切って部活に残るかそれとも、先輩達との関係を気にして辞めるか。翼はこの二択で迷っていた。


 「僕は」


 翼に被せるように桜が喋る。


 「続けなさい。あなたは私じゃないわ。私と付き合っているからって気にすることはないわ。そもそも本当に付き合っている訳ではないのだから、あなたが気にすることなんて何もないじゃない。」


 「それはそうだけど・・・。」


 桜に圧倒されている翼だったが、桜はそのまま翼に畳みかける。


 「あなたは何にも縛られず選択ができるのだから、人のことに左右されずにやり切りなさい。東山翼。」


 

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